大物プロデューサーの性的暴行事件を告発した記者の実話『SHE SAID』に作品賞 女性映画批評家サークル
アメリカの女性批評家団体、女性映画批評家サークル(Women Film Critics Circle:WFCC)が、2022年の受賞者を19日に発表した。
WFCCは、映画批評において、女性の視点と声が十分に認識される必要があるという信念のもと、2004年に結成された米国初の女性批評家団体。アメリカをはじめ、さまざまな国の批評家や学者など、多様性のあるメンバー約80人が所属しており、女性を描いた作品や、女性によって作られた作品に注目し、映画業界におけるリプレゼンテーションがまだまだ十分ではない女性たちの業績を評価しようと取り組んでいる。
最優秀作品賞にあたるベスト映画は、キャリー・マリガンとゾーイ・カザンの共演で、絶対的権力を長年保持していた映画プロデューサーハー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件を報道した、ニューヨーク・タイムズ紙の記者を描いた『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(日本公開2023年1月13日)が受賞。
また、監督賞にあたる女性によるベスト映画と脚本賞、さらに女性に対する暴力に強く反対する作品に与えられるエイドリアン・シェリー賞など、4部門で受賞したのは、サラ・ポーリー監督の『ウーマン・トーキング 私たちの選択』。メノナイトというキリスト教一派のコミュニティで、何年にもわたって薬を飲まされ、男たちからの性的暴行被害にあっていた女性たちが、自分たちの未来と被害について話し合う物語。
また、マルチバースをテーマに、コインランドリーを経営する中年女性がある日突然、カンフーマスターとなって世界を救うことになるという奇想天外な物語『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で、ミシェル・ヨーが主演女優賞を受賞。ミシェルは、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』など子役として一世を風靡した、キー・ホイ・クァンとベスト・カップル賞も受賞した。
主演男優賞は『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーが受賞。精神的な苦痛をきっかけとする過食で死期が近づき、娘と和解しようとする男性を演じた。(吉川優子/Yuko Yoshikawa)
主な受賞結果は以下の通り
最優秀作品賞(女性についてのベスト映画)
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
監督賞(女性によるベスト映画)
サラ・ポーリー監督 『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
脚本賞(ベスト女性ストーリーテラー賞)
サラ・ポーリー 『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
主演女優賞
ミシェル・ヨー 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
主演男優賞
ブレンダン・フレイザー 『ザ・ホエール』
外国映画賞
『あのこと』
ドキュメンタリー賞
『ザ・ジェインズ(原題) / The Janes』
男女間の平等を描いた最優秀作品
『グッド・ラック・トゥー・ユー・レオ・グランデ(原題) / Good Luck to You, Leo Grande』
アニメーション映画の女優賞
メイ(メイリン) 『私ときどきレッサーパンダ』
ベスト・スクリーン・カップル賞
ミシェル・ヨー&キー・ホイ・クァン 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
ベストテレビシリーズ賞
「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」「イエロージャケッツ」
エイドリアン・シェリー賞(女性に対する暴力に最も対抗した映画)
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
ジョセフィン・ベイカー賞(アメリカの有色人種女性の経験を最も表現した作品)
『ティル(原題) / Till』
カレン・モーリイ賞(歴史や社会における女性の地位や、アイデンティティを探すことを最も良く表した作品)
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
アクティング&アクティビズム賞
ジーナ・デイヴィス
生涯功労賞
リタ・モレノ