『ハムナプトラ』俳優が272キロの男になるまで…メイキング映像が公開
第95回アカデミー賞で主演男優賞とメイク・ヘアスタイリング賞の2冠に輝いた映画『ザ・ホエール』から、主演のブレンダン・フレイザー(『ハムナプトラ』シリーズ)が特殊メイクによって体重272キロの男に変身していく過程を収めたメイキング映像が公開された。約40日の撮影期間中、メイクは毎回4時間かけて行われたといい、途中、寝落ちしてしまうブレンダンの姿も確認できる。
『ザ・ホエール』は、ゲイの恋人を選んで家族を捨て、その恋人の死後、贖罪するかのように暴飲暴食を繰り返して体重272キロとなったチャーリーの物語だ。チャーリーの姿は“命を脅かすほど深刻な状態”であることを十分に伝えられるものにする必要があるが、顔を分厚い特殊メイクで覆いすぎて感情が伝わらなくなることは避けたいと考えたダーレン・アロノフスキー監督は、『ノア 約束の舟』『マザー!』などでも組んだメイクアップ・アーティストのエイドリアン・モロットに相談。監督の希望をかなえるべく、モロットは100%デジタル技術による特殊メイクを開発した。
まずは、役柄のニセの体とブレンダンとの境目がわからないようにし、さらにブレンダンが顔の筋肉を自由に動かせるようにするために、3Dモデリングを使ってデジタル・スカルプチャーを作成。その後、クレイを使ったスカルプチャー作りを省いて、すぐに3Dプリントを行った。全ての特殊メイクをデジタル技術で作り出す方法は今回が長編映画初の試みとなり、モロットたちは見事オスカーを受賞した。
また、ボディも同様にデジタル技術で制作された。ファットスーツは5人がかりで着脱せねばならないほどの重みがあり、ブレンダンは「あれを着た状態で動けるようになるまで、徹底的なトレーニングを行った。そんなところに筋肉があったのか、と思うような筋肉がたくさん鍛えられたよ」と振り返る。「肉体的には今まで演じてきた役の中でダントツでハードだった。若い頃、砂漠の中で走り回ったことなんて、これに比べればなんてことないよ!」と数々のアクションに挑んだ『ハムナプトラ』シリーズと比較して笑った。
スーツの中にはF1ドライバーのクールスーツに使われているような冷却システムが内蔵されていたとはいえ、暑いことに変わりはない。感情をむき出しにすることが求められる難役というだけでなく、肉体的にもハードな撮影となったが、最終的には、スーツを脱いだ際にバランスを失い、めまいを覚えるほど体になじむようになっていたという。オスカー主演男優賞に輝いたブレンダンの全身全霊の演技は必見だ。(編集部・市川遥)
映画『ザ・ホエール』は4月7日よりTOHOシネマズシャンテ他にて全国公開