NHK版「犬神家の一族」ラスト10分に衝撃走る 予告編に伏線
吉岡秀隆が名探偵・金田一耕助を演じるドラマ「犬神家の一族」(BSプレミアム、BS4Kで夜9時~10時30分)の後編が29日に放送され、ネット上では原作と異なる衝撃のラストに騒然となった(※ネタバレあり。物語の詳細に触れています)。
1976年に大ヒットを記録した市川崑監督・石坂浩二主演の映画をはじめ、これまで度々映像化されてきた横溝正史のミステリー小説を原作に、名探偵・金田一耕助が財閥・犬神家で起きる奇怪な連続殺人事件に挑むさまを追う本作。前編では、戦後まもなく信州那須湖畔の広大な屋敷で財界の大物・犬神佐兵衛が他界し、佐兵衛が遺した不可解な遺言状を巡って一族や遺言状に関わる者が一人また一人と死んでいくさまが描かれた。犬神家の長女・松子(大竹しのぶ)の息子・佐清(金子大地)は戦争で顔に大けがを負いマスクをつけているが、果たして彼は本当に佐清なのか。ふいに姿を現した謎の復員兵は何者なのか? 佐兵衛の遺言状の真意は? 金田一はいくつもの謎に頭を抱える。
~以下ネタバレ含みます~
後編でとりわけ話題を呼んだのが、ラスト10分のどんでん返し。本作の初映像となるPR動画では、金田一が姿なき相手に「これは善意ですか? それとも悪意ですか?」と問う場面が収められていたが、ラストはそこにつながるものだった。
原作の犯人は“犬神家を誰にも渡すまい”とする松子で、その裏では佐兵衛の隠し子・青沼静馬が佐清に成りすまして犬神家に復讐を遂げようとしていた、というからくりがあった。
一方、NHK版では松子が一連の事件の犯人であることは同じだが、静馬のキャラクターをアレンジ。彼が佐清になりすましたのは財産でも復讐でもなく母親の愛を得るためだったというもの。ここまでは「愛」をキーワードにした涙を誘う展開となっていたが、事件が解決したかに思えたとき、金田一が佐清から一通の手紙を受け取ったことから事態は思わぬ方向へ。
ラスト10分は、金田一が刑務所にいる佐清と面会するシーン。佐清は偶然戦場で出会った静馬から、母・松子と妹たち(南果歩・堀内敬子)がかつて静馬とその母に残虐な仕打ちをしたことを聞かされ、その罪悪感から静馬を止められなかったこと、また母・松子を刑務所に送りたくない一心で共犯者となったと話していたが、金田一の推理はそれを根底から覆すものだった。
佐清は「金田一さん、あなた病気です」とだけ答え、金田一の推理が真実なのかは定かではないが、ネット上ではまさかの展開に「斬新なラスト」「後味引きずるラスト凄すぎる」「まんまとだまされた」「小林靖子、すごい」「魂抜かれた」「新解釈」と衝撃が走った。また、静馬と佐清の一人二役を演じた金子大地にも絶賛が相次いだ。
公式サイトのインタビューでは、演出の吉田照幸が小林靖子の脚本について「佐清の解釈がすごく新鮮だった」と指摘。「その結果、ストーリーはこれまでの『犬神家の一族』と同じなのに、別の側面が出てくる。特に、敵味方とか誰が犯人かといった推理小説としての内容以上の、人の心の闇っていうんですか、そういうのがすごく出てくる。だから、これまでの『犬神家の一族』はわりとストーリーが主軸になってるんですけど、今のドラマって人の感情が主軸になっているものが多いから、そういう意味では、そこがまず新しいっていう感じです」と話している。(編集部・石井百合子)