「どうする家康」5か月ぶり登場の本多正信の目的は?松山ケンイチ、駆け引きの裏側語る
松本潤主演の大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜、NHK総合で夜8時~ほか)でかつて徳川家康(松本潤)に三河を追放された本多正信を好演する松山ケンイチ。30日放送の第29回「伊賀を越えろ!」では思わぬ場面で約5か月ぶりに姿を見せ、嶋田久作演じる伊賀流の長・百地丹波を相手に丁々発止の駆け引きを繰り広げた。家康の家臣たちから“イカサマ野郎”と呼ばれる正信の特異な才覚が感じられる本シーンの裏側を、松山が明かした(※ネタバレあり。第29回の詳細に触れています)。
松山演じる正信は、胡散臭く無責任な進言をする“家臣団の嫌われ者”。第5回「瀬名奪還作戦」で家康が今川氏真(溝端淳平)に捕らわれた妻・瀬名(有村架純)を取り戻す作戦では、服部半蔵(山田孝之)ら伊賀の忍びを雇うなど型破りな発想で家康や家臣団たちを驚かせた。しかしその後、本證寺から年貢を取り立てようとする家康と、住職・空誓(市川右團次)率いる一向宗徒が激突した際、正信は一向宗側に寝返り家康のもとを去った。その第9回から約5か月後の第29回で、正信は伊賀の軍師として家康と再会を果たすことになる。第9回以来、正信はどのように過ごしていたのか? 松山は、その空白の期間に以下のように思いを巡らせる。
「三河を追放されて久しぶりに29回で再登場するんですけれど、正信って、なぜ家康に謀反を起こし、諸国放浪して戻ってこられたのかということについては、史実上、理由がはっきりしていないんですよね。その謎を利用して、自分なりに解釈してはいるんですけれど、基本的には生き延びるっていうことをすごく大事にしている人なんじゃないかなと。各地 に武将がいて争っている戦国時代において、何かあったらすぐ殺されてしまうような、どこに地雷があるのかわからないような状況の中で生き延びていくっていうのは、すごく難しいと思う。武士ならなおさら。だから誰の元にいて、誰に従って生きていくのかというのもすごく大事。きっと、諸国を渡り歩いての情報だったり、 暮らしぶりだったりを見ながら生活をしていたと思うんですよね」
~以下、第29回のネタバレを含みます~
第29回は、織田信長(岡田准一)が明智光秀(酒向芳)に討たれたのちの展開。信長の家臣だった家康もまた光秀に首を狙われることとなり、四方八方に放たれた光秀の追っ手から逃れるため、家康は小平太(杉野遥亮)や平八郎(山田裕貴)、服部半蔵ら忍びたちと伊賀へ。しかし、家康らはあっけなく伊賀者たちに捕らえられてしまう。家康は自身の首と引き換えに半蔵たちの助命を百地に請うも一蹴され、絶体絶命のところに正信が現れる。
正信は家康を殺そうとしているのか、助けようとしているのか、あるいは何か目的があるのか? 牢からその様子をかたずをのんで見守っている半蔵らと同様、視聴者もまた正信、家康の一挙手一投足から目が離せない展開だったが、「おそらく正信は助けようともしていないし、殺そうともしていない」というのが松山の解釈。
「あの場面で意識していたのは、家康に圧をかけることでした。そうすることでより家康の本性が見えてくるんじゃないかという考えです。言ってしまえば、家康がどういう立ち居振る舞いをするかで、死んでしまうかもしれないし、生き延びるかもしれないわけですよね。僕の考えではおそらく正信は助けようともしていないし、殺そうともしていないんですよね。こういう状況の中で“あなたはどういう風にこの危機を抜け出すのか”っていうことを試している。芝居においても、助けようとしている感じではない方がいいなっていう風に思っていました。結果的に家康は生き延びたので彼の行動は“正解”だったわけですが、家康が何も成長していなかったらその場で死ねばいいと思ったはず」
なお、スタッフやキャストがアイデアを出し合って撮影を進めている本作では松山の遊び心あふれるアドリブが満載。それは、第29回でも健在だという。「基本的に僕達俳優がこうやってみたい、ああやってみたいと提案させていただくことにダメっていうことはないんですよね、この現場は。29回も、正信が牢にいる半蔵ら伊賀者たちの頭をはたいていく描写も台本上にはなかったものです。半蔵だけ一度かわすところなんかも、特に山田さんと話し合うこともなく自然にああいうかたちになりました。あとは家康が解放されたのち、正信がわたしはこれでみたいな感じで去ろうとするんだけど、また戻ってきて家臣に入りたそうにする場面も、動きはその場で決まったものです。いろいろなところにアイデアが詰まっていて。“あ、こいつ遊んでるな”っていうところは、大体僕が遊んでいます(笑)」
山田演じる半蔵は、第5回で家康が今川氏真に捕らわれた妻・瀬名を取り戻す作戦で、正信が半蔵ら忍びを雇うことを進言したことをきっかけに家康の下で働くようになった。半蔵と正信、共に家臣団の中で“浮いた”者同士として息の合ったコンビぶりが視聴者に愛されていた。近年では、実写ドラマ「聖☆おにいさん」で山田が製作総指揮、松山が俳優(イエス役)としてコラボしたほか、俳優業以外にも共通点がある。山田は自然農法のほか島の開拓や地球に恩返しする活動を各業界のエキスパートに学びながら行う「原点回帰」を立ち上げ、松山もまた田舎と東京での二拠点生活に取り組んでいる。松山にとって、山田はどんな存在なのか。
「僕にとっては10代の頃から抜群に演技力のある方でしたから、目指すべき人だなっていう風に思っていますし、それは今も変わらないです。ほかにも畑に行ったりとか、山田さんが俳優以外にされている活動にもシンパシーを感じていて。僕も畑をやっていたりするので、いろいろな情報交換もできて勉強させていただいています。そういう俳優さん、本当に好きですね。俳優以外でいろいろなことをやって、そこからまた俳優として1つの魅力が生まれているような気がするので、どんどんそういう方が増えたらうれしいですし、お話も聞きたいです」
前回「本能寺の変」では家康にとって主君を超えた存在だった織田信長が討ち死。妻・瀬名と息子・信康の死後、悲劇続きだった家康のもとに、ひょっこり現れた正信。第29回では正信も認める家康の成長ぶりが描かれ、ある意味では二人の和解のエピソードともなったが、今後、正信は家康にどうかかわっていくのか。再登場を期待して待ちたい。(編集部・石井百合子)