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『ザ・フラッシュ』で復活!マイケル・キートン版バットマンはなぜ愛される

キートンのバットマンが帰ってくる! - 写真は映画『バットマン』(1989)より
キートンのバットマンが帰ってくる! - 写真は映画『バットマン』(1989)より - Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 DC映画の最新作『ザ・フラッシュ』(全国公開中)は、「地上最速ヒーロー」のフラッシュが、超速タイムループによって過去を変えようとするドラマが展開。そこで彼が出会うのが、同じDCの人気ヒーロー、バットマンなのだが、大きな話題を集めているのが、あのマイケル・キートンが演じたバットマンの登場である。

マイケル・キートン、30年ぶりにバットマン再演!映画『ザ・フラッシュ』予告編

 これまでバットマンを演じた俳優は『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のロバート・パティンソンから、ベン・アフレッククリスチャン・ベイルジョージ・クルーニーヴァル・キルマー、マイケル・キートンなど。さらに前の時代や、ドラマシリーズのバットマン俳優もいるが、映画のバットマン役では「バットマンといえばキートン」というファンは今も多い。

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 そのキートンが1992年の『バットマン リターンズ』以来、31年ぶりに『ザ・フラッシュ』でバットマン役に復活するとあって、映画ファンには胸アツなのである。

 前述したとおりバットマンは、ハリウッドでもトップの地位にいるスター俳優が演じたケースが多い。しかしキートンは、1989年の『バットマン』当時、そこまで大スターというわけではなかった。妻の代わりに家事を引き受ける『ミスター・マム』(1983)などコメディを得意とする印象が強く、同じティム・バートン監督の前作『ビートルジュース』(1988)の主役に続いて、バットマン/ブルース・ウェイン役に抜擢された。バートン以前の、アイヴァン・ライトマン監督によるプロジェクトでは、バットマン役にビル・マーレイの名が挙がっていたという。

 コミックのファンから「キートンはバットマンのイメージに合わない」という声が上がったうえ、当時は敵となるジョーカーの方に話題が集中した。オスカー俳優で、ハリウッドでも名実ともにトップスターのジャック・ニコルソンが起用されたからだ。アメコミのヒーロー映画、しかもヴィラン(悪役)を引き受けたうえに、白塗りのメイクでユーモアも絶妙に込めた怪演をニコルソンが披露したからだ。そのインパクトと存在感に、キートンはやや押され気味だったものの、こうした俳優同士の関係性が、ブルース・ウェイン/バットマンの内なる鬱屈感をかもし出したともいえる。

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 ブルース・ウェインとバットマンを演じ分けた際の“ギャップ”もキートンは見事だった。顔の上半分が隠れるマスクを着けた際、口を斜めにクッと曲げる動作が印象深く、監督と話し合って、バットマン変身後はあえて声を低くしたことで、キャラクターの二面性を体現。口元の演技や声の変化は、ミステリアスな雰囲気に、セクシーさを加味する効果もあった。この低音のアプローチは、後のベイルらも踏襲。こうしたバットマン役の原点が、キートン版でいくつも発見できる。

 続く『バットマン リターンズ』では、役を自分のものにしたキートンの活躍に、観ているこちらも安心して身を任せられる。この2作目にはペンギンやキャットウーマンが出てくるが、バートン監督らしく「社会の外に押しやられた者、周囲と違う者の悲哀」がさらに強調され、そこにバットマンの2つの人格や孤独への苦悩がシンクロ。こうしたヒーローやヴィランの葛藤は、近年の作品ではあちこちで描かれる定番要素だが、当時はけっこう斬新。それゆえにキートンのバットマンを、多面性のあるヒーローの原点として愛し続ける人が多いのかもしれない。

『ザ・フラッシュ』のキートン版バットマン 日本語声優は山寺宏一(C) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved (C) & TM DC

 キートンは3作目も演じるつもりだったが、バートンが監督を降板後、新たな監督のジョエル・シューマカーとの方向性が合わないと判断し、バットマン役を2本で終えた。

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 その後、キートンは地道に俳優としてのキャリアを重ね、2014年のアカデミー賞作品賞受賞作『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で、自身も同主演男優賞にノミネートされたりするも、バットマンに匹敵する当たり役に出会ったとは言い難い。そこがクルーニーやベイルらとの違いなのだが、だからこそ映画ファンには、マイケル・キートン=バットマン役という不動のイメージが固定されたのも事実。

 『ザ・フラッシュ』で当たり役に久々に復活したキートン。年齢を重ねたとはいえ、演じる喜びが全身にあふれ、そのエネルギーに観ているこちらは幸せな気分になってしまう。『ザ・フラッシュ』にはベン・アフレックのバットマンも登場するので、両者の役へのアプローチの違いも必見だ。(文・斉藤博昭)

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