台湾ホラー『呪詛』監督が来日!2ちゃんねるのホラースレ「好きだった」Jホラーの影響明かす
「台湾史上最も怖い映画」と言われ、日本でも話題を呼んだ台湾ホラー映画『呪詛』のメガホンを取ったケヴィン・コー監督が来日し、28日に都内で行われたトークイベントに出席、日本から受けた影響を明かしながら、ファンとのつかの間の交流を楽しんだ。
ある宗教施設で禁忌を破り呪いを受けた主人公が、自分の娘も呪われていることを知り、必死でわが子を守ろうとする姿を追ったホラー映画『呪詛』。2022年に公開された本国・台湾では、その年の映画興行ナンバーワンヒットを記録。その恐怖は世界中に伝染し、Netflixで世界配信されると、数日の間に各国の非英語映画ランキングでトップ10入り。日本でも1位を獲得した。
『呪詛』が配信されて以降、コー監督が来日するのは初ということで、この日のイベントには倍率10倍を超える応募が殺到したという。何度も本作を鑑賞しているという熱狂的なファンも見られるなか、上映後に登壇したコー監督は、日本語で「わたしは『呪詛』の監督のケヴィン・コーです」と観客に呼びかける。
さらにコー監督は「もともとJホラーが大好きで。『呪詛』も多大なる影響を受けています。注目していただいた皆さんに、直接お礼を言う機会をいただき、ありがとうございます」と感謝。日本語字幕版でのスクリーンで上映は、Netflixの協力で特別に実現したもので「家でひとりで観る恐怖と、劇場で他の方と一緒に観る恐怖は違うんじゃないかと思い、今日はこのような上映会を企画していただきました」と明かした。
もともとCMなどの映像制作に従事していたというコー監督は、いつかホラー映画を撮りたいという夢を抱いていており「やりたいことをやるべきだ」と決心し、自らプロデューサーとして制作費を集めて本作を完成させた。制作費を回収できるのかもわからない状況からのスタートだったというが、台湾で大ヒットを記録。コー監督は「興行収入が良かったこともうれしかったですが、それよりも自分にもホラー映画が撮れるんだということを証明したかった。この作品で観客から大きな反応があり、手応えを感じましたし、これからも撮り続けたいと思いました」と力強く語る。
また、自身が日本から受けた影響について、コー監督は「学生時代に撮った短編は、まさにJホラーに大きな影響を受けていました。いろいろなJホラー作品を観ていましたし、(ネット掲示版の)2ちゃんねるのホラースレッドを、台湾人で翻訳してくれている人がいたんですが、それを読むのも好きでした。日本のホラー漫画もよく読んでいましたね」と告白。「だから『呪詛』にもJホラーのDNAが存在していると思います」と付け加えた。
とにかく恐ろしい映画として話題となった本作を演出するうえで、心がけたことが「2つあります」と語ったコー監督。「まずは宗教の部分をどう描くか。最終的にはいろいろな宗教の要素を組み合わせて作ったのがこの映画の宗教ですが、とても古い物であることと、なんとなく身近にありそうだということが大事。台湾人が観て、そこまで遠いものでもないと感じることが大事だと思い、設定を考えました」と明かす。
さらに「もうひとつは、観客に『感染させられた』と感じさせること。例えば、映画の最後の方に赤い文字が連続するシーンがありますが、そこは(文字の)残像が残るように設計したからです。そのことによって観客が、(鑑賞後も)呪いに感染して、拡散するような感覚になってもらえたらと思いました」と明かしたコー監督は「観ている間に、知らず知らずのうちに脳に映像が蓄積されてしまうように、リピートをするような設計を目指しました。もし皆さんが本作を観て、気持ち悪いと思われたとしたら、それはそうした設計によるものだと思います」と、映画が醸し出す得体の知れない不快さについてのロジックを説明した。
次の監督作はまだ企画開発中の段階だが、ホラー映画になる予定だと明かしたコー監督。「人がそれぞれ、一番最初に怖いと思ったものは何か、ということがテーマ。人によって怖いものの感覚は違うと思いますが、それが一生ついてまわる。それがテーマです」とその構想を明かすひと幕があった。
この日の会場には本作の脚本家や作曲家も来場。観客全員と一緒に写真撮影を行ったり、現在制作中だという大国仏母のフィギュアや、サウンドトラックのレコードなどのプレゼント大会を行うなど日本のファンとのつかの間の交流を果たした『呪詛』一行。そこでコー監督が「わざわざ来ていただいた皆さんに。感謝の気持ちとして『呪詛』のお守りをプレゼントします」と明かすと、ザワッとする会場内。「呪いの感染」を心配する観客にコー監督は「このお守りは、幸せが来るように……という意味合いを込めたものなので、安心してください」と優しい笑みを浮かべていた。(取材・文:壬生智裕)