「仮面ライダー555」20周年 半田健人「ファンが好きなファイズを守りたい」乾巧として果たすべき責務
特撮ドラマ「仮面ライダー555(ファイズ)」(2003~2004)が20周年を迎え、完全新作のVシネクスト『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』として帰ってきた。仮面ライダーファイズとして戦う主人公・乾巧を演じた半田健人がインタビューに応じ、20周年新作にかける思い、巧と共に歩んできた20年間を振り返った。
【動画】「555」半田健人が語る乾巧と歩んだ20年 インタビューの様子
「仮面ライダー555」は、巨大企業スマートブレインが開発した「ファイズギア」を使い、仮面ライダーファイズに変身する乾巧が、人類の進化形である怪人・オルフェノクに立ち向かう平成仮面ライダーシリーズ第4弾。人間サイドのみならず、人間として生きようとするオルフェノクたちの苦悩を描いた重厚な人間ドラマは、20年経った今も特撮ファンから高い支持を獲得している。
皆さんが好きな『555』を守りたい
半田はテレビシリーズ終了後も、映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』やドラマ「仮面ライダー4号」「仮面ライダージオウ」で巧を演じてきた。世界観は違えど「基本的にスタンスは変えていない」そうで、「自分が20年で歳を取ったように、巧の人生も20年経っていると思えばいい。(電気の流れを)交流から直流に変えるように、スイッチを切り替えるだけで半田健人から巧に切り替えることができました」と20年後の巧を演じるために、特別な役づくりをする必要はなかった。
20年という歳月を経て、「仮面ライダー555」や乾巧に対する思いがより一層強くなったという半田。それだけに、本作の台本を読んだ際、ファンが求める「555」像を崩しかねないシーンには「待った」をかけたという。
「乾巧として見た時に『その先に影響を及ぼす』と思ったんです。非常に難しい見解で、白倉(伸一郎プロデューサー)さんや田崎(竜太)監督(崎はたつさきが正式)のお立場から考えるものづくりと、演者は必ずしも一致しません。僕たちは20年間、『555』を応援してくださっている皆さんを背負っているわけです。ということは、皆さんの好きな『555』を守るというのも一つの役目。皆さんの好きなまんまの『555』であり続けること、これは僕たちの務めの一つだと思っています」
「ものづくりをされる立場の方からすると、作品を守りつつも、新しいものに挑むため壊したい部分があるわけです。でないと、新鮮味がなくなってしまう。ここのせめぎ合いだったんです」
ガラケーからスマホへ 新型ファイズへの変身「練習しました」
巧が変身する仮面ライダーファイズも20年の時を経て新型となり、仮面ライダーネクストファイズへと進化した。本作の打ち合わせで初めてその姿を見た半田は、「今回は、原型を覆すモデルチェンジがなされていて、確かにファイズだけど、随所に今のセンスや感覚でのデザインが組み込まれています。とてもバランスのいい新型だなという印象でした」と振り返る。
ガラケーだったファイズフォンは、スマホ型のファイズフォンNEXTとなり、携帯を開けたり、閉じたりする動作がなくなった。「ガラケー時代は大きく3つの動作(開ける、入力する、閉じる)がありましたが、そのうちの2つがなくなりました。どうしようかと戸惑い、(変身ポーズを)練習しました」
旧式のファイズフォンで長年変身していたこともあり、当時の動作が「体に染み付いています」と半田。「つい(ファイズフォンを)開けたくなってしまいます(笑)。また、スマホのサイズもガラケーより若干大きいんです。片手で取り扱うのですが、正直指が少し遠い。変身コードを入力する際は持ち方を変えるなど、ちょっとしたテクニックが必要です」と変身時の苦労を明かした。
「仮面ライダー555」は全員が奇跡のキャスティング
巧の物語を振り返る上で欠かせないのが、オルフェノクとして覚醒した木場勇治だ。オルフェノクだった巧と共に、人間との共存の道を夢見ていたが、人間への不信感を募らせ、終盤ではオルフェノク中心の世界を目指すために巧と対立した。
木場を演じた泉政行さんは、2015年7月に35歳の若さでこの世を去った。半田は「泉さんは中盤以降、一緒のシーンがほとんどでした。彼は僕よりも4つ上だったのですが、タメ口で接しても怒らない人ですし、クセが全くないんです。泉さんのおかげで、僕は楽しく撮影できていました」と泉さんへの思いを語る。
「泉さん以外にも、村上幸平さん(草加雅人役)や芳賀優里亜さん(園田真理役)など『仮面ライダー555』は全員が奇跡的なキャスティングで、すごく自然な仲なんです。役者の現場を20年経験していますが、他の作品の共演者と必ずしもこういう関係になるとは限りません。『555』で共演した人が特別なんです。家族のような親しさがありますし、やはり運命だったのかなと思います」
乾巧は「僕の役者人生そのもの」
半田にとって、20年共に歩んできた乾巧とはどんな存在なのか?
「僕の役者人生そのもの。20年間でいろいろ役を務めてきましたが、思い返されるキャラクターは巧なんです。20年間、密に付き合っているキャラクターは乾巧をおいて他にはいません。半分自分という感じがします」
巧と出会っていなければ、半田の役者人生は「全く違っていたと思います」という。「すごく『555』に感謝しています。歌手活動をしている時ですら『555』を思っています。自分のステージを観に来てくださるお客さまの中には、『555』がきっかけで来たという方も多いです。自分が今どんな仕事をさせていただいているにしても、『555』や乾巧は無関係ではないんです」
「ある時、(脚本を執筆した)井上敏樹大先生に『先生、巧と俺って似てますよね!』と言ったことがあるんです。そうしたら『バカ野郎! 巧の方がいいやつだよ!』と返されました(笑)」と笑顔で続けた半田。「巧は、僕から見てもいい男です」と感慨深げに話していた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
Vシネクスト『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』は2月2日より新宿バルト9ほかにて期間限定上映/Blu-ray&DVDは5月29日発売