音尾琢真、秀吉役で激変に自信「信長様に気に入られたら本望」
映画『るろうに剣心』シリーズの大友啓史が監督、大河ドラマ「どうする家康」などの古沢良太が脚本、主演に木村拓哉という豪華タッグで描く映画『レジェンド＆バタフライ』（1月27日公開）。本作で、木村演じる織田信長に登用される木下藤吉郎（後の豊臣秀吉）を演じるのが俳優の音尾琢真だ。映画やドラマで数々の個性的なキャラクターを演じている音尾だが、本作で演じた藤吉郎もインパクト抜群。ビジュアルが公開されたときには、大きな反響を呼んだが、音尾はどのように藤吉郎を作り上げていったのだろうか……その舞台裏を語った。
尾張の織田信長、美濃の斎藤道三の娘・濃姫（帰蝶）の政略結婚からスタートした二人の関係が変化していく過程で、さまざまな顔を見せる信長を描いた本作。音尾は、織田五大将の一人、木下藤吉郎を演じたがオファー時には「木村さんが信長を演じるなか、秀吉が僕でいいのかな」と身構えてしまったという。しかし、本作で描かれているのは、秀吉になる前の木下藤吉郎時代。「藤吉郎は武士ではない出の人間なので“庶民派”という部分では、少し自信があったんです」と笑う。
メガホンをとった大友監督とは、大河ドラマ「龍馬伝」（2010）や映画『るろうに剣心 最終章 The Final』（2021）などで作品を共にしている。「『るろうに剣心』で中国マフィアの役をいただいたときも『俺でいいのかな』と思ったのですが、まあ監督が期待しているのは、作品のなかで飛び道具というわけではないのかもしれませんが、そのシーンを賑やかにする役割なのかなと思ったんです」
衣装合わせで用意されていたのは、藤吉郎が“着せられている感”が出ている個性的な衣装。音尾は「本当に武士と縁遠いような着心地の衣装が絶妙でした。僕が着たのを見て、衣装さんも大友監督も『この感じだね』と意見が一致していました」と笑う。
さらにメイクも非常に特徴的で、インパクト大だ。「以前もお世話になっている今回のメイクさんが『音尾さんの顔って描きがいがあるんですよね。やっていくとどんどん変わっていく』と楽しそうにされていたので、僕も『どうぞどうぞ』って（笑）。どうなるんだろうって鏡を見ながら顔の行く末を見守っていたら、目が垂れてきてなかなか卑しい感じの顔になっていきました（笑）」
特に印象的だったのが、鼻の表現だ。音尾は「特徴的でしたよね」と楽しそうな笑顔を見せると「メイクさんから『ぶつぶつにしたいんです』と言われて鏡を見ていたら、なかなか不気味な鼻に仕上げていただいて……。すごくいい個性になりました。こうした一つ一つが、秀吉の描かれていない部分の物語を埋めてくださった。それが役を演じるうえで、とても心強かったです」と語る。
こうしたスタッフたちの独創的な作業によって、音尾自身も「これなら秀吉として物語のなかにスッと入っていける」と自信を持てた。大友監督が望む「シーンを彩る」役柄を、迷うことなく思う存分演じることができた。
もう一つ、音尾がけれんみなく藤吉郎を演じられたのが、木村の存在だ。「大友監督からも『わーってやっちゃって！』と盛り上げていただいたのですが、そんな僕の芝居を全部しっかりと受け止めてくれたのが木村さんです。現場に入った瞬間から、藤吉郎と信長の関係性を感じ取ってくれて、僕が藤吉郎のメイクで行くと、『あーなんかいいね』と嬉しそうにわたしの顔を眺めてくれました。その時点で信長様に気に入られた藤吉郎になったなと思えたんです」
さらに音尾は「同世代なのですが、木村さんは僕にとってレジェンド。テレビで観ていたスーパーヒーローなんです」とその存在を称えると「そんな方と対峙するのですから、やっぱり身震いしてしまいます。オーラがすごいので。これまでも何度かお会いしたことがあるのですが、いつも震えてしまう。でもふと優しさを見せてくれるので、虜になっちゃうんですよね」と羨望のまなざしを向ける。映画『検察側の罪人』（2018）では木村が検事、音尾が暴力団員という設定だったが、対立するような役柄のときは「結構構えてしまった」といい、「今回は同じ方向を見て立っている間柄というのが、いいですよね」と嬉しそうに語っていた。
出来上がった作品を観た音尾は「信長と濃姫の夫婦の物語というのが素晴らしい」とポイントを挙げると「わたしも妻がいるのですが、男女って出会ったときとは関係が変わってきますよね。その変化がありながらも、二人でいる運命を選んでいくという部分が、何ともしっくりきました」と見どころを語った。（取材・文・撮影：磯部正和）