映画『スラムダンク』桜木花道役・木村昴「返せ」の収録に3時間 アフレコ秘話明かす
ロングランヒット中の映画『THE FIRST SLAM DUNK』で桜木花道の声を担当する声優・木村昴が7日、ユナイテッド・シネマ豊洲で行われたトークイベント「COURT SIDE in THEATER」に出席し「僕が声優人生で培ってきたものとは違った」と井上雄彦監督とのアフレコを振り返った。この日は木村のほか、仲村宗悟(宮城リョータ)、笠間淳(三井寿)、神尾晋一郎(流川楓)、三宅健太(赤木剛憲)ら湘北高校バスケ部のメンバーが勢ぞろいした。
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昨年12月3日に公開され、5月6日までに動員966万人、興収138億8,800万円と大ヒットを記録中の本作。木村は「ありがたいことに大きな反響をいただいていて。僕は子供たちと触れあう機会が非常に多いものですから、直接、観たよという声が届いていて。うれしい限りです」と反響を振り返ると「この間も小さい子と写真を撮ってと言われたので、(左手を出して)肩を組んだんですよ。そしたらお母さんから『すごい、左手を添えてますね。本物だ』と言われて。照れくさくなりました」と桜木のシュートの心得にちなんだエピソードを披露し、会場は大盛り上がり。
さらに、本作の制作で印象的だった出来事を「収録が終わった時に、井上(雄彦)監督から『二人三脚で一緒に桜木花道をつくっている気がして、とてもうれしかったです』と言っていただけたこと」と振り返った木村。「とにかく2年という歳月をかけてつくったものですから。1度録り終えたものでも、やっぱりこういうふうにやってみたら、もっと良くなるんじゃないかということも何回もありました」とのことで、「たとえば僕が提案したことも、『それは違う』とはならず、面白いと言ってくれる。そうした制作期間を経て、監督がそういうふうに言ってくれたことが本当に声優冥利(みょうり)に尽きるというか。それが励みになって、今日まで来られたなという気がします」としみじみ。
そんなアフレコにおける井上監督からの指示は“とにかく自然に”ということだったという。「何もかもがこれまでの声優人生で培ってきたものとは違ったんですよ」という木村は、「最初の頃はそれとの戦いでしたね。いわゆるアニメーションの声優として、うまくなりたいと思いながら練習してきたものというのは、わかりやすく、派手で、スクリーンから飛び出してくるような迫力があるものでした。でも今回はとにかくリアリティーを追求してきたものですから、監督の課題は、僕が持っていたものをどれだけ抑えられるか、どれだけリアルに芝居ができるかということだったので、それを頑張っていました」と振り返る。
また、桜木の「返せ」というセリフを収録するのに3時間かけたと明かした木村は「声優としてはどうしても(少し大げさに)『かーえーせー!』という感じでやりたくなるけど、普通の高校生がボールを取るときに、どれだけリアルな息づかいでそれを言えるかということを追求したという感じだった。記憶に残っているひと言ですね」と振り返ると、「だから(映画を観ていて)あのシーンの直前になると、心臓がバクバクになって。ちゃんと言えてるかなと思ってしまうんです」と冗談めかして会場を沸かせた。
なおこの日は、湘北高校バスケ部が激闘を繰り広げる相手チーム、山王工業・河田雅史の声を担当した、かぬか光明も客席で鑑賞。このことは登壇メンバーも知らなかったサプライズだったようで、その姿に木村たちも「本物だ!」「普通に連絡とれるでしょ!」と大盛り上がりで、一同が大爆笑となるひと幕もあった。
本作は、1990年から1996年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載された人気バスケ漫画を、原作者・井上雄彦の監督・脚本で映像化した長編アニメ。湘北高校バスケ部のポイントガード・宮城リョータの物語を軸に、湘北バスケ部と絶対王者・山王工業高校バスケ部との壮絶な試合を描き出す。(取材・文:壬生智裕)
映画『THE FIRST SLAM DUNK』は全国公開中