吉沢亮x永瀬正敏x小栗旬x阿部進之介が主演 土田世紀「かぞく」映画化、『るろ剣』衣装デザイナーが監督デビュー
俳優の吉沢亮、永瀬正敏、小栗旬、阿部進之介の4人を主演に迎え、漫画家・土田世紀の生きざまを色濃く描いた未完の絶筆作品を実写化した映画『かぞく』が、11月3日に公開されることが決定した。映画『るろうに剣心』シリーズなどの衣装デザイナーで知られる澤田石和寛が、澤寛(Kan Sawa)名義で映画監督デビューを果たす。
原作は、2012年に亡くなった土田が残した「かぞく」のなかで描かれた5つのエピソード。澤監督の生い立ちや経験を織り交ぜ、現代家族を包括的に描く映画へと昇華させた。旧来の家族構造から「核家族」を基準に、「婚姻関係」「親子関係」「血縁関係」「法や倫理に背いた関係」「父とは」「母とは」「子とは」などのテーマを各エピソードに振り分け、それぞれの家族の再生を試みながら「家族とは何か」を問いかける。
父が失踪したマコトは、母と二人、住み慣れた街を離れて新しい街へと向かう。内縁の妻と密やかに生活を送るケンジ、その妻ハルカはある秘密を抱えていた。妻を亡くし、父1人で2人の子供を育てるタケオは、子供たちと海へドライブに出かけた。久しぶりに実家へ帰ってきたユウイチは、自分の名を呼ぶ女性に森の中へといざなわれていく。
音楽は舞台音楽家の棚川寛子が、サウンドデザインはアピチャッポン・ウィーラセタクン監督作『世紀の光』『ブンミおじさんの森』『メモリア』などに参加してきた清水宏一が手がける。撮影は山本英夫が担当し、山本が撮影したフィルム映像を、澤監督が自らカラグレーディングの指揮をとり、色彩を確立した。日本を代表する俳優4名が集結した本作は、すでに国際映画祭への招待も決定している。澤監督のコメント全文は以下の通り。(編集部・倉本拓弥)
澤寛監督コメント全文
ずっと現代における「家族とは何か」と考えてきた。私にとって家族とは他人も同然で、家族に何かを求める意思を持つことはなかった。家族という組織は親子、夫婦それぞれが、その時代を生き抜くために互いの“扱い”を変えながら、愛も遺恨も引き連れて出産と育成という本能をもとに、社会環境の変化に合わせてその時代に必要な関係を維持しながら、役割を変えてきたのだ。家族とは親が子供を育てるという関係以上のものではないように感じていた撮影当時の私は、劇内に登場する家族関係を崩壊させようと思っていた。離れていく家族から、「家族」を感じることができると思っていたのだ。
2019年に撮影をしたのち、一年後の7月に残りを撮影した。全ての撮影を終え、2020年の9月から自宅アトリエで編集作業に入り、シナリオと撮影済み素材を見ながら、この映画の結末を改めて考えていた。親は子供に何ができるのだろうか。子供は親に何ができるのだろうか。家族とは何か。本格的なポストプロダクションに入る前、私は20年ぶりに実家を訪れ独り身の母と会話をし、これまで感じてきた、家族を好きと思えなかった理由を述べた。そして、私の父親、彼女の元夫が数年前に亡くなっていたことを伝えた。元夫の人生の結末を聞いた母の口から、私の幼少期に起きた家族の事情を伝えられた。それは子供からの目線であったからなのかもしれない。しかし、その時の私は、家族というものは、生きていようが死んでいようが関係がなく、自身が自身であるために必要な存在なのだと理解した。
この映画の呼吸を聴く。私の目に見える世界は少しずつ変わっていく。私は、この不思議な関係を描くことで、家族の未来を描き出したのだ。