デビュー10周年の藤原季節、上京後に暮らした多摩に思い吐露 「今でも休みになると来ます」
俳優の藤原季節が19日、多摩市のパルテノン多摩で開催中の「第33回映画祭TAMA CINEMA FORUM」の特集上映「デビュー10周年記念 藤原季節特集 in TAMA」のトークイベントに登壇。主演作『東京ランドマーク』の上映後、上京後に住んだことがあるという多摩へのあふれる思いを語った。この日は義山真司、柾賢志、佐藤考哲、浅沼ファティ、石原滉也、毎熊克哉、林知亜季監督も来場した。
2013年にワークショップのオーディションで応募者総数500人の中から選出され、芸能事務所オフィス作所属となった藤原。本映画祭では彼のデビュー10周年を記念した特集上映が組まれ、グザヴィエ・ドラン監督の映画化でも話題を呼んだ戯曲を演劇企画ユニット「第7世代実験室」が映像化した『たかが世界の終わり』(2021)、そして映像制作集団「Engawa Films Project」(通称:エンガワ)による初長編映画『東京ランドマーク』(2023)の2本が上映された。
『東京ランドマーク』上映後、大勢の拍手の中、ステージに上がった藤原は「全編、多摩で撮った映画なので。TAMA映画祭で上映できる日が来て夢のようです」と笑顔。バイト先の先輩を演じた石原によると撮影は5年前とのことで、そこから時間を経て満を持しての多摩での凱旋上映に「本当に藤原季節、すごいなと思いました」と感心することしきりだった。
会場には鈴木セイナ演じるヒロイン、道野桜子の衣装と同じ白のセーターと赤いチェックのマフラーを身に着けたファンの姿も。その姿を見た藤原は「この映画で聖地巡礼していただきたかったので、完コピしていただいて最高です!」と歓喜していた。
そもそもなぜ多摩をロケ地に選んだのか。藤原からの質問に「(藤原)季節の思い入れのある場所で撮っていきたいなというところもあって、強い思い出のある場所ということで、ロケ地を探すということはなかったですね」と明かした林監督。藤原の出身地は北海道だが、多摩は上京後に住んでいたこともある思い出の地だという。藤原は「多摩に住んでいたんですよ。で、ここにいる(義山)真司と知り合って。(会場の最寄り駅である)多摩センターでよく遊んでましたね」と多摩で暮らしていた日々を回顧。別の地に引っ越した今でも“多摩愛”は健在とのことで、「今でも休みになると多摩センターに来ますからね。パルテノン大通りに降りたって、空を見上げる瞬間に日頃の何かがとれる」としみじみ。
義山が「お風呂も気持ちいいんですよ」と地元の温泉施設について誘い水を向けると、藤原も「そう、天然温泉なんでね。そこに(石原)滉也も誘って。長く浸かって、鍋を食べて、ラーメン食べて、カラオケも行っちゃって……」と語り、すっかりリラックスモード。そんな言葉の端々からも、多摩が藤原にとってかけがえのない場所であることがうかがえた。
そして、あらためて「この映画を観ながら、タイトルについて考えていたんですよ」と語り出す藤原。「稔とタケ(岳広)と桜子が歩道橋で叫ぶシーンを見て、この人たちにとっての『東京ランドマーク』ってここなのかなと。3人でいることが『東京ランドマーク』なのかなと思って。その時に、自分にとっての『東京ランドマーク』ってここじゃん、と思った」とかみ締めるように語り、「この1年で応援してくださる方との距離が縮まって、ひとりひとりの顔と名前も覚えられるようになって。少しずつ東京にも帰ってこられる場所ができたんだなと思って。だったら『東京ランドマーク』ってここじゃん、と思いました」と多摩へのあふれる思いを吐露。「林さんがなんでこのタイトルをつけたのか聞いたことないですが、そういう風に感じました」と付け加えると、林監督はその理由を明かすことなく「合ってるよね。タイトルだけでこうやってみんなで話ができるから良かった」と笑っていた。
本作には出演ではなく、スタッフとして参加している毎熊は「今後は関西で藤原季節特集が行われるので、そこでの上映が決まっています。この映画は不思議なはじまりをしていて。9月に新宿で藤原季節特集をやったのをきっかけに世に出て。今日の多摩の映画祭でもたくさんの方に観ていただくことができました。先のことは決まっていないですが、でもやはり東京で上映できるようにしたいと思っています」と今後の展望に期待を込めていた。(取材・文:壬生智裕)