【一部ネタバレあり】コナンがこんなに感情的になったことはない!『名探偵コナン 黒鉄の魚影』高山みなみ&林原めぐみ<インタビュー>
劇場版『名探偵コナン』シリーズ最新作、劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』。第26作となる本作では、江戸川コナンの宿敵である黒ずくめの組織が本格登場する。東京・八丈島近海に敷設された海洋施設「パシフィック・ブイ」を舞台に、灰原哀にかつてない危険が迫る。江戸川コナン役の高山みなみ、灰原哀役の林原めぐみが対談し、イメージが変わったというキャラクターや、本作のMVP、コナンにとって「初めて」というシーンを振り返った。(一部ネタバレあり)
Q:『黒鉄の魚影』は、TVシリーズ・劇場版含めて過去の様々な名シーンを彷彿させる仕掛けが施されています。おふたりが「おっ」と思ったシーンはございますか?
高山みなみ(以下、高山):やっぱり、コナンが灰原にメガネをかけるところですね。
林原めぐみ(以下、林原):うんうん。
Q:コナンが「知ってるか? そいつをかけると正体が絶対バレねーんだ!」と灰原に告げる「ピスコ編」の名シーンがオーバーラップしますね。
林原:でも、もう二度と借りたくない(笑)。ろくな目に遭わないんですよ……。
高山:でも助かっただろ?(笑)
林原:助かればいいってもんじゃない!(笑) このメガネのやり取りにも、コナンくんの不器用さが表れていますよね。
高山:そうだね。ここでメガネをかけさせたときは、まだそこまで危ない感じでもなかったから、「これでコイツを(米花町に)帰せば大丈夫だ」くらいの気持ちでした。
林原:まさかのこの先あんなことが待っていようとは……。
高山:そうそう(笑)。
Q:メガネのシーンは、阿笠博士(声:緒方賢一)もいい表情をしていますよね。
高山:博士、優しい表情ですね。この3人のすごく良いシーンでした。
Q:阿笠博士の大活躍も、ファンには嬉しいポイントです。
林原:今回も影のMVPだと思います。
高山:こんなに振れ幅の大きい博士を観たこともなかったしね。今回はみんな感情を爆発させるところがあるけど、博士は特にスゴい。
林原:哀ちゃんはこの博士を知らないから、事件解決後はまた厳しくやっていると思います(笑)。
高山:博士のあんな表情は、初めて見たかもしれないです。こんなにも博士が灰原を大事に思っていたのかと、このときコナンは知ってしまったんですよね。怒りや焦りもあったけど、あれも余計に感情が高ぶった理由の一つでしたね。今回は特に頭に血が上っていたので、呼吸の仕方までいままでと違ってしまいました。う~ん……ここまで感情的になったことは、おそらくなかったと思います。
林原:目暮警部(声:茶風林)や佐藤刑事(声:湯屋敦子)の前で取り乱してしまうシーンもあったしね。
高山:そうだね。今回起きる事件は灰原哀だけの問題ではなく、自分たちの周りすべてに危険が及んでくる事態になりかねない。なのに、現場は八丈島という、本土から距離がある大きな密室状態でした。赤井さん(声:池田秀一)や安室さん(声:古谷徹)もすぐには動けず、まずは一人でやるしかなかった。
Q:本作を通して、高山さんから見た灰原、林原さんから見たコナンに対して新たな発見はありましたか?
高山:本当に可愛い子なんだと再確認しましたね。小さくなった身体に大きな荷物を背負って、弱い部分を必死に隠している。頭はいいし「何でもわかっているんだ」という顏はしているけど、それも弱さを見せたくないからですよね。虚勢を張る姿さえ可愛く思えます。事情を知っていて、同じ運命のコナンなら「守ってやるから!」と言うでしょう。いや、もちろん守ります!
林原:彼の無茶を越えた正義感というか、渋谷だろうがシンガポールだろうが命を賭して猪突猛進に進んでいくところは本当に凄いなと思います。「とにかく救う」だったり「とにかく探す」だったり、自分の中に沸いた衝動に対しての熱量がすさまじい。それは少年としての無鉄砲さにも見えるし、青年として、大人顔負けの責任感ともとれる。行き過ぎているようでいて観ている人が違和感なく受け入れられてしまう説得力があるんですよね。
高山:いろいろなキャラクターを演じてきましたが、コナンは一番汗をかきますね(笑)。冷静沈着な……というイメージもありましたが、もう「冷静って何だっけ?」状態(笑)。でも、コナンの言葉は自分の中にスッと入ってくるし、こちらが声にするときも自然に感情が乗ってくれます。だからあんまり演じているという感覚がないんです。「まわりくどい!」と思うときはありますが(笑)。
Q:林原さんは、改めて灰原哀との歩みをどうご覧になっていますか?
林原:最初に登場した回に、彼女のすべてが入っていると思っています。「この少女は何者なんでしょうか? 続く」ではなく、元・組織の人間だったこと、拳銃が使えること、崩れて泣くところ……彼女の自己紹介はすべて終了しました的な登場の仕方をしましたよね。そこから江戸川くんや少年探偵団、阿笠博士といった周りの人たちと関わることで、灰原哀の“哀”がどんどん解けていって、もしかしたら幼かったころの宮野志保ちゃんが顔を出しているんじゃないかとすら思ってしまいます。でもそれは、(組織から追われているという)危機感が薄まってしまうことでもある。そういった意味では危険なところに行ってしまっているのかもしれないけど、彼女の中に大切なものが増えていった証拠でもあります。そんななか、「バスジャック編」で江戸川くんから「自分の運命から逃げるんじゃねーぞ」と言われたりして、彼女の気持ちは「いつ死んでもいい」から、いまはもう「生きたい」という気持ちに変化してきていると思います。最初は氷のようだった彼女ですが、本当は努めて氷のように振る舞っていただけだったのかもしれませんね。
Q:シリーズの歩みでいうと、スケール感がどんどん拡大しているのも特長ですよね。今回はドイツから物語が始まります。
高山:まず「組織のスケールも拡大している!」と思いますよね。TVシリーズ第1話では、ジンとウォッカが二人で取引に来ていましたから。
林原:ジェットコースターに乗って下見してね。
高山:そうそう(笑)。あのときは想像もしていませんでしたが、潜水艦まで出動させられるとなると、かなり巨大な組織なのだろうと恐ろしくなりますね。
林原:今回のネタバレをちょこっとだけするとしたら、「ウォッカは舐めちゃいけないな」ですね。それこそジェットコースターとか乗っちゃってるし、ちょっと目立つ黒ずくめで街中を歩いちゃっていますし、ちょっと舐めていましたが、やっぱり恐怖の対象なんだなと今回考えを改めました。お酒としてのウオッカの度数も相当なものですしね。
Q:イメージが変わるという部分も含めて、新しさが詰まっていますよね。
林原:今回の舞台であるパシフィック・ブイの「世界中の防犯カメラをつなぐ」という設定も、ありそうな未来だなと感じました。『天国へのカウントダウン』で登場するシステムもバーチャルの体感として未来を感じたけど、今回登場するものはよりリアリティーがある。(フィクションである)アニメを観ている安心感ってあると思うんですが、そうじゃない部分がたくさんあって。
高山:そうそう。「薬で小さくなった」時点ですでにファンタジーなんですが、今作はそれじゃ片付けられない要素も含まれていますしね。ファンタジーとリアルが素敵に融合しています。劇場版は「旅行した気分になる」とよく言われるんです。今回も実際の八丈島の風景や建物で、そう感じていただけると思いますよ。
林原:入り込めちゃうんだよね。
高山:本当にあるんじゃない? と思わせる説得力があるよね。でも、大丈夫です。八丈島に行ってもパシフィック・ブイはありませんから(笑)。
林原:安心して聖地巡礼してください。な~んてね。