「どうする家康」北川景子、仕事と子育て両立するお市にシンクロ 「勇気をもらえた」
松本潤主演の大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜、NHK総合夜8時~ほか)で織田信長の妹・お市を演じた北川景子が、約5年ぶりの大河ドラマの撮影を終えた心境や、徳川家康役の松本潤、織田信長役の岡田准一との共演について語った。2020年に第一子を出産した北川は、お市に重なる部分もあったといい、「こんなに立派に子供を三人も育てながら自分の仕事もちゃんとして、家のことも考えて、すごいなと。勇気をもらうことが多かった」と振り返っている。
時代劇を存続させたい強い願い
ドラマ・映画『コンフィデンスマンJP』シリーズの人気脚本家・古沢良太が、徳川家康の生涯を等身大に描く本作。北川演じるお市は、当初家康に思いを寄せながらも近江・浅井長政(大貫勇輔)に嫁ぎ、浅井亡きあとは柴田勝家(吉原光夫)と結婚。生涯を織田家存続のためにささげた人物として描かれ、浅井との間に生まれた三人の娘のうち茶々(白鳥玉季)はのちに豊臣秀吉の妻となる。
北川にとって、大河ドラマへの出演は2018年の「西郷どん」以来。5年ぶりの出演となった本作を、こう振り返る。「大河ドラマとしては『西郷どん』が初めてでしたが、その時に大河ドラマってこんなに本当に全国津々浦々の人が見ていて、影響力があるんだというのを実感しました。それから5、6年経って今回このお話をいただいた時に、お市の方はこれまで多くの素晴らしい方々が演じられていて人気があるキャラクターなので、私が演じると発表された時どういう反応になるんだろう、自分なりのお市の方を演じ切ることができるのか、など不安が大きかったんです。だけど、撮影が始まるとすごく楽しくて、いろいろな方から反響をいただいて励みになりましたし、やらせていただいてよかったと思います」
さらに、北川が出演を決めたことにはもう一つの思いがあった。それは、時代劇を存続させたいという強い願いだ。「普段から思っていることなのですが、大河ドラマに限らずスペシャルドラマ、映画など、もっともっと時代劇が増えてほしい、途絶えてほしくないなと。そういう意味でも今回、時代劇にかかわれることそのものが、自分の中ですごくうれしいことでした」
想像を上回る岡田准一の信長像に驚き
織田信長役の岡田准一とは本作が初共演となった北川は「岡田さん演じる信長を頭の中で想像しながら、常に意識しながら演じていた」と言い、岡田に圧倒されっぱなしだったと話す。
「撮っていたのは去年の5月とか6月、ちょうど1年前ぐらいだったんですけど、初めてお会いした時に、岡田さんが演じた信長が台本で読んでいるよりも威厳があって怖くて。こんなに威圧感のあるキャラクターに作ってこられたんだと、とても驚きました。それでわたしもこういう方の妹を演じるのならもっと強そうに見えなければと思って、想定していたよりも強い、男勝りな感じを意識しました。岡田さんが作られたお芝居が、わたし自身にもたくさん骨、肉となって付け加えられている感じで。なぎなたのシーンでは構え方や、どういう立ち方をしたら武士っぽく見えるのかといったことも教えてくださいました。アクションの先生もいらっしゃるんですけれど、岡田さんご自身がわたしたちにアドバイスをしてくださったのが印象的で。しかも、それがすごく腑に落ちるアドバイスばかりで。アクションもお芝居も究めていらっしゃる、すごい先輩だなと」
一方で、お市の信長に対する感情は複雑だ。謀反を起こした夫・浅井を信長の手によって殺され、若くして三人の子の父を失ってしまう。しかし、第28回「本能寺の変」では、知られざる兄の孤独を家康に打ち明ける場面があった。信長のために妻子を亡くした家康に「兄を恨んでおいででしょう」「私は恨んでおります」と家康の心中を察しながら、「あなた様は兄のたった一人の友ですもの」と続け、信長を討つ決心をした家康を揺さぶる。北川は本シーンをこう振り返る。
「市は兄を恨んでいるとは言っているけれど、きっと心底恨んではいないんですよね。家康に“誰からも愛されず、お山のてっぺんでひとりぼっち”“あれほど哀れな人はおりませぬ”と言っていますが、“あなたが友達をやめたら兄は本当にひとりぼっちになるけど、それでもいいの?”と確認したかったんじゃないのかなと。“だから討たないでね”っていうことなんですよね。暴走するところとか兄の性格は知っているけど、そこも含めて許してあげてほしい、これまでの恩義を忘れていないよね? と」
自分らしくあるお市に勇気をもらった
信長の亡きあとは、すぐさま後継者を巡る問題が勃発。織田家家臣たちによる「清須会議」によって、信長の孫・秀信(三法師)が成人するまでの間、柴田勝家、丹羽長秀(福澤朗)、羽柴秀吉、池田恒興(徳重聡)が支える取り決めが行われるが、お市は秀吉に権力を渡さないために勝家と手を結び二度目の結婚。8月6日放送・第30回「新たなる覇者」では秀吉と勝家が「賤ヶ岳の戦い」で争うことになる。この際、家康が秀吉と勝家の板挟みにあい、勝家とお市は家康に援軍を求めるが、家康は苦渋の決断を下す。この時のお市の心中はどんなものだったのか。
「台本上では家康を信じているというふうにはなっていましたが、わたしは、本当に助けに来るとは思っていなかった気がします。来てくれたらもちろん嬉しいけれど、これだけ戦国を生きて、結婚も二回して、いろんな経験をしてきたお市なので、もし助けたいと思っていても身動きがとれなかったり事情があるんじゃないのかとか、相手の立場もわかっていたんじゃないかなと。なので来てくれなかったとき最後にどういう選択をするのか、どう死ぬのかということも同時進行で考えていたのではないでしょうか。家康に腹を立てる娘の茶々の言い分もよくわかるけど、家康だったら来てくれるかもしれないとほのかな期待があったぐらいだったと思います」
第30回ではいよいよ秀吉の軍に追い詰められ、勝家は娘たちと共にお市を逃がそうとするが、お市はそれを拒み、勝家と最期を共にする。最後まで織田家としての誇りを持ち、毅然とした生きざまを貫いたお市。そんなお市に、北川自身も影響を受けたという。
「お市としては家の存続のために頭を使うこととか、立ち居振る舞い、結婚も含め、そういう戦いが彼女の仕事だったと思うんですけれど、働きながら子供を育てるところが自分とも重なるところがあって。勇気をもらうことが多くて、自分も子育てと仕事の両立ができそうだなと思えました。お市はこの時代にしては今っぽいというか、ちゃんと自分の考えや意志、世界観を持っている人。自分の意志で仕事も子育てもやっているんだろうなと感じられるところが共感していただけるポイントだったんじゃないかなと思っています」
性格的にもお市と同様「どちらかというと強い方」だと自覚する北川。「お市を演じながら、わたしも自分らしくあることが大事だなと。言いたいこと、やりたいことを我慢したりしないで、自分にできることを精一杯やろうと撮影するたびに勇気をもらえました。もともと私自身も弱くないので、いい感じでシンクロするというか、ますます強くなってしまっている感じですね(笑)」とお市にシンパシーを感じている様子だった。(編集部・石井百合子)