紀里谷和明監督「最後の作品」が初日 難役演じ切った伊東蒼に感謝
『GOEMON』『CASSHERN』などの紀里谷和明監督の「最後の作品」と銘打たれている映画『世界の終わりから』が初日を迎え、新宿バルト9で行われた舞台あいさつに主演の伊東蒼と共に来場。本作について「初心に戻った、デビュー作のように感じている」と語る紀里谷監督は、およそ10分間の舞台あいさつに感謝の思いを凝縮。その熱い胸の内を語った。
紀里谷監督最後の作品の主人公は、事故で両親を亡くし、学校にも居場所を見つけられず生きる希望を見いだせずにいた高校生のハナ(伊東)。突然、世界を救う使命を託されたハナが、“信じてくれた人たちのため”という思いと“こんな世界は終わってしまえばいい”という両極端の感情に戸惑いながらも奔走する。他キャストに毎熊克哉、朝比奈彩、増田光桜、岩井俊二、市川由衣、又吉直樹、冨永愛、高橋克典、北村一輝、夏木マリら。
3月20日に行われた完成披露舞台あいさつの場では「この映画を観て、皆さんがどう思うのか分からなくてドキドキしています」と緊張の面持ちで語っていた伊東だが、その後に行われた試写会を通じてその感想を聞く機会があったそうで、「この作品を通じて受け取っていただきたかったもの、届けたいものがちゃんと届いていたんだなと。だから安心して今日を迎えることができました」と安どの表情。
主人公のハナは、孤独と絶望に満ちた世界を必死に生き抜いていく。「ハナは大変なことや、しんどいことがたくさんある女の子ですけど、この映画を観た友だちが『ハナちゃん頑張ったね』と感想をくれて。それを聞いて、撮影でわたしが頑張ったことを認めてもらえたようで、うれしかった」と晴れやかな顔を見せた伊東。「世界の終わりを止めるという大きなものをテーマにした作品ですが、この作品を通して、誰もひとりぼっちじゃないよと。周りの人に目を向けることで、その人の孤独をカバーできるんだよということを感じていただけたらと思うので、そんな身近なことが届けばいいなと思います」とその思いを切々と語った。
そんな伊東を優しいまなざしで見守っていた紀里谷監督は、「僕は先日(の完成披露で)も散々しゃべったんで。言いたいことは蒼ちゃんが言ってくれました。この場を借りて、本当にありがとう。大変でしたね」と伊東に労いのコメント。さらに「キャストの皆さん、スタッフの皆さんが頑張ってくれました。皆さんの頑張りがなかったらこの作品はございません。またこれまで本当に多くのファンの方が支えてくださった作品でございます。SNS上で励ましの言葉をいただいたりと、いつも救われております」とファンヘの感謝を表すと、「本当に小さいところからのスタートです。小規模で、初心に戻ったというか。これがデビュー作だと感じています。小さいところからのスタートですが、皆さんのお力をお貸しください。本当にありがとうございました」と呼び掛けた。
言いたいことはすべて言い尽くした感のある紀里谷監督に、スタッフから「もうひと言」とリクエストが。紀里谷監督は「蒼ちゃんが言ったことがすべてです」と言いながらも、「いつもよく“監督の作品”だと言う人がいますけど、僕はそれは“俳優さん”だと思います。特に今回、蒼ちゃんはほぼ全部のシーンに出ています」と切り出すと、「ご覧になって分かるように、本当に過酷な内面の表現ですよね。苦しいこと、悲しいことを100%お芝居するのは本当に大変なことだと思う。それを毎日毎日、暑い日も寒い日も、一か月間で撮って。シーンがつながるようにちゃんと考えて演じてくれた伊東蒼さんに、本当に感服しておりますし、感謝しております。本当にありがとう!」と伊東にあらためて感謝の思いを告げた。伊東も「ありがとうございます」と感激した様子で、二人の姿に大きな拍手がわき起こった。(取材・文:壬生智裕)
映画『世界の終わりから』は全国公開中