『ゴールデンカムイ』柳俊太郎、アクションはロックスターの動きを参考に モデル経験が役づくりのベース
野田サトルの累計発行部数2,700万部を突破する人気漫画を実写映画化する話題作『ゴールデンカムイ』(公開中)で、双子の軍人・二階堂兄弟を演じた俳優の柳俊太郎(※「柳」は木へんに夘)。自身にとって初めての一人二役に挑み、狂気を漂わせながらも、どこか愛らしい輝きを放つ二階堂浩平&洋平をスクリーンに登場させた。これまでにもNetflixシリーズ「今際の国のアリス」などアクションに定評のある柳が、アクションを演じる上でのこだわりや、敵役を担う醍醐味、主演の山崎賢人(※「崎」はたつさき)に寄せる信頼感を語った。
一人二役を担った二階堂兄弟は“可愛げ”がポイント
本作の舞台となるのは、激動の明治末期。元軍人の杉元佐一(山崎)が、莫大な埋蔵金を巡り、脱獄囚や歴戦の猛者など一癖も二癖もある個性的なキャラクターたちと一攫千金バトルを繰り広げる。柳は、杉元を執拗に追い詰める第七師団の一等卒で、外見のみならず行動までソックリな双子の軍人・二階堂兄弟を演じている。
もともと原作のファンで、「二階堂兄弟はとても好きなキャラクターだった」という柳。オファーを受け、「大きな規模で作られる映画の一員として、インパクトのある、重要なポジションを担う役柄をいただいた。プレッシャーもありましたが、それ以上に二階堂は自分自身も好きなキャラクターであり、愛せるキャラクターであることがモチベーションになりました」と喜びを吐露。
主人公の敵ながら人気を誇る二階堂兄弟を演じる上では、彼らの狂気と共に“可愛げ”を大切にしたと話す。「本作に登場するキャラクターには、みなそれぞれの目的があります。その中で二階堂兄弟、特に浩平は、杉元への復讐心だけを原動力にしているようなキャラクター。それはすべて彼の兄弟愛からくるもので、そういったところが多くの方から愛される一因になっているのかなと感じています。原作を読んでいても、奥深く愛くるしいキャラクターだなと思っていました」
一人二役で浩平と洋平を演じた柳は、「まずは浩平を演じて、その後に洋平を演じて……と同じシーンを何パターンも撮ることが多かったです。またボディダブル(※代役)の方が、僕が浩平をやっている時には洋平を演じてくれて、“ここではこう動いてほしい”といったふうに、いろいろと話し合いをしながら作り上げていきました」と説明。また浩平と洋平で、どのような差をつけるかについても熟考したそうで、「実写になった時に、どのように見せるのがいいんだろうと。原作だと、浩平と洋平はほぼ見分けがつかないんですね。監督と相談して、やはり原作に忠実に、2人の見分けがつかない感じにした方がいいのではないかという話になりました。その方がインパクトがあるし、キャラクターとしての気持ち悪さが出るのではないかと」と意図を語る。
アクションはザ・ローリング・ストーンズを参考に
さらに細かい動きにも二階堂らしさを宿らせるために、「キャラクターの個性を出すために地味なところでいろいろなことをやっています」とのこと。「杉元を捜して蕎麦屋に行くシーンで、浩平と洋平でそろってニョキッと首を出すところでは首の角度にこだわりました。気持ち悪さを出すために、蛇っぽい動きを取り入れています。アクション部の方も二階堂らしい動きをたくさん作ってくださって。馬ゾリのアクションシーンでは、ぶわっと体を反らせるような動きをしています。いい具合に、二階堂の狂った感じが出たシーンになったと思います」とあらゆるアイデアを込めている。
杉元を追い詰める中では、激しいアクションシーンにもトライしている。馬に乗りながらのアクションもあり、柳は「馬に乗ったことがなかったので、乗馬を習うところから始めました。馬ってとても繊細なんです。乗馬の先生からは“乗る人が馬を愛していると、それが馬にも伝わる。だから馬を愛することから始めてほしい”と教えていただきました。僕はもともと動物が大好きなので馬と触れ合うのが楽しくて仕方なくて」とにっこり。「アクション練習は大変でもありますが、馬の練習は本当に楽しかったです」と、馬といい関係を築きながら新たな挑戦を果たした。
Netflixシリーズ「今際の国のアリス」で柳は、丸刈りに顔面タトゥーのある“ラスボス”役として、日本刀のアクションを披露していた。「子どもの頃から運動が好きだった」というが、アクションに臨む上ではどのようなこだわりがあるのだろうか。
すると「型を決めすぎるのではなく、キャラクターの感情や、その場で出た生っぽい動きを大切にしている」そうで、「アクション映画を観て勉強するよりは、ミュージシャンのライブ映像を参考にしています。僕はモデル出身なんですが、モデルって型にハマったポーズを求められがちなもの。でも僕は、そういった決まったポーズよりも、生っぽい瞬間を写してもらえるとすごくうれしくて。例えばアゴに手を添えるポーズをするとしたら、アゴに手を持っていく途中の動きを撮ってほしいと思っていました」と告白。「ザ・ローリング・ストーンズのライブ映像とか、すごく好きなんです。バンドセッションをしてその時の感情で揺れ動いているからこそ、ものすごく面白い動きをしている。振り付けではない面白さがあって、アクションの参考になります」と、その場の空気や熱気までを取り込むようなアクションを目指しているという。
みんな山崎賢人のことを好きになる
柳が演じたラスボス、そして二階堂兄弟も、観る者に強烈なインパクトを残す、魅力的なヒールとなっている。それは柳の熱演の賜物でもあるが、「普段は味わえないような感覚をたくさん味わえる点は、すごく面白いです」と振り切った敵役を演じる醍醐味を噛み締め、「みんなに嫌われるようなキャラクターであったとしても、僕はその役に感情を乗せるためにも、誰よりも彼らのことを理解しないといけないと思っています。“お前はこういう考え方をするから、こうなるんだぜ”とプライベートではこういうことをやってはいけないと教えられるようなところもある。いい教訓になります」と反面教師になると楽しそうに笑う。
主演の山崎とは「今際の国のアリス」に続く共演となり、本作ではがっつりと対峙する場面もあった。柳は「今までいろいろな役者さんに会いましたが、賢人ほど周囲に愛される人はいないと思います。共演者はみな、賢人のことを好きになる。10年以上前から知り合いですが、彼はまったく変わらない。すごいなと思います」と惚れ惚れ。「本当に、漫画の主人公みたいなピュアさがあるんです。主演として大きなものを背負っているし、彼自身もその責任を十分に感じながらも、周りに気負った雰囲気を感じさせない。そういう人が中心に立ってくれていると思うと、とても心強いです」と熱を込め、「原作ファンとしても“ここまでよく作ったなと”と驚くような、続きが観たくなるような作品になっています。そういった作品に参加できたことがとてもうれしいです」と充実感をにじませていた。(取材・文:成田おり枝)
ヘアメイク: 吉田太郎(W) スタイリスト: 伊藤省吾(sitor)