吉田美月喜、差別と闘ったアイヌ女性を演じ「知る勇気」訴える
女優の吉田美月喜が27日、都内で行われた主演映画『カムイのうた』(公開中)公開記念舞台あいさつに出席した。アイヌ文化伝承者・知里幸恵氏をモデルに、和人に迫害された過酷な人生を送り19歳でこの世を去った主人公を演じた吉田は、「きっとこの映画を見ていろんなことを思った方がいらっしゃるかなとも思います。この映画で伝えたかったことは決して、和人の方を批判しようということではなく、知らないことを知ろうとすること」と呼び掛けた。
本作は、理不尽な差別を受けながらもアイヌとして初めて女子職業学校に入学した主人公テル(吉田)が、口伝えで伝承されてきたユーカラ(※ラは小文字)を文字に残し、アイヌ語を日本語に翻訳しようとする姿を描く人間ドラマ。この日は、劇中でユーカラを歌い上げた共演の島田歌穂、菅原浩志監督も登壇。また、北海道東川町の菊地伸町長も駆けつけた。
吉田は過酷な状況を生きるテルを演じたことについて感慨深げに回顧し、「この作品のオーディションを知った時、わたし自身はアイヌ文化を詳しく何も知らなかった。この作品が決まって、その後、いろいろ勉強していくとすごくショックな内容で、これが日本であったことなのかと驚きました」と感想を述べる。
また、吉田は「この驚きは忘れてはいけないもの、心にとめておかないといけないもの。それを伝えたいと思って撮影しました」と述べ、「涙が多い役だなって思いました。ただ悲しいだけではなくて、知里幸恵さんがモデルとなったテルは、人としての強さ、自分の文化を守らないといけないという強さを胸に持っている。その強さは絶対に絶やしてはいけないと思いながら演じていました」と役へのこだわりも明かした。
吉田は「きっとこの映画を見ていろんなことを思った方がいらっしゃるかなとも思います。この映画で伝えたかったことは決して、和人の方を批判しようということではなく、知らないことを知ろうとすること」とも客席に呼びかけ、「知らないことを知るのは怖くて勇気のいること。理解ができなくても知ろうと歩み寄ることができたら、こういうことは少なくなっていったのかなって思うんです。実際にあったことを知ることで、一歩踏み出す勇気を持てたらいいなと思いました」と話した。
現場での吉田の様子について、共演者の島田は感心しながら見つめていたといい、島田は「撮影時、(吉田は)19歳だったと思うんです。自分が19歳の時どうだったかなって。芯の通った素敵な女優さんだなと思ってご一緒させてもらいました」と吉田の印象を述べていた。(取材・文:名鹿祥史)