市川染五郎、アリ・アスター監督に『東海道四谷怪談』をおススメ
来日中のアリ・アスター監督が18日、都内で行われた映画『ボーはおそれている』(2024年2月16日公開)のジャパンプレミアに八代目・市川染五郎と登壇。歌舞伎に大きな影響を受けているというアスター監督に、染五郎がオススメの歌舞伎として鶴屋南北の『東海道四谷怪談』を紹介する場面があった。
【画像】美しすぎる市川染五郎!アリ・アスター監督と歌舞伎トーク
本作は『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』などのアスター監督がスタジオA24と3度目のタッグを組んだスリラー。些細なことですぐに不安を覚える怖がりなボー(ホアキン・フェニックス)がさっきまで電話で話していた母の怪死を知る。ボーは母の元へ駆けつけようとするが、アパートの玄関を出たとたん、“いつもの日常”ではない奇妙な世界が広がっていることに気付く。帰省の最中、ボーが次々に奇妙なことに巻き込まれていくというストーリー。
アスター監督は『ミッドサマー』の宣伝で来日した際、最終日に鑑賞した歌舞伎に感銘を受けたとのこと。「歌舞伎を東京で観たんです。観たことがなかったので鑑賞しに行ったら、その美しさに圧倒されて。そのまま、まっすぐホテルに戻って、実はこの映画のあるシーンを書き換えたりしたんです。歌舞伎はそれくらいわたしに大きな影響を与えました」と話す。
染五郎は「純粋に歌舞伎に関わる者として嬉しく思います」と嬉しそうな表情。「歌舞伎は日本の誇るエンターテインメントだと思っているので、海外の方やアスター監督のような優れたクリエイターの方に影響を与えているのはすごく嬉しいです。歌舞伎とアスター監督の共通するところはグロテスクな表現すら美しく見せてしまうところ。そこがアスター監督の作品の魅力だなって思います」と話し、アスター監督へのオススメの歌舞伎として、鶴屋南北の『東海道四谷怪談』を紹介。「鶴屋南北の作品も監督と同じ特徴があるんです。機会があればぜひアスター監督に観ていただきたいです」と話す。
また、染五郎は主演のホアキンのファンであることも明かし、「主演のホアキン・フェニックスさんのお芝居の迫力、すごさに圧倒されました。ホアキンさんとその場でディスカッションされて作っているのか、どういう距離感や空気感で作られたのか」と監督に逆質問。アスター監督は「彼は役者として全身全霊を役に注ぎ込むタイプ。かついろんなことにチャレンジしたがる。私がこうしなさいと言ったことに対して彼なりに色々試してくるんです。私は自分のやり方を守ろうとするのではなく、彼に好きにやってもらったことを取り入れていくことにしたのですが、その作業がすごく楽しかったです」とホアキンとの撮影を振り返った。
最後に「アスター監督が染五郎に役を渡すならどんな役を演じてもらいたいか」という質問が飛ぶと、アスター監督は「歌舞伎一家の映画を作ってぜひ染五郎さんに出ていただきたい。恐ろしい秘密を抱えている歌舞伎一家で、善人だと思われつつ、実は悪人という役はどうでしょうか」とコメント。これに染五郎は照れ笑いを浮かべつつ、「実際そう思われたら嫌なんですけど、ぜひやってみたいです」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)