マルチバースは「心残りの表れ」オスカー最多『エブエブ』が描く移民家族と家族愛
第95回アカデミー賞において、作品賞を含む最多7部門で受賞した映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(以下、エブエブ)の特報映像が公開された。主演女優賞のミシェル・ヨーや助演男優賞のキー・ホイ・クァン、監督コンビのダニエルズらが、本作について、移民を描いた物語だと語っている。
映画『エブエブ』は、何の変哲もない中国移民の女性エヴリン(ミシェル)が、マルチバース(並行世界)に存在する別の自分から驚異的な能力を得て、人類を救う戦いに挑むSFアクション。経営するコインランドリーの税金問題、頑固な父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリンは、ある日突然、夫のウェイモンド(クァン)に乗り移った“別の宇宙の夫”から「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託され、奇想天外なバトルに身を投じる。
本作で描かれるマルチバースについて、監督コンビ、ダニエルズの一人、ダニエル・クワンは「心残りの表れだ」と動画内で語っている。「移民にはリスクが伴い、“たられば”を考えるものだ。“祖国に残っていたら?”“移住は正しかったの?”とね。移民となった50代の母親はこう問い掛けながらマルチバースで探求するのさ」
そんなダニエルズが手掛けた脚本に登場する中国系家族について、クァンは「描写が正確だ」と感謝。それがハリウッドにおいていかに画期的な事なのか。アジア系俳優として長年のキャリアを誇り、一家の祖父を演じたジェームズ・ホンは「私が業界に入った頃、アジア系俳優の主要な役はなく、何十年も型にはまった役ばかりだった。普通に扱われなかったんだ」と振り返る。
カオスでクレイジーな世界観が話題の本作。しかしミシェルは、葛藤を抱えて生きる、ひとつの家族の絆にも注目してほしいと語っている。「本作を見終わったらこう思ってほしい、家族とは1つであり支え合うものだとね」(編集部・入倉功一)
映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は全国公開中