紀里谷和明監督「苦しみの連続」だった20年 集大成に感極まる
映画『世界の終わりから』(4月7日公開)完成披露舞台あいさつが20日、新宿バルト9で行われ、紀里谷和明監督、主演の伊東蒼、共演の毎熊克哉が出席。紀里谷監督は、2004年の劇場映画デビュー作『CASSHERN』から来年で20年になると語ると「どん底で絶望の20年。でもそれの絶望のなかで、どうしても伝えなければいけないと思った」と“絶望”が創作の原動力になったことを明かした。
本作は『GOEMON』(2009)、ハリウッド映画『ラスト・ナイツ』(2015)などの紀里谷和明監督が、“世界の終わり”と、それを救うために奔走する女子高生を描いた物語。事故で親を亡くし、学校にも居場所を見つけられず生きる希望を見いだせずにいた高校生のハナ(伊東)が、突然現れた政府の特別機関と名乗る男性に導かれ、世界を救うために力を尽くす姿が描かれる。
紀里谷監督の「最新作にして最後の作品」と銘打たれている本作。クランクインは昨年7月30日。撮影期間は1か月という過酷なスケジュールだったという。紀里谷監督は「無謀なスケジュールでしたが、キャスト、スタッフの頑張りのおかげで出来上がった」と感謝を述べると「この作品を作ろうと思ったのは、クランクインからさかのぼること1年前だった」と明かす。
そこから脚本を1か月で書き上げた。紀里谷監督にとっては異例の速さだと言うが、その理由について「僕は来年で監督デビューしてから20年になります。その間、絶望のどん底でとにかく苦しみの連続でした。そのなかで自分の勝手ですが、どうしても伝えなければいけないと思ったことがあった。それは未来に対しての希望でした」と20年間感じてきた思いの強さが、執筆の熱意になったと説明する。
そんな熱い思いが詰まった作品が完成した。紀里谷監督は再度、伊東や毎熊らキャスト、そしてスタッフに感謝を述べると「映画監督としての使命があるならこの作品で全うできたと思います」と発言し、感極まって言葉に詰まる場面も。さらに紀里谷監督は、映画監督になってからさまざまな批判などを受けてきたとき、心を痛めながらもずっと見守ってくれていたという両親を劇場に招待したと観客に紹介し「私事ですが、本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを伝え、思わず涙ぐんだ。
紀里谷監督渾身の作品で主演を務めた伊東は「撮影は本当に大変で、苦しい気持ちや悲しい気持ちになることが多かったのですが、常に紀里谷監督が寄り添ってくださいました」と述べると「完成した作品を観て、紀里谷監督が伝えたかったことってこういうことなんだなと思えたし、一人じゃないんだと感じることができました」とメッセージを伝えていた。(磯部正和)