『美しい彼』の影響は?萩原利久の人気原作との向き合い方
田村由美原作、菅田将暉主演によるフジテレビ系月9ドラマを映画化した『ミステリと言う勿れ』(9月15日公開)に出演している萩原利久。近年、小説や漫画を実写化する作品への出演が相次ぐ萩原が、人気原作ファンや観客、視聴者の反応との向き合い方を振り返ると共に、ブレイクのきっかけとなったドラマ・映画『美しい彼』が自身にもたらした影響について語った。
2008年から活動している萩原がブレイクするきっかけとなったのが、本屋大賞を受賞した「流浪の月」「汝、星のごとく」の凪良ゆうによるBL小説シリーズを実写ドラマ化した「美しい彼」シリーズ。八木勇征(FANTASTICS)と共にダブル主演を務めた本シリーズは2021年と今年に2シーズンにわたって放送され、2年連続でギャラクシー賞マイベストTV賞グランプリを受賞。今年4月に公開された『劇場版 美しい彼~eternal~』もロングランヒットを記録した。同年2月には1st写真集「R」が刊行され、4月期には主演ドラマ「月読くんの禁断お夜食」、7月期には月9ドラマ「真夏のシンデレラ」が放送。Instagramのフォロワー数が30万人を突破するなど飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
「美しい彼」では、クラスカーストの底辺にいた高校時代から、クラスメイトの美しき人気者・清居奏を崇め続ける内気な平良一成を好演し、当たり役となった萩原。現在に至るまでの余波を、以下のように振り返る。
「僕の作品を観てくださる方の反応がすごく増えたことを感じますし、同時に、観てくれる人がいるってこんなにすごいことなんだなと実感しています。SNSなどを通じて反応を発信してくださる方が多くて、どんな風に届いたというのがダイレクトに感じられて。『美しい彼』では、丁寧にやればやるほどちゃんとその部分を観てくれる人がいるんだなっていうのを実感できたので、より丁寧に作品を作っていきたいと思えました。どんなに頑張って作っても観てもらえなかったらすごくもったいないですし、本当にありがたいことで特別なことなんだなという思いが強くなりました」
「美しい彼」ののち、ドラマ「月読くんの禁断お夜食」(原作・アサダニッキ)や青春映画『おとななじみ』(原作・中原アヤ)、現在公開中のスペクタクル映画『キングダム 運命の炎』(原作・原泰久)など人気漫画の実写化作品への出演が続いているが、「演じるマインドとしては、特に原作のファンの方に受け入れてもらえるかどうかということを意識しているかもしれません」と萩原。
原作モノでは、キャスティング発表に始まりビジュアル、演技面などに賛否の声が上がるのが常だが、そういった声とどのように向きあっているのか。
「観てくださる方の意見は結構そのまま吸収する方かもしれません。賛否、どちらも正しいと思います。僕自身、小説や漫画が実写化される際にはいろいろなことを感じます。もちろん、観てくださる方の期待に100%応えたいと思って撮影に臨んでいますが、原作がある以上“もっとこういうものが観たかった”といった意見が出るのは至極当然で。“ああそうだな”と納得することもありますし、良かったと言っていただけたときにはちゃんと伝わったんだと自信につながることもありますが、何よりも、観ていただけること自体がすごいことだと思っています」
映画『ミステリと言う勿れ』は、累計発行部数1,800万部を突破する人気漫画の通称“広島編”に基づくストーリー。「僕は常々思ってるんですが……」から始まる膨大な知識と独自の価値観による持論で登場人物の悩みや難事件をおしゃべりだけで解いていく大学生・久能整(くのう・ととのう)が、広島でいわく付きの名家・狩集(かりあつまり)家の遺産相続事件に巻き込まれていく。
撮影現場では整や狩集家の面々を演じるキャストと「いまだかつてないほどのリハーサルを重ねた」という。
「こういうサスペンスとかミステリーものって見せ方が大事。例えば、僕の仕草や目線、セリフのニュアンスが変わるだけでそれが意味深に映ったりして誤解を招き、観客の方を混乱させてしまうことだってあると思うんです。情報量が多い作品なので、演出として意図しない情報が伝わることで、一気に理解が追いつかなくなってしまうのではないか。それは避けたいので、共演者の方々と意見をすり合わせて理解し、どう見せる、どう表現するという共通意識を持つようにしていました」
なお、整の持論を展開する役柄にちなんで萩原の「俳優に必要な資質に対する持論」を問うと、こんな答えが返ってきた。
「人の話を聞くこと、でしょうか。これは自分に言い聞かせていることでもあります。このお仕事を始めた時には特にそうだったんですけど、僕はどうしてもセリフに引っ張られてしまって、喋ることばかり考えちゃうんです。ああいうふうに言おうとか、こういうふうに言おうとか。聞く=相手のお芝居を受け止めることができていなかったのかなあと。考えてみれば当たり前のことなんですけど、日常会話でも人の話を聞いて思うことがあって、それに対して反応するわけで。特にきっかけがあったわけではないのですが、ふとした時に“聞こう!”と。そうしたら前よりお芝居がやりやすくなった気がします」
同作で萩原が演じるのは、狩集家のいとこ4人の遺産相続候補者の1人である波々壁新音(ははかべ・ねお)。社会人でヤンチャな見た目だが根は真面目という役どころだ。撮影現場では毎シーン、菅田を中心に意見のすり合わせが行われたと言い、新音の原作のある描写を取り入れたという萩原のアドリブも見どころだ。(編集部・石井百合子)