ディカプリオ&スコセッシ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が傑作だった!実際に起きた大量殺人の裏側描く
第76回カンヌ国際映画祭
現地時間20日、第76回カンヌ国際映画祭でアウト・オブ・コンペティション部門出品作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のワールドプレミアが行われた。数々の名作を生んできたレオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシ監督のタッグ作として今年のカンヌで一二を争う注目度だった同作は、期待を裏切らない傑作となっていた。
【動画】実際に起きた大量殺人の裏側…『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』予告編
1920年代にアメリカ南部オクラホマ州で起きた大量殺人事件を題材にした犯罪ノンフィクション「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」(著者デイヴィッド・グラン)を基にした同作。石油利権によって巨万の富を得ていた先住民オセージ族が次々と殺害される事件が発生し、後にFBIとなる組織がこの陰謀に迫ることになる。石油利権と人種差別の問題が複雑に絡み合ったこの事件は、アメリカ史に残る極悪非道な犯罪の一つとされている。
ディカプリオはもともと事件に迫る捜査官役を務めるとされていたが、最終的に映画がメインに据えたのは、有力者のおじを訪ねて同所へやって来て、ひょんなことからオセージ族の女性モリーと恋に落ち、結婚するアーネストだ。ディカプリオのカリスマ性と演技力の両方が最高のバランスで形になったのが、この役柄。そもそもはモリーのことを純粋に愛していたのだろうが、土地の“キング”と称されるおじに逆らえない小心者、かつ持ち前の強欲さで、利権のために悪びれずモリーの家族すら手に掛けていく男をすさまじい説得力で演じている。
おじ役はロバート・デ・ニーロで、近年ベストの名演を披露。現在79歳にして冴えわたるテンポの良さは圧倒的で、ディカプリオとデ・ニーロというスコセッシ監督お気に入りの「主演俳優」2人の共演シーンは目を釘付けにする。寡黙なモリー役のリリー・グラッドストーンはその瞳だけで心の機微を表現しており、今後始まる映画賞レースでは彼らの名前を何度も聞くことになるだろう。ちなみに、ディカプリオに代わって捜査官役を務めたのはジェシー・プレモンスだ。
スコセッシ監督は『アイリッシュマン』に続き本作を3時間半近い大長編にしたものの、今回、無駄や冗長なシーンは一切ない。複雑な背景の説明、アーネストをメインに据えたおかしくもグロテスクなストーリー、生と死で鮮やかな対比があるオセージ族の姿をパズルのように見事に組み立てたさまはまさに巨匠の技で、意外性のある演出のラストまで観客の注意を引き付けて離さない。劇場の大スクリーンで観るべき新たな傑作が誕生した。(編集部・市川遥)
映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は10月6日から劇場で独占公開。その後、Apple TV+ で全世界配信
第76回カンヌ国際映画祭は現地時間27日まで開催