斎藤工、坂本龍一さん偲ぶ 音響監修の映画館「体験するに相応しい」
俳優の斎藤工さんが13日、109シネマズプレミアム新宿で行われたWOWOW「映画工房」特別試写会に出席し、先月28日に亡くなった音楽家・アーティストの坂本龍一さんの思いが詰まったシアターの魅力を語った。イベントには女優の板谷由夏さん、第27回PFFスカラシップ作品『裸足で鳴らしてみせろ』を手がけた映画監督の工藤梨穂さんも登壇した。
「映画工房」は、話題の映画やWOWOWシネマならではの特集の魅力を、映画好きの斎藤さんと板谷さんが語りつくす情報番組。今回は、明日オープンする109シネマズプレミアム新宿とのコラボレーションイベントとなり、35mmフィルム映写機を設置したシアター8で名作『ニュー・シネマ・パラダイス』が特別上映された。
本劇場は、坂本さんが音響システムを監修している。「ある意味、坂本龍一さんが遺してくれた音の空間。ロビーに流れる音楽だったり、ロビーのケーブル一本にも坂本さんのこだわりがある」と魅力を語る斎藤さんは、「いみじくもこのタイミングでこの場所を遺してくれた。映画館の価値というか、より体験するに相応しい空間になっていますね」とコメント。坂本さんの息吹をそこかしこで感じられるシアターに、特別な思いを感じている様子を見せた。
映画愛に満ちたノスタルジックな物語を堪能し、観客がその余韻に浸る中、斎藤さんは「(映画の)後半、隣でグシュグシュと(板谷さんがすすり泣く)音が聞こえてきて。でもそれがいいですよね」と語ると、板谷さんも「(涙を)拭くものがなくて。(ポップコーンについている)お手拭きを使ったらヒリヒリしてきちゃって……ハンカチなしで観ちゃダメですね」と続ける。
イベント前に映写室などを見学したという斎藤さんは、「フィルム上映ってたまらないですね。しかも内容が内容じゃないですか。これから誕生する映画館で、特に終盤での映画館がなくなっていくというシーンを観るというのは、(劇中で)エモーショナルにとらわれるなと言ってましたけど、これはとらわれちゃいますよね」と明かすと、「それを共有できたことが幸せでしたね」としみじみ語った。
板谷さんは「今日が初のイベント上映なんです。フィルムでご覧になっていかがでした?」と問いかけると、会場からは大きな拍手が。斎藤さんも「皆さんとご一緒できて、いい空間でした」と感慨深げにコメント。「久しぶりに観たらやられましたね」と続ける板谷さんに、「観るきっかけとタイミングって大事だなと。われわれもお仕事の性質上、新作を追うことが多いんですけど、やはり新しいものに言及するだけでなく、こういう劇場で旧作・名作に触れるのは豊かな時間だなと思います」と返すなど、しばらく映画の余韻に浸っている様子だった。(取材・文:壬生智裕)
「斎藤工×板谷由夏 映画工房」はWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて毎週金曜午後9時半~ほか放送・配信(無料)