「舞いあがれ!」大人の恋を描く佃良太脚本の魅力 細かなアイテムも光る
連続テレビ小説「舞いあがれ!」の第23週は、桑原亮子と嶋田うれ葉と共に脚本を担当する佃良太がストーリーを手掛けている。大人の恋を描いた展開や、チタンの指輪などの金属製品の小物アイテムが生かされたストーリーのアイデアについて、制作統括を務める熊野律時チーフ・プロデューサーが語った。
連続テレビ小説の第107作となる「舞いあがれ!」は、ものづくりの町・東大阪や五島列島でさまざまな人との絆を深めた舞(福原遥)が、空への夢に向かっていく姿を描く物語。23週では、御園(山口紗弥加)と新会社「こんねくと」を立ち上げた舞が佳晴(松尾諭)から依頼を受け、金属アレルギーを持つ道子にもつけられるチタンを使った指輪を作ることを思いつく。
松尾諭が演じる佳晴のプロポーズと、舞の新事業を絡めた巧みなストーリーテリングが発揮された第23週。ここにはまさに、佃が紡ぐストーリーの魅力が存分に発揮されていると熊野はいう。「佳晴さんと道子さんのエピソードを面白く描いていただいた。思いを一生懸命伝えあう二人をおかしみも盛り込みつつ描いていただけて、恋愛のコミカルなテイストも含めて佃さんの味だと思います。以前、NHKでドラマの脚本を書いていただいたことがあって、そこからのご縁です。今回、このドラマでプロットを作るのに協力してもらって、その流れで佃さんにも書いていただきたいということで、脚本もお願いしたんです」
そのなかで重要な役割を担うのが、新会社「こんねくと」が佳晴のために制作を手掛けたチタンの指輪。ほかにもデザインパンチングを使った新商品のアイデアとしてランプが登場するなど、さまざまな金属アイテムが登場することも印象的だった。こうしたアイテムを使ったストーリーの源について「実際に町工場で働く人たちに相談して作ってもらった」とその舞台裏を明かす。
「金属アレルギーの道子のために佳晴から依頼を受け、舞はチタンの指輪を発想します。町工場の加工技術を使ってオーダーメイドで作るということで、よそにはない付加価値のある商品になりそうなリアリティがあることを取材の過程で見つけられたので採用しました」。指輪のラグビーボールを使ったデザインも印象的だったが、「これも東大阪の実際の町工場の人のご協力をもらって作りました。ご相談して、この物語にあったものを、ということで作ってもらったんです」と熊野は製作過程を回顧する。
また、東大阪で板金加工を専門とする工場の女性社長として我妻花江というキャラクターが登場したことについても、東大阪の町工場で実際に取材をした経験が生きてのキャスティングだったという。「町工場の社長がたくさん出てきてますが、まだ、めぐみさん以外の女性社長を出してないなと思いまして。男性が多い世界であるんですが、取材でお会いした女性社長さんたちが、みなさん個性的でエネルギッシュですごいなって思っていたんです。そういうキャラクターも出したいなって思ってました。演じる久保田磨希さんも関西の出身。迫力のあるパワフルな社長をやっていただくのにはぴったりだなっていうところで今回お願いしました」と振り返った。
23週にはほかにも、台風による停電シーンで、舞と貴司(赤楚衛二)、悠人(横山裕)と久留美(山下美月)によるロマンスを連想させるようなシーンも登場した。これについても熊野は「佃さんが考えてくれたアイデアです。かたやデラシネ、かたや久留美の部屋でしっとりと話すシーンですが、改めてこのふた組のお互いの気持ちのやり取りをきちんと描いておきたいなって思って登場させているんです。そこを佃さんに書いてもらって素敵なシーンになったと思います」と話す。
ドラマ放送も残り1月を切った。熊野は「舞が取り組んでいる東大阪のものづくりや人をつなげていくことは舞が最終的に空へ舞い上がっていくことにつながるんです。それはどういうことなのか、それをみなさんには楽しみに見てほしいなと思っています」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)