「アンナチュラル」塚原あゆ子監督が“避けてきた”撮影とは?『わたしの幸せな結婚』で挑戦
ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」「最愛」などを手掛けたヒットメーカーとして知られる塚原あゆ子。目黒蓮(Snow Man)主演の映画『わたしの幸せな結婚』(3月17日公開)では、『コーヒーが冷めないうちに』(2018)に次ぐ2作目の映画監督を務め、人気原作の実写化の難しさや、本作での“気づき”などを語った。
コミック化もされた顎木あくみの小説を原作とした本作は、大正ロマンを思わせる架空の時代が舞台。継母と義理の妹に使用人のごとく扱われていた斎森美世(今田美桜)が、美しいが冷酷とうわさされる名家の当主・久堂清霞(目黒)と結婚することになるところから物語が展開する。
塚原監督は、本作の魅力を「いまの時代ではあまりないような、ゆっくり成長していくラブストーリー」であるといい、「いまはメールですぐ自分の気持ちを送れてしまう。でも、清霞と美世は、婚約までしているのにお互いの距離感が遠い。特殊な関係だけど、そこが初々しさや、いわゆる“キュン”的なものに溢れてる時代設定だなと。そういうことが生かされている原作」と感じたという。
映画化にあたり、「原作は、いろいろな人のバックボーンが深く描かれているんです。でも、映画で全部を描くことはできない。ここだけやって、ここだけやらない、となると誰かしらの贔屓になってしまう。ドラマだと10時間と細密に使える時間がありますが、映画の2時間だとダイジェストになりがちなので、初めから“ここしからやらない”と一定のところを決めて、捨てる努力をしました」と明かし、「なにも知らなくても、原作を読んだ方でも、読まない方でも楽しめるようなフォーマット、構成みたいなものを発明しないといけないのかなと思いました」と実写化の難しさを語る。
また、映画監督2作目となるが、「『映画』と一言で言っても、いろいろな作品があって、求められる“映画”感が違います。前作と今の作品と、今やっている作品、誰が誰に向けてつくるのか、という意識を持つべきだなと感じました」と気づきもあった。「ドラマだから、映画だから、アニメだから、尺が2時間だから、10時間だからではなく、その作品における2時間であったときのベスト、みたいなことを探っていかないと。“映画”とひとくくりにするのは大変傲慢な話なのかと思いました」と実感したそうだ。
さらに、本作では、特殊な能力“異能”を表現するためにCGを多用するシーンにも挑戦。「これまでCGを多く使った作品をあまりやってこなくて、むしろ避けてきた感じでした。難しいんです」と監督は語り、「世の中には、監督で得意な方がいらっしゃるので、そんな(CGを使った)お金のかかる撮影なんて、わたしなんて……と思っていたところがありました。でも、やらざる得なくなってしまったので(笑)、ビクビクしながら」と笑いながら振り返る。
今回は、「『ちゃんとCGを使いこなせたのか?』と聞かれたら、とてもじゃないけどまだまだぜんぜん使いこなせないなという感想で終わった感じです」と謙遜しつつも、「ラブストーリーや人間ドラマにカット数は必要ないと思うんですが、日本のアニメの状況を見ていると、バトルシーンに対してはもっとカットを割りたいです」と語り、「もっとCGの使い方を綿密に勉強すれば、大量なカット数が撮れると思うんです。お金のことなどいろいろとコントロールできるスキルを身に付けられたら」と目標を口にする。
なお、本作の撮影では、唯一天候に苦しんだそうで、「雪に降られて……それも私の責任。『京都の雪なめんな』とみんなに言われていたんです。だけど『2月後半なら大丈夫だろう』という甘さがみんなを苦しめ、除雪機騒ぎになって、しょんぼりでした」と苦笑い。「後半の屯所でのシーン、建物の屋根の雪を落とすために放水騒ぎになり、本当にごめん! という感じでした。『京都の雪なめんな』というのが今回の大きな収穫です(笑)」と振り返っていた。(編集部・梅山富美子)