小林幸子、生涯“ラスボス”宣言 芸能生活60年「小林幸子というジャンルで生きていく」
来年芸能生活60年を迎える歌手の小林幸子。歌い手としてはもちろん、ニコニコ動画、YouTubeをはじめとするSNS発信も積極的に行い、老若男女から多くの支持を得ている。そんな小林がディズニー・スタジオの新作映画『ホーンテッドマンション』(9月1日全国公開)で、アトラクションでも人気のキャラクター、マダム・レオタの日本語吹替版声優に挑んだ。物語の大きなカギを握るマダム・レオタ。近年彼女の愛称となっている“ラスボス”を思わせるようなキャラクターを演じた小林が、声で表現することの魅力や、“ラスボス”と呼ばれることへの思いを語った。
■アトラクションでも有名なキャラクター「まさか自分がやるなんて」
999人の亡霊がはびこる呪われた洋館を舞台にした人気ディズニーアトラクション「ホーンテッドマンション」を実写化した本作。小林が声を当てるマダム・レオタ(ジェイミー・リー・カーティス)は、物語のカギを握る水晶玉の女性だ。
ディズニーランドが大好きで、中でも「ホーンテッドマンション」は特にお気に入りだという小林。「ディズニーランドに行けば必ず乗るアトラクション。そのなかでも、最初に目につくのが水晶玉の中にいるマダム・レオタ。そんな有名な人をまさか自分がやるなんて」とオファーを受けた時は驚きでいっぱいだった。
同時に「とても光栄なこと」と喜びを表現するも、緊張感もあったという。「何と言っても、物語の冒頭のナレーションをマダム・レオタが話すことにドキドキしました。これまでも声のお芝居の経験はありましたが、世界観を表現する入りの部分なので、どんなトーンがいいのか、かなり練習しました」
小林の言葉通り、「ようこそ、愚かな人間たち」というマダム・レオタの声によって、一気に観客を『ホーンテッドマンション』の世界観に誘う。かなり重要な役割だ。「マダム・レオタの個性をつぶしてはいけないけれど、わたしの個性もある……。そのバランスを考えるのは、すごく難しかったです」とアフレコを振り返った。
■マダム・レオタの魅力は「ブレない」強さ
さまざまな発声方法で試行錯誤しながら役のイメージを決めていく作業は、歌手・小林幸子にとっても大きな刺激だった。「例えば、和食の職人さんは、さまざまな包丁を使い、いろいろな調理で魅力的な料理を出しますよね。歌い手も、さまざまな声を模索することで、テクニックが磨かれる。勉強になりました」
レオタを演じるうえで大切にしたのが「ブレない」こと。小林は「マダム・レオタは芯が通っています。この特性は大切にしました。私もたまにはブレますが(笑)、基本的にはブレないことを大切にしているので、演じていて気持ちが良かった。上から高圧的に言葉を発するのですが、しっかりと相手への受け皿も持っている。格好いい女性です」と共感できるキャラクターだったことを明かす。
さらに、作品のメッセージ性について「ブレないというのは自分を信じているから。この作品をご覧になった子供たちも、見た目の格好良さはもちろんですが、見えない心の部分でも素敵なものはあるんだ……ということが伝わってくれたら嬉しいですね」と思いを馳せた。
■ラスボス=小林幸子「どんどん進化している(笑)」
「デビューしたのが、東京オリンピックがあった昭和39年なんです」と語った小林は、来年芸能生活60周年を迎える。「当時の日本といまの日本では、人も文化も全然違う」と時代の変化に驚いているというが、小林自身は、さまざまなことにチャレンジし、子供から大人まで多くの支持を得ている。
小林は「ありがたいことです」とはにかむと、「ファンクラブにも3代で入ってくださる方がいるんです。80代以上の方には『あんたがデビューした子供のころから知っているよ』と声を掛けていただきます。YouTubeを始めてからは、幼稚園ぐらいの子供からも『さっちゃん』と呼んでもらえることもあって。『さっちゃん、歌手なんだよ。知っている?』と聞くと『知らない』って。でもそれでいいんです」と笑いながら語る。
特に、若い世代からは「ラスボス」の愛称で親しまれている。「ニコニコ動画に出演した時、ユーザーさんから『ラスボス』って書き込みがありました。MCから『幸子さん、すみません。ラスボスって呼んでいいですか』と言われたのですが、『いいですよ、どうぞ』と答えたら、『ラスボス降臨』のコメントで画面がいっぱいになって(笑)」
番組が終わった後、小林はマネージャーに「ラスボスってなに?」と聞いたという。そこで「ゲームの最後に出てくる一番強い敵」の総称と知りました。「もともと私の紅白歌合戦の衣装がそのラスボスに似ていることから、ネット世界では、20年くらい前から言われていたそうです」。一見するとマイナスなイメージのワードに感じられるが、「最初はえ!? と思いましたが、みんながニックネームとして面白がってくれているなら、全然それでいいと思います」と笑顔を見せる。
それでも「一過性のものかなと思っていたら、ずっと続いて。しかもどんどん進化している(笑)。誰かがラスボスって検索したら、小林幸子って出てきたって。すごく痛快ですよね」と驚き顔。「生涯ラスボスで?」と問うと、「みんなが楽しんでくれるならばそれでいいです。いろいろな肩書はありますが、小林幸子というジャンルで生きたいと思っています」と語っていた。
「みんなが楽しければそれでいい」と語った小林。奇しくも小林は、ディズニーの創設者であるウォルト・ディズニー氏と誕生日が一緒だという。「子供の頃、私の自慢でした。自分の勝手な思い込みですが、ディズニーも多くの人に夢を与え楽しんでもらおうと作品を作っています。本当に雪の粒ぐらいですが、わたしもそんな使命を感じて、お仕事をしているところがあるので」
泣けて笑えて感動して……ディズニーの醍醐味がいっぱいに詰まった映画『ホーンテッドマンション』。そんな作品に参加した小林は「たくさんの大切なことが作品から感じられると思います」と語っていた。(取材・文・撮影:磯部正和)