「ガンダムSEEDシリーズ」最新作で目指した“脱SEED”アクション 福田己津央監督インタビュー
テレビアニメ「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」を手がけた福田己津央監督がインタビューに応じ、18年の歳月を経て完成した最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』における挑戦や、作品が掲げるテーマについて語った。
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TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』の続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2004~2005)後の世界を舞台に、主人公キラ・ヤマトたちの新たな戦いを描く本作。ストーリーは、2006年の制作発表から少しずつ変更が施され、最終的にキラとラクス・クラインのラブストーリーに固まった。
「当時はもう少しキラ・ヤマト寄りで制作していました。(新キャラクターの)オルフェ・ラム・タオたちもそこまで登場せず、ラクス・クラインにも焦点が当てられていませんでした。キラとラクスのラブストーリーになることは、最終プロットの少し前の段階で決まりました」
最新作は「資格と価値」をテーマにしていると、福田監督は語る。「人の資格、人の価値というものは何で決まるのか。その人にとって、それらはどういうものなのか。また、愛は等価のものなのか? そういったことが、この作品で問いたいテーマです」
本作に登場する新たなモビルスーツや戦艦は、大河原邦男や山根公利といったTV放送当時からのメカニカルデザイナーによってデザインされた。予告編にも登場するライジングフリーダムガンダムやイモータルジャスティスガンダムは、オーブ連合主首長国が、ストライクフリーダムガンダム、インフィニットジャスティスガンダムの運用データと、可変技術を流用して設計した機体である。
「いわゆる、プロトタイプではないフリーダムやジャスティスを作りたいと思ったんです。フリーダムやジャスティスは、いわゆる制式採用機として、これから量産ベースになる機体。誰が乗っても使いやすく、信頼性も高いモビルスーツです」
TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』から20年、時代と共に映像技術も進化した。当時は作画中心だったモビルスーツも、最新作では3DCGで表現されている。3DCGでのアクションについて、福田監督は“脱ガンダムSEED”を目指したと語る。
「最初はとにかく『ガンダムSEED』っぽいアクションは避けてほしいと思ったんです。モビルスーツの原点に立ち返り、現実世界における質量感やスピード感をどうやって表現するのか、そこを意識してくださいと話しました。すでに動く等身大ガンダムが我々の現実には存在するので、その量感と同じものに見える感じで描いていきたいというところがスタート地点で、そこが一番苦労した点です」
20年前に誕生したフリーダムガンダムは、今も多くのガンダムファンに愛されている主役機だ。「最初は剣、銃、翼(ストライカーパック)の要素を1つにまとめたモビルスーツにしてくださいとお願いしました。少し難航していた時に、大河原さんが提案したのが今のフリーダムの形です。翼の使い方は初めての挑戦でしたが、(翼を広げた状態で)大きくシルエットが変わるのは、当時ではかなり画期的でした。その代わり、近接兵器はなくなってしまったのですが、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』でそれを叶えることができました」
「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」ファンが、18年間待ち続けた『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。さらなる新作の可能性について「思うだけなら自由です。書くことがなければ、これ以上は作れないと思います」と福田監督。「キラやラクスは、(20年戦い続けて)疲弊していますよね。個人的には、彼らにはゆっくりしてほしい気持ちがあります」と語っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』全国公開中