井浦新、関東大震災から100年の日に『福田村事件』公開「本当に意味のあること」
俳優の井浦新が1日、テアトル新宿で行われた映画『福田村事件』初日舞台あいさつに登壇。関東大震災からちょうど100年という日に、関東大震災直後に起きた虐殺事件を描いた作品の公開を迎え「今日という日に映画が上映できたこと、ちゃんと旅立ったことは本当に意味のあること」と胸の内を明かした。舞台あいさつには、メガホンを取った森達也監督をはじめ、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、向里祐香、木竜麻生、杉田雷麟、カトウシンスケ、水道橋博士、豊原功補が参加した。
関東大震災直後に千葉県福田村で起きた実際の虐殺事件を、数々のドキュメンタリー映画を手掛けてきた森監督が映画化。地震後、さまざまなデマが飛び交う混乱のなか、9人の行商団員が殺害された、悲劇に至る過程を描く。
森監督は、オウム真理教のドキュメンタリー映画を撮っていたときから「集団のメカニズム」というものがテーマだったと語ると「特にこの事件は、朝鮮人差別、被差別部落問題、言ってみれば日本の近代のゆがみが二つ重なっている事件。物語としても重層的にできるし、単なる加害側と被害側じゃなく、いろいろな視点が作れる」と映画の題材としてふさわしいと感じていたという。
一方で、難しい問題が多く描かれる作品だけに、企画がスタートした段階では「この映画に誰が出てくれるんだろう」と懐疑的だったという。しかし、井浦は「2019年10月17日に、僕は今日のこの場のテアトル新宿で森監督とプロデューサーにお会いして、森監督が福田村事件を映画化するので、参加してほしいとオファーをいただいたその場で『どんなことがあっても必ず参加したいです』と伝えました」と迷いがなかったという。
さらに井浦は「これまで森監督のドキュメンタリー作品を観てきましたが、劇映画ではどのように現場に立ち、どういう映画作りをするのかということに興味を持ちました。それを最前線で見ることができるのなら、どんなことがあっても参加したいと思った」と当時を振り返る。
実際の森監督の現場を体験した井浦は「監督はとても優しい。とにかく僕ら俳優が現場でやることを否定せず受け止めてくださる。台本はあるのですが、ワンシーンごとにどこかライブのような感じでした」と堪能できたことを明かし「皆さんいかがでしたか?」と客席に呼びかけると、場内からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。(磯部正和)