『アルマゲドン』なぜヒット?日本では『SW』『マトリックス』抜く
今から25年前、パニックアクション映画として、異例の大ヒットを飛ばした『アルマゲドン』が、本日(17日)よる9時より日本テレビ系「金曜ロードショー」で放送される。同作は1998年12月に日本で公開され、歴代興行収入で現在もトップ20に入っており、感動の度合いも予想以上だったことから“泣きパニ映画”という言葉も生み出した。『アルマゲドン』は、なぜここまでのブームを引き起こしたのだろうか。※数字は日本映画製作者連盟、興行通信社、Box Office Mojo 調べ。(斉藤博昭)
『アルマゲドン』の日本での興行収入は135億円。これは『E.T.』(1982)、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004)と同じ数字で、歴代興収ランクは現在20位、洋画のみでは歴代9位だ(※興行通信社調べ・2023年3月17日時点)。しかも公開時は『タイタニック』に次ぐ歴代2位だった。記録的なヒットだったと言える。
1998年12月、お正月映画の目玉として公開された『アルマゲドン』。1999年度の年間ナンバーワン作品となるわけだが、この年の2位が『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』、3位が『マトリックス』、4位が『シックス・センス』だったので、強豪のライバルを抑えての頂点でもあった。この前年の1998年の1位は『タイタニック』で、ハリウッドの超大作が多くの観客を一気に引きつけるという、一つの流れが作られていた。さらに1997年は『もののけ姫』の大ヒットもあり、1本の作品に人々が集中する傾向が続き、そこに『アルマゲドン』もハマった印象だった。
ただ当初、ここまでの大ヒットを飛ばすとは予想されなかった。『アルマゲドン』では、地球へと向かう小惑星が発見され、衝突の危機が高まるなか、人類滅亡を阻止する大プロジェクトが描かれるが、ちょうど半年前の1998年6月に日本で公開された『ディープ・インパクト』が、そっくりの物語だった。同作は巨大彗星が地球に衝突するまでの、最後の日々を描いた、やはりパニックアクション超大作。製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ。すでに1998年のランキングで、『タイタニック』に次ぐ洋画2位の数字を叩き出していた。後から公開される『アルマゲドン』は、明らかに“二番煎じ”のイメージを与え、そこまで観客は来ないだろう……というのが、映画業界の予想だった。
そこで日本の公開時に使われたのが、前述の“泣きパニ”というフレーズ。『アルマゲドン』の試写を観た記者の感想から生まれたもので、“泣けるパニック映画”を売りにしたところ、日本の観客に強烈にアピールした。「パニック」と「感動」の両方を同時に、しかも究極レベルで味わいたい。そんな観客の心理を、ちょうど1年前に公開された『タイタニック』が刺激していた。当時の『アルマゲドン』の宣伝では、もちろん小惑星衝突のスペクタクルを売りにしつつ、人類の運命を託された男たちの命がけのミッション、愛する人との約束や絆で、いかに泣けるかが前面に押し出された。実際に泣けるポイントが、『アルマゲドン』では非常にわかりやすく描かれており、観た人に勧めやすいというのも、人気が広がる要因だった。アクションはド派手に、人間ドラマはシンプルに描くことを得意とするマイケル・ベイ監督“らしさ”が好結果につながったわけだ。
キャストも当時としては最高のメンバーが揃ったことで、観客を共感させやすかった。『ダイ・ハード』シリーズで揺るぎないトップスターの地位を築き、1994年の『パルプ・フィクション』、1997年の『フィフス・エレメント』と代表作が相次いだ時代のブルース・ウィリス。前年の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー賞脚本賞を受賞し(※マット・デイモンと共同)、俳優としての勢いも加速し始めていたベン・アフレック。同じく一気に注目度を高めていたリヴ・タイラーという3人の共演は話題を集めた。当時、リヴは、人気ロックバンド「エアロスミス」のボーカル、スティーヴン・タイラーの娘ということで注目されていたが、そのエアロスミスの歌う「ミス・ア・シング(I Don’t Want to Miss a Thing)」が『アルマゲドン』の主題歌となったのも大きなトピックで、メロディアスなサビの部分はテレビのCMなどあちこちで流れ、作品とセットで大ヒット。『タイタニック』と似たパターンだった。同曲は、アカデミー賞歌曲賞にもノミネートされた。このあたり、ヒットメーカーのプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーならではの戦略が功を奏した。
『アルマゲドン』は、日本だけではなくアメリカでもヒットし、2億158万ドル(約272億1,330万円※1ドル135円計算)という興行収入を達成。先行した『ディープ・インパクト』(1億4046万ドル・約189億6,210万円※1ドル135円計算)をはるかに上回る数字を残した(※いずれも Box Office Mojo 調べ)。しかし“泣き”の部分を強くアピールしてのヒットは、日本独自だったとされる。いま改めて観ると、小惑星衝突の阻止方法などかなり荒唐無稽に感じるかもしれない。しかし、音楽との相乗効果、キャリア最高潮のスターたちの輝きなど、多くの要素で感動“させられてしまう”映画のマジックは再認識することだろう。