『ラーゲリより愛を込めて』キャストの素顔&過酷な撮影を瀬々敬久監督明かす
映画『ラーゲリより愛を込めて』(公開中)の瀬々敬久監督が、本作の過酷な撮影の裏側や、キャストの素顔などを語った。
原作は、辺見じゅんのノンフィクション「収容所から来た遺書」。第2次世界大戦終結後、ソ連軍により不当にシベリアの収容所に抑留された日本人・山本幡男氏の壮絶な半生を描く。山本幡男役を二宮和也、山本と同じく抑留者となった松田研三役を松坂桃李、新谷健雄役を中島健人(Sexy Zone)、相沢光男役を桐谷健太、原幸彦役を安田顕が担う。
二宮らは、食事も十分に与えられず、過酷な抑留生活で極限まで追いつめられる抑留者を熱演。瀬々監督は、「桃李くんは、『ラーゲリより愛を込めて』の撮影前、『流浪の月』でも激やせしていたので、そのまま来てくれという感じだったんです(笑)。ほかの人たちは、この作品で痩せてくれました。安田顕さんなんか、ほとんど現場ではお昼やお弁当とか食べてなかったんじゃないかな。年取るとね、痩せにくくなりますんで(笑)。そこはかなり節制されてましたし、みんなそうじゃないですかね」と回顧する。
安田演じる原は、ラーゲリで追い詰められ、ある行動を取ってしまう……という人物。劇中では、絶望漂う気力を失った目が印象的だが、「安田さんは割とガーっと役に入り込まれる方ですね。どちらかというと休憩時間に和気あいあいしてみんなで話すっていうことではなく、休憩時間も既に役に入ってるようなタイプの人なんです。だから、一人で壇上にずっと座っている場面では、撮影してない時も一人座ってずっと考えたりしていました」とストイックな一面を明かす。
また、“鬼軍曹”として抑留者たちに厳しく当たる相沢役の桐谷について、「抑留者役の人たちに対して非常にフレンドリー。縁の下の力持ち的な人たちがいないとこの映画は完成しなかったんですけど、そういう人たちに対して休憩時間にすごく気さくに接して盛り上げようとしていました。でも、芝居になればガッと男っぽい鬼軍曹という、まるで違う役を演じていくわけです(笑)。役へのオンオフの切り替えとは違うけれど、役と彼自身をかなり違う面でやっていたという感じがします」と撮影裏の桐谷の人柄を称賛する。
ロケ撮影では雪や雨など、天候が大きく影響したそうで、「実は過酷そうに見えないんですけど、野球のシーンの撮影の日、朝起きたらもう雪だらけ。それを美術部とか制作部とか、抑留者役の人たちも総勢になって雪かきしてグラウンドにしたんです。そこには、桐谷さんとか、中島健人くんとかもいて雪かきしたりしてました」と過酷な撮影を振り返る。
また、「桃李くんが座り込みするシーンでも雨が降って、下がもうドロドロで、座るとビシャビシャになるんです。みんなで土とか入れても結局雨が降ってくる。『これで座り込みか……』と思いながら、スケジュールも大変だったので、やるしかないなって」と覚悟を決めたという監督。その後、「夜になると歌う場面があって、台本では今まで座った人たちが立ち上がって歌を歌い出す、だった。でも、さすがに座るのは無理だなと思って、桃李くんたちに『立ったままでいいから、そこから歌って』と言ってたんですけど『いや、僕らはいいですよ、座ってても』って言ってました(笑)」と苦笑しつつも、「天候にはいろいろ大変な思いをさせられましたが、その厳しさが逆に映像に残ったと思っています。それはそれで今考えれば、天の恵みなのかな」と振り返っていた。(編集部・梅山富美子)