『マーベルズ』MCUデビューのパク・ソジュンとは?「梨泰院クラス」からハリウッド進出までの軌跡
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『マーベルズ』(全国公開中)で、物語のカギを握るヤン王子を演じる韓国の人気俳優パク・ソジュン。コロナ禍で主演ドラマ「梨泰院クラス」(2020)が大ヒットしたことで、日本における韓流ブームを巻き起こし、彼自身の知名度も急上昇した。ドラマや映画だけでなく、バラエティー番組やCMでも活躍するパク・ソジュンの俳優としてのこれまでを振り返る。(文・前田かおり)
パク・ソジュンは1988年12月16日、韓国・ソウル生まれ。子供の頃は野球選手に憧れていたが、高校生から俳優を夢見て演技スクールに通い、ソウル芸術大学演劇科に進学し、在学中に兵役へ。2012年、ドラマ「ドリーム・ハイ2」で本格的に俳優デビューを果たす。「金よ出て来い☆コンコン」(2013)では、ワガママだが憎めない末っ子御曹司を演じて注目され、「魔女の恋愛」(2014)では、14歳年上のヒロインに一途になる年下男子役で人気を獲得。以降「キルミー・ヒールミー」(2015)、日本でもリメイクされた「彼女はキレイだった」(2015)と次々にラブコメに出演してヒットを飛ばし、“ラブコメの神”と称されるようになった。
初めて挑んだ時代劇「花郎〈ファラン〉」(2016~2017)では、新羅国王の親衛隊として活躍した青年たちの成長物語を好演しただけでなく、迫力ある殺陣シーンで時代劇ファンも唸らせた。さらに、「サム、マイウェイ ~恋の一発逆転!」(2017)ではプロの格闘家を目指す役どころで、鍛え上げた肉体美も披露。続く「キム秘書はいったい、なぜ?」(2018)では超ナルシストな御曹司をコミカルに演じ切った。
そして2020年、「梨泰院クラス」で主人公パク・セロイ役を射止めた。愛する父親を死に追いやった大手外食チェーンの会長親子への復讐を誓い、飲食業界でトップを目指す青年と仲間たちの青春模様を描いた本作。人気ウェブ漫画のドラマ化だったが、イガグリ頭にした外見はもちろん、無愛想だが、愚直なまでに真っすぐで正論を吐く姿が原作と見事にシンクロした。Netflixによって世界配信されたことで、世界的に一大ブームを巻き起こすことになった。
ドラマでヒット作を連発していることから、“視聴率の帝王”と呼ばれるパク・ソジュンだが、映画でも確かな演技力で観客を魅了している。2015年の警察を舞台にしたクライムサスペンス『悪のクロニクル』では、「梨泰院クラス」で主人公の父を演じた名優ソン・ヒョンジュの部下を演じた。新米刑事役だが、物語の重要な役を担った彼は青龍映画賞の人気スター賞を受賞している。
続く『ビューティー・インサイド』(2015)は、朝起きる度に外見が男、女、老人、子供、外国人と変わってしまう主人公のラブストーリー。韓国映画、ドラマでお馴染みの豪華キャスト陣の中で、ヒロインと出会ったときのイケメンな主人公という一番おいしい役を務めた。『ミッドナイト・ランナー』(2017)では、『椿の花咲く頃』『カーテンコール』などのカン・ハヌルとの共演で、警察学校の学生が事件捜査で大活躍する犯罪アクションコメディーに挑み、大鐘賞・新人男優賞などを受賞。同作を撮ったキム・ジュファン監督と再びタッグを組んだオカルトアクション『ディヴァイン・フューリー/死者』(2019)では悪魔祓いに挑む若き格闘家役で大暴れ。韓国の国民的俳優アン・ソンギ演じるベテラン神父との師弟愛も見どころだ。
ラブコメからシリアス、そしてアクションまで、どんな役柄でも自然体で演じてしまうパク・ソジュン。その親しみやすさから“国民の男友達(ナムサチン)”とも呼ばれており、そんな魅力がバラエティー番組でも炸裂。映画『ミナリ』(2020)のオスカー女優ユン・ヨジョンが営む韓国食堂を舞台にしたバラエティー番組「ユン食堂2」、同シリーズの「ユンステイ」に食堂のスタッフとして登場し、茶目っ気たっぷりな姿が楽しめると評判だ。
また、交友関係が広いことでも知られ、ドラマ「花郎」で共演したパク・ヒョンシク、BTSのV、そして『パラサイト 半地下の家族』のチェ・ウシク、ラッパーのPeakboyは“ウガウガファミリー”と呼ばれている。SNSには、共に過ごしている楽し気な写真が多々UPされており、そんなところも好感度を押し上げる一因になっている。
2023年も映画・ドラマが目白押しだった。7月に映画『ドリーム~狙え、人生逆転ゴール!~』がNetflixで配信。選手生命の危機に陥ったサッカー選手が、サッカー未経験のホームレスたちと作ったチームで世界大会を目指すというハートウォーミングなコメディーで、『ベイビー・ブローカー』のIUことイ・ジウンと共演した。
さらに、韓国では8月公開された『コンクリート・ユートピア』(日本公開は2024年1月5日)も大きな話題だ。世界を襲った大災害によってソウルが一面廃墟の海に。唯一残ったマンションを舞台に壮絶なサバイバルが繰り広げられる災害スリラーで、国際的スターのイ・ビョンホンや、「愛の不時着」のキム・ソニョンらと共演。平凡で妻思いの気弱な公務員という役を演じており、今までにない役どころと言える。同作は公開7日で観客200万人を突破し、第96回アカデミー賞国際映画長編映画賞の韓国代表作品にも選ばれており、大きな期待がかかる。
そんなパク・ソジュンが最新作『マーベルズ』で演じるヤンは、歌と踊りで会話をする惑星・アラドナの王子で、チャーミングでカリスマ性があり国民に愛されている。主人公キャプテン・マーベルの過去を知り、固い絆で結ばれていて物語の重要なカギを握る。監督のニア・ダコスタは、もともと韓国ドラマやK- POPなどに関心が高かったそうで、パク・ソジュンを起用したのは、「梨泰院クラス」を観たことがきっかけになったとインタビューで明かしている。ハリウッド進出を果たしたパク・ソジュンの『マーベルズ』での雄姿を楽しみにしたい。