カンヌ脚本賞『怪物』坂元裕二、受賞時は寝ていた「まだ夢の中にいるよう」と喜び
第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した映画『怪物』(6月2日公開)の是枝裕和監督と脚本家の坂元裕二が29日、羽田空港で記者会見を行い、受賞の喜びを語った。
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『怪物』は、学校でトラブルを抱えているらしい息子に心を痛めるシングルマザー、事なかれ主義の教師陣、そして子供たちと、それぞれの視点による「怪物」探しの果てを描く人間ドラマ。カンヌの公式上映に参加した坂元は、授賞式前に帰国していたため、この日、カンヌから戻った是枝監督から盾を受け取った。
坂元は「実感は正直あまりありません。受賞を初めて聞いたときは寝ていたものですから、第一報を聞いたときは夢でも見ているのかなって。まだ夢の中にいるようです」と恐縮の表情。自ら映画の脚本家としては、まだキャリアが浅いと語り「監督の力を借りながら、プロデューサーの力を借りながらゆっくりと進んでいるところです。今回の受賞も、周りの方のお力によるものだと思います。受賞も全く予想していませんでした」と振り返った。
また、報道陣から受賞の喜びを尋ねられた坂元は「賞は周りの方からおめでとうと言われて初めて嬉しくなります。みんなでもらった作品賞のようなものだと思っているので、たくさんの人からおめでとうと言われたことが嬉しかったです。でも、(審査委員長)のジョン・キャメロン・ミッチェルさんから昨日、『脚本賞おめでとう』とメッセージをいただいたんですが、それは涙が出ました」と述懐。「まだまだ(脚本家としての)頂点ではない」と述べ、「今回に関してもコツコツやってきたことがようやく報われたのかなっていう気持ちです」と語っていた。
是枝監督は「本当に素晴らしい評価をいただきました。無事に坂元さんに脚本賞の盾を渡せてホッとしています」と笑顔。「会場にいてとても幸せな気持ちになりました」と述べた是枝監督は、坂元の脚本の魅力について「最初にプロットをいただいた時から、何が起きているのかわからないという感じでした。わからないのに読むのが止まらない。途中まで読んでも読んでもわからない……。こういう書き方があるんだなって思いました」と述懐。「自分の中にはない書き方だなって。ある種の居心地の悪さが最後まで持続するということがエンターテインメントとして面白かったです。チャレンジしがいのある脚本だなと思いました」と明かしていた。
是枝監督はまた、カンヌのレッドカーペットの際、本作ではなく『菊次郎の夏』(1999)のテーマが会場で流れていたことにも言及。「事前に坂本龍一さんの今回の映画の音楽をお願いしますと言ってあったんです。そしたら久石譲さんの曲で……。大好きな曲だけど、なぜあれがかかったのか。授賞式で『たけし!』と言われたりしたので、それかなって。いい曲だけど、せめて坂本さんの曲にしてほしかった」と笑顔で話していた。(取材・文:名鹿祥史)