アニメ「ULTRAMAN」原作より先に完結 神山健治&荒牧伸志、制作時の苦悩と覚悟
円谷プロダクションの人気特撮「ウルトラマン」に基づく清水栄一x下口智裕の大ヒット漫画をアニメ化した、Netflixオリジナルシリーズ「ULTRAMAN」がFINALシーズンを迎える。シーズン1からタッグを組んできた神山健治監督と荒牧伸志監督が、原作漫画よりも先に完結することについて、制作時の苦労と覚悟を語った。
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「ULTRAMAN」は、かつてウルトラマンだった早田進を父に持つ主人公・早田進次郎が、ウルトラマンを模したスーツを装着し、光の戦士たちと共に戦うアクション。「攻殻機動隊 SAC_2045」などでも知られる神山監督&荒牧監督コンビは、本作の制作で、初めてフル3DCGのテレビシリーズに挑んだ。
シーズン1が始動した当時を、荒牧監督は「初めてのフルCG、初めて神山さんと二人で作る、スタジオも新しく開設してと、色々と初めてづくしでした」と振り返る。右往左往の状態だったが、「『ULTRAMAN』という作品と、モーションキャプチャーを使ったCGで動かしていく制作方法は、相性がいいなという手応えが早い時期からありました。はじめは現場は混乱していましたが、『これはいける!』という想いで作りました」と作品に対する手応えを感じていた。
原作漫画は連載中だが、アニメはオリジナルストーリーでフィナーレを迎える。原作より先に完結を迎えることについて、神山監督は「先にこっちが出ちゃうと思うと、良くしてバトンを渡さなきゃいけないし、逆にアニメじゃできないこともあると思うので、そこもすごく気を遣う部分」と複雑な心境を明かしながらも、「アニメのオリジナルとして一度完結することで、自分たちなりに想いを完結できているとは思うので、それはそれとして観てもらいたいです」と確かな自信をのぞかせる。
脚本執筆の際、荒牧監督は原作の清水&下口からも意見をもらっていた。「あまり細かい意見は言われずやりやすかったですが、逆にこっちが出そうと思ったものが、『あれ、これもう漫画に出てるぞ』となる時もありまして、そういう作用が面白かった」と刺激的な制作過程を語りつつ、「アニメでこうして完結したのを観て、逆に『原作はどうなるんだろう?』と興味が湧いたといいますか、アニメが先に完結することでどう変わるかというのはわかりませんが、どっちも観て『面白いね!』となると嬉しいです」と監督の視点ならではの面白さもにじませた。
FINALシーズンでは、数々のウルトラマンシリーズで描かれてきた「ヒーローの在り方」「正義とは何か」について苦悩する進次郎の姿が描かれる。過去シリーズと比較しても、重たいテーマが扱われるが、神山監督は「主人公の苦しい時間に、視聴者に付き合ってもらうというところが、演出家として一番の難しさであり、腕の見せどころ」「苦悩する姿に、視聴者もただ『つらいな』とならないように、進次郎をいかに応援し続けてもらうようにするかと言う部分が、僕がこのFINALシーズンで一番気を遣った部分」と制作時の苦悩と覚悟を振り返る。
一方の荒牧監督も「僕が一番苦心したのは、最後の方の物語の締め方。最後にどこまでやれば『これは終わったね』と、みんなが納得するか。終わった感をどういう風に強烈に出すか。終盤でどう“クライマックス感”というのを出して、皆さんに『お腹いっぱいです』という満足感を与えられるかをずっと悩んでいました」と明かした。
アニメ「ULTRAMAN」を作り終えた今、神山監督は自身が向き合ってきたウルトラマン作品に対して「エンターテインメントの基本みたいなものが全部詰まっています」と表現する。「例えば、スペシウム光線に象徴されるような“光線”。それで巨大な怪獣をやっつけるっていうのが、こんなにシンプルにエンターテインメントなんだなと、改めて知ることができました。シンプルなものほど、面白さの基本みたいなものがあるんだなと思って、作っている時も『光線いっぱい打ちたい!』と思いました(笑)」と語ると、荒牧監督も「そんな風に話しながら一緒に作って、純粋に『これ楽しいね!』となりました。作り手としてもすごく楽しめた印象があり、素晴らしいシリーズを終えられて、本当に幸せです」と完結を迎えるシリーズに想いを込めた。(編集部・倉本拓弥)
Netflixアニメ「ULTRAMAN」FINALシーズン(全12話)は5月11日全世界配信