なぜ赤楚衛二にハマる人が続出するのか?
「仮面ライダー」シリーズで注目を集め、主演ドラマ「チェリまほ」で大ブレイク。現在放送中の朝ドラ「舞いあがれ!」でも人気のキャラクターを演じている赤楚衛二。映画にドラマと、話題作への出演が続く彼は、今一番勢いのある若手俳優のひとりともいえる。彼が演じる役に共感し、応援しているうちに、ふと気づけば赤楚本人のことも好きになっている——。そんなファンが急増中の彼の魅力を、ここで改めて振り返ってみたい。
赤楚は1994年3月1日生まれの28歳。2015年から俳優活動を始め、2017年に若手俳優登竜門である特撮ドラマ「仮面ライダービルド」で、万丈龍我/仮面ライダークローズ役を射止めた。その後も、ドラマや映画など数々の作品への出演を経て、2020年に連続ドラマ単独初主演作となる「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」で、童貞のまま30歳を迎え、触れた人の心が読める魔法を手にした主人公・安達清を好演。ドラマ続編である劇場版『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』(2022年)も公開され、国内外で大旋風を巻き起こした。
そして現在は、NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」で、福原遥演じるヒロイン・岩倉舞の心優しい幼なじみ、梅津貴司を演じている赤楚。「貴司くん」と親しまれるほど、視聴者の心を一気につかみ、今や幅広い年代に認知される存在になった。
■母性本能をくすぐる、かわいい子犬系男子の魅力
赤楚衛二と聞いて、多くの人が頭に思い浮かべるのは、あのちょっとはにかんだような優しい笑顔ではないだろうか。小さな顔に、くりっとした黒目がちのつぶらな瞳。彼の人懐っこくて、見る者をほっこり癒やしてくれる明るい笑顔は、まさに“子犬系男子”という呼び名がぴったり。過去に“笑顔がかわいい20代イケメン俳優1位”に選ばれたことがあり、SNSでも「かわいい」「尊い」といったコメントが目立つ。
ビジュアルだけでなく、性格的にも素直で純粋、ちょっと天然なところがあるキャラクターがよく似合う。「チェリまほ」で同期の黒沢(町田啓太)に恋心を抱かれる安達役や、映画『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020年公開)で同級生の朱里(浜辺美波)に想われる和臣役などは、天然ゆえに、当初は相手からの好意に気づかないまま、キュンキュンされている立場。どちらの役でも、ついに気持ちが抑えられなくなった相手から告白されてとまどうシーンが印象的だった。
不器用で繊細、というキーワードも赤楚がさまざまな作品で演じる役に当てはまる。今なら朝ドラ「舞いあがれ!」の貴司役。朝ドラヒロインの幼なじみの男性キャラといえば、明るくて爽やかな好青年というのが定番だが、貴司はそのシンプルなイメージの枠にとどまらない。システムエンジニアとして働きながらも、「ふつう」になじめない自分を感じていた文学青年で、会社を突然退職した後、放浪の旅に出てしまう。ヒロインの背中を押してあげるオアシスのような存在であると同時に、自分の中に美しい理想の世界を持っているという多面的で複雑なキャラクターが光るのは、赤楚が演じるからこそだろう。
■共演者との化学反応を引き出す天才
俳優には、自分のカラーを強く押し出し、周囲をぐいぐい引っ張っていくタイプもいれば、どんな作品、どんな役柄でも、その場に溶け込んで、ナチュラルに芝居をするタイプもいる。どちらかというと、赤楚は後者の俳優だと思う。その魅力がいかんなく発揮された役として筆頭に上がるのは、やはり「チェリまほ」の安達だろう。
触れた人の心の声が聞こえるという安達の魔法の特性上、相手を受けとめる芝居が求められたわけだが、赤楚は黒沢の声に一つ一つ反応していく安達の内面の揺れを細やかな演技で見事に表現した。彼はしばしばインタビューで、共演者への感謝を口にしているが、町田啓太もまた赤楚に絶大な信頼を寄せるコメントを残している。実際、安達と黒沢の間に流れる空気感はとても温かく、2人の相性の良さを際立たせた。
『チェリまほ THE MOVIE』公開時の記念舞台挨拶も印象深い。司会者から「この中で誰の心の声を聞いてみたい?」と聞かれた赤楚は「全員の心の声が聞きたい」と回答。その理由について「僕は現場がすごく楽しかったけれど、みんなで話している時、『ほんとはしゃべりたくない』みたいな気持ちになっているかもしれないじゃないですか。本当にみんな楽しかったのかなって……」と説明する彼の言葉には、役を離れても、普段から周囲の人の気持ちに心を配り、人とのつながりを大切に行動するという優しい素顔がのぞいていた。
■キャラクターの成長や変化を見せるのがうまい
キャラが確立され、自信に満ちたヒーローを見るのも楽しいものだが、現実の人間というのは完璧には程遠い存在だ。だからこそ、映画やドラマの中で、不安や弱さを抱えながら、一生懸命に生きているキャラクターを見ると、親近感がわき、無性に応援したくなる。「チェリまほ」の安達役や「舞いあがれ!」の貴司役をはじめ、赤楚が得意とするのはそういうキャラクターたちで、彼らが成長や変化していく姿を嘘っぽくならず、みずみずしく演じることができるのが彼の大きな強みだ。
ドラマ「SUPER RICH」(2021年放送)で演じた、主演の江口のりこの相手役となる貧乏な専門学生・春野優も、ドラマ「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」(2022年放送)で演じた法律事務所のアルバイトスタッフ・大庭蒼生も、素直でかわいい子犬系だった青年が、物語が進むにつれて、かっこいい男に変貌していくさまに多くの視聴者が魅了された。
赤楚はどの役を演じていても、共演者から「役と似ている」と言われるらしいが、それは役に寄り添い、共感しながら演じるという彼の役づくりのアプローチ法によるものだろう。最新作となる2023年全世界配信予定のNetflix映画『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』で演じる主人公・天道輝も、劇中で大きな変化を遂げるキャラクター。ブラック企業の社畜と化していた輝が、街中にゾンビがあふれるという絶望的な状況下で、一転、ポジティブな生き方に目覚めていく。
キャラクターを追体験しながら、感じたままを演技に投影する俳優・赤楚本人が、今後もいろいろな作品と出会い、キャリアを重ねることで、どんな役者に成長していくのか。胸をときめかせつつ、見守りたい。(文・石塚圭子)