平成ライダー最強タッグ!高岩成二&坂本浩一監督が日本アクションの未来を語る
“ミスター平成仮面ライダー”の異名を持つスーツアクター・高岩成二が、数多の特撮シリーズを手掛ける坂本浩一監督とタッグを組んだ、主演ドラマの続編「グッドモーニング、眠れる獅子2」。互いにアクションにルーツを持ち、多くのファンをうならせてきた“最強タッグ”が、本作の撮影を振り返りながら、日本アクション界への思いを語った。
【動画】高岩成二VSライダー&スーパー戦隊俳優!ドラマ「グッドモーニング、眠れる獅子2」予告編
前作「グッドモーニング、眠れる獅子」は、さえない中年芸能マネージャー・九條和真(高岩)が、謎の集団に狙われる担当アイドル・綿貫玲実(渡邉美穂)を守るために激闘を繰り広げるアクションドラマ。『ジョン・ウィック』『Mr.ノーバディ』に通じる、“ナメてた相手が殺人兵器だった”映画の系譜に連なる痛快作にして、高岩の顔出し初主演作。平成ライダー主演俳優たちが敵役を務めた豪華布陣も話題を呼び、ひかりTVで放送・配信されると大反響となった。
坂本監督が「ひかりTVさんの視聴回数が非常に良かったというお話を聞いていますし、お客さんからも、スタッフからも良い評判をいただいた。そのうえで続編が実現できたのは嬉しい限りです」と振り返ると、高岩も「実家の家族は、僕の顔出し主演作なんてはじめてなので、恥ずかしかったみたいです。“お父さんそっくりになったね”なんて言われて(笑)。でも、面をかぶっている僕しか知らなかったので、非常に喜んでくれました」と反響を明かす。
特撮レジェンドの集結に感謝
続編で九條が立ち向かう相手は、謎の人間狩りを主催する秘密結社アルテミス。芸能マネージャーから見習いシェフへ転身を遂げた九條が、一流シェフを目指す少女・柚木朱音(小栗有以)を守るため、マンハント集団とバトルを繰り広げる。
前作は、平成ライダー主演俳優が高岩のために集結。椿隆之(「仮面ライダー剣(ブレイド)」)、井上正大(「仮面ライダーディケイド」)、西銘駿(「仮面ライダーゴースト」)、佐野岳(「仮面ライダー鎧武/ガイム」)が高岩と戦ったが、続編にも彼らに匹敵する顔ぶれが集まった。
今回、高岩と火花を散らすのは、「仮面ライダーアギト」の賀集利樹、「仮面ライダー555(ファイズ)」の半田健人、「轟轟戦隊ボウケンジャー」の出合正幸、そして「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」の三大特撮を制覇したケイン・コスギ。国際的なアクション俳優のケインはもちろん、出合も坂本監督と同じ倉田アクションクラブ出身の肉体派だ。高岩は「ケインとの戦いは楽しみでもあり、がっつりと速いアクションができるので緊張もしました。出合くんも、僕のアクションスタイルと畑が違う方だったので、戦うのが楽しみでした」と振り返る。
坂本監督とアクションコーディネーターの和田三四郎が生み出す、キャラクターの個性に合わせた多様なアクションは、本作の見どころのひとつ。全てのバトルをこなした高岩は「そこはもう『死亡遊戯』というか。賀集と戦ったら次は出合くんだ! みたいな感じで、前作も今回もしんどかったです。それにみんな、本気でかかってきますからね」と苦笑するが、それは、坂本監督の高岩に対する絶大な信頼の表れでもある。
「ベテランの方が相手をしてくれるので安心できますし、自分も高岩さんが主演なので信頼して任せることができる。これだけのアクションを、限られた撮影スケジュールで収めることができたのは高岩さんあってのことで、やはりレベルがぜんぜん違いますね。キャストの皆さんも、高岩さんと戦えるということで快諾してくれていると思います」(坂本監督)
平成ライダー俳優の成長
その言葉に「何でみんなにボコりたいとか、倒したいとか言われるのか……」とボヤいてみせる高岩だが、かつて新人俳優だったキャストの成長には感慨深いものがあるようだ。
「賀集なんかは、僕がライダーデビューした『アギト』の相方ですから。当時は(アギトで演じた)津上翔一みたいに、いつもニコニコしているイメージでしたが、今回は悪の医者を堂々と演じていて、役者としての振り幅に感心しました。それは前作のみんなも、半田も、出合くんも同じです。出合くんなんて、普段は天然キャラですごく柔らかい奴なのに、悪い目つきしているな~! と。彼も僕と戦うのをすごく楽しみにしてくれていたみたいで、嬉しいですね」
さらに、九條の傭兵仲間・黒虎を演じたケインは、肉体を完璧に鍛え上げた状態で撮影に参加。坂本監督は「ケインとは去年『仮面ライダーリバイス』の劇場版でご一緒したんですが、その後で『SASUKE』のトレーニングに入ったんです。そこで5~7キロくらい絞って、収録後にそのまま『グッドモーニング』の現場ですから。バキバキに仕上がってましたね」と明かす。
「こっちはもう、ゆるゆるですよ(笑)。ケインも流石に若い頃に比べたら多少は落ちているんじゃないかと思っていたんですが、ぜんぜん勢いが落ちていなくて。マジでお前、速いよって!(笑)」(高岩)
さらに、高岩とジャパンアクションクラブ(現:ジャパンアクションエンタープライズ)の同期でもある、横山一敏と今井靖彦が続投。前作には「平成ウルトラ三部作」のスーツアクター・中村浩二も出演した。坂本監督が「今回はさらに、現役でウルトラマンをやっている岩田栄慶くんも出てくれているので、特撮ファンは、あ! っと思っていただけると思います。夢の対決ですからね」というと、高岩も「うれしいカードですよね」と笑みを浮かべる。
アクション業界の未来
まさに、アクションファンの夢が詰まった「グッドモーニング」。これまで、特撮作品などを通じて業界を支えてきた二人は、日本のアクションを取り巻く現状をどう見ているのか。坂本監督からは「今の日本のアクション業界は厳しくなっています」と意外な答えが返ってきた。「自分らの頃は(真田)広之さんやジャッキー(・チェン)といった、努力すればこうなれるんだっていう夢がありましたが、最近はなかなかそういう目標がいない。『るろうに剣心』のようなアクション映画は出てきていますが、アクションに特化したスターがいないので、若いスタントマンが育たないんです」
「特撮が好きでスーツアクターに憧れるけど、スタントマンになりたいっていう子はなかなかいません。スーツアクティングとスタントはまた違った分野でもありますから。高岩さんや自分の世代はどちらもやってきていますが、今はオールマイティーにできる子っていうのはなかなかいないですね」
高岩も「坂本監督の言う通りです」と厳しい言葉を選ぶ。「スーツアクターに憧れてこの世界に入ってきてくれる方は多くなりましたが、それだけでは良くないのかなと。ヒーローの格好をしてアクションができるというだけではなくて、そこにはまず、お芝居というものがありますから。表情が見えない面で、感情を表現しなくてはならない。そういう意味で今は、面に表情が見えてこなくて、お客さんに興味を持たせる表現ができていないんじゃないかと感じる時もあります。まぁ、現場を離れた立場だから言えることなんですけど」
「昔はジャッキーのスタントを観たら、自分もやりたい! って思ったものですが、今はそういうものがないですからね」という坂本監督。だからこそ「グッドモーニング、眠れる獅子2」のような作品が必要だと考えている。「こういう作品を面白がってくれて、アクションやってみたいと思ってもらえれば嬉しいですよね。自分らはこれからも作る気まんまんですので、ぜひ皆さんに観ていただきたいです」という坂本監督に続いて、高岩も「定職につかない50代のシリーズとして続いてくれれば(笑)。それでも生きていけるんだって、皆さんに思っていただければいいですね」と語った。(編集部・入倉功一)
ドラマ「グッドモーニング、眠れる獅子2」は4月12日よりLemino・ひかりTVにて配信開始