【ネタバレ】「相棒」謎の女の切なく哀しき結末…子役の重さを再認識
21日に放送された連続ドラマ「相棒season21」(テレビ朝日系)の第10話「黒いコートの女」では、角田課長(山西惇)の手伝いで宝石窃盗グループを追っていた特命係の杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)が、黒いコートの謎の女・茉奈美(橋本マナミ)遭遇。彼女が持つ哀しい過去が明かされ、SNS上では「辛い話」「切ない……」と話題を呼んでいる。(以下、ネタバレを含みます)
窃盗グループの容疑者の男・国枝(高野光希)は、茉奈美に追われたはずみで転落死していた。茉奈美は「ダイアはどこ!?」と国枝を問い詰めていたという。捜査を進めた特命係は、国枝が雑貨店を経営する安西(五代高之)をゆすろうとしていたことを突き止めるも、茉奈美もまた安西を訪ねていた。
さらに、国枝の部屋から6年前の殺人事件の犯人が茉奈美だという証拠が発見された。当時の担当刑事に聞くと、被害者は国枝のパシリの男だったが、国枝のアリバイは当時保護司をしていた安西によって証明されたのだという。安西は、国枝に弱みを握られて偽証させられ、さらにゆすられていた。
国枝は被害者と共に茉奈美の子を誘拐、身代金を渡しに出向いた茉奈美がもみ合った弾みで殺してしまっていた。安西は、国枝から押し付けられた誘拐した子どもを、美月と名付けて自分で育てていた。美月が茉奈美の実の娘・大愛(ダイア)だったのだ。
美月を演じたのは加藤柚凪。ドラマ「監察医 朝顔」で上野樹里演じる主人公の娘・つぐみ役を務め、「家庭教師のトラコ」でもメインの子ども三人のうちの一人を演じていた。弱冠7歳にしてすでに大物の予感十分な、有望すぎる女優だ。今作でも、ちゃんと「ありがとう」「ごめんない」が言える美月を、素直に可愛く演じている。右京がかがんで目線を合わせて話す姿は、なかなかに微笑ましかった。
「相棒」の薫時代の子役といえば、難解な本を読んで薫を軽くあしらった生意気な小学生犯人を演じた染谷将太(season1第5話「目撃者」)が印象深い。薫と美和子に預けられ、疑似子どものようになった被疑者の息子役の須賀健太(season2第9話「少年と金貨)も、健気さでは群を抜いていた。また、甲斐享(成宮寛貴)が相棒だった時期だが、加藤清史郎が事件に巻き込まれる少年を演じており(season11第18話「BIRTHDAY」)、冠城亘(反町隆史)時代のseason16第19話「少年A」では、事件のキーとなる少年を好演した。
子どもたちの豊かな表現力がなかったら、「相棒」の物語はここまで面白く見られなかったかもしれない。事件ものである限り、人のエゴや欲望が赤裸々に描かれるが、子どもが絡む物語ではよりそれが顕著な傾向がある。今作でも、橋本の哀しさを背負った押さえた芝居は、美月=加藤の無邪気さでより深みを持っていた。美月を育てた安西夫妻の切なさも、彼女の可愛さゆえによけい胸に迫る。
「たとえどんな事情であれ、罪は罪です」と逮捕された茉奈美を見送る右京。シビアさがあふれる言葉だか、薫が「罪を償ったあと、あの子にきっとまた会えますよね」と言うと、「大きな愛と書いて『だいあ』、我が子に対するその思いは、いつか必ず伝わるはずです。そう願いましょう」と希望も語った。視聴者の願いも、きっとその通りに違いない。(文・早川あゆみ)