「夫婦の世界」「ペーパー・ハウス」韓国ドラマはリメイクが得意
12月からNetflixで配信がスタートし話題を集めている「夫婦の世界」に、パート2が始まった「ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え」など、大ヒット韓国ドラマにはリメイクものが多い。欧米や日本のドラマをベースに、韓国の社会状況や独特の価値観、情感などを落とし込んで、新たなドラマとして構築している。
まず「夫婦の世界」は、英国BBCで2シーズンに渡って放送された「女医フォスター」(2015~2017)のリメイク。オリジナル版で主演したサランヌ・ジョーンズは英国アカデミー賞主演女優賞を受賞したが、「夫婦の世界」の主演女優キム・ヒエは韓国のゴールデン・グローブ賞とも言われる百想芸術大賞のテレビ部門で女性最優秀演技賞を受賞。
一方「女医フォスター」で夫と不倫した若い愛人を演じた『最後の決闘裁判』のジョディ・カマーは同作を足掛かりに大躍進したが、「夫婦の世界」の愛人役ハン・ソヒも負けていない。この作品後、Netflixの「わかっていても」に「マイネーム:偽りと復讐」、さらにはディズニープラスの「サウンドトラック #1」、そして2023年はNetflixの「京城クリーチャー」と続く。
「ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え」は、スペインの人気ドラマ「ペーパー・ハウス」のリメイク。オリジナルはスペイン・マドリードの造幣局に籠城した8人組の強盗団とそのリーダーを描く物語で、トーキョー、モスクワ、ベルリンなど世界の都市名がコードネームになっているなど大まかな設定は同じだが、韓国版は南北が統一しようとしている未来の朝鮮半島を舞台にして、統一後の新貨幣を造幣局から盗み出す。
韓国と北朝鮮の統一と分断がさまざまな場面で出てくるなど、韓国ならではの内容になっているところがポイント。また、スペイン版で強盗団たちが被っているのは画家ダリの仮面だが、韓国版は韓国の伝統的な「河回仮面」(ハフェタル)を被っている。
芸能事務所を舞台にした「エージェントなお仕事」は、フランスの大ヒットドラマ「エージェント物語」のリメイク。架空の芸能事務所「メソッド・エンターテインメント」で、クライアントである大物俳優たちのために奮闘するエージェントたちの悲喜こもごもを描きながら、韓国芸能界の裏側をのぞき見できる。
フランス版ではジャン・レノ、ジュリエット・ビノシュらが本人役として登場しているが、韓国版では『パラサイト 半地下の家族』でセレブ妻を演じたチョ・ヨジョンを皮切りに、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』などハリウッド作品で活躍するスヒョン、「ペーパー・ハウス・コリア」のデンバーを演じたキム・ジフンなどが出演し、彼ら自身のことがエピソードにも反映されている。
アメリカドラマのリメイクを挙げると、英国のヘンリー王子の妻メーガン妃が女優時代に出演していた「SUITS/スーツ」に「グッド・ワイフ」、この2作は日本でもリメイクされている。また人気クライムサスペンスとして知られる「クリミナル・マインド FBI行動分析課」は、「クリミナル・マインド:KOREA」としてリメイクされている。
日本のドラマはこれまでに数多くリメイクされてきた。たとえば、松本潤に小栗旬らイケメン俳優たちそろい踏みで知られる「花より男子(だんご)」の韓国版「花より男子~Boys Over Flowers~」はその代表格で、「のだめカンタービレ」や「ドラゴン桜」も韓国でリメイク。また名作の誉れ高い坂元裕二脚本の「Mother」は「マザー 無償の愛」としてリメイクされ、百想芸術大賞のテレビ部門作品賞を受賞している。
坂元作品としては「最高の離婚」も韓国で「最高の離婚 ~Sweet Love~」としてリメイクされ、同作には「私の解放日誌」やディズニープラスの「カジノ」で韓国はもちろん日本国内でも人気急上昇のソン・ソックが出演しているので、気になる方はぜひ。
日本発の作品では、厳密にいうとリメイクではないが、岩明均による漫画「寄生獣」がNetflixシリーズ「寄生獣 -ザ・グレイ-」として制作されることが決定している。手掛けるのが『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督だけに「寄生獣」の世界がどのように描かれるのか気になるところだ。(前田かおり)