錦戸亮が演技で「絶対にしない」と決めていること
TBS金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」へのゲスト出演も話題を呼んだ錦戸亮。彼が独立後映画初出演となる『コットンテール』(公開中)で出演を決めた理由、俳優として貫いているスタンスについて語った。
映画『コットンテール』は、亡き妻の願いを叶えるため、家族と共に東京からイギリスの湖水地方にわたった主人公・兼三郎(リリー・フランキー)の再生への軌跡を描く日英合作のロードムービー。長年人生を共に歩んできた妻・明子(木村多江)に先立たれた兼三郎は、明子が生前に寺の住職に託した「イギリスのウィンダミア湖に遺灰を撒いて欲しい」という願いを叶えるため、長らく疎遠だった息子の慧(錦戸)とその妻・さつき(高梨臨)たちとイギリスに旅立つ。しかし、互いに長年のわだかまりを抱えた兼三郎と慧はことあるごとに衝突。さらに兼三郎には、慧に言えない明子とのもう一つの約束があった。
2019年に個人事務所を立ち上げて以降、錦戸にとって初の映画出演となる本作。加えて海外チームとの撮影も初となる。撮影は3年前に行われているが、錦戸は本作への出演を決めた理由を「台本には見えるものと見えないものがたくさんありますが、見えなくてもとても良くなる作品もある。僕がどう思うかではなく、揉まれてみようと思い、ぜひお願いしますということになりました」と振り返る。
スタッフのほとんどが海外のチームだったイギリスでの撮影について、錦戸は「初めての環境ではありましたが、だからと言って僕がカメラの前でやることは変わらない。日本で培ってきたことしかできないので、その場で対応する気持ちだけを持っていきました。きっとなんとかしてくれる人たちばかりでしたし」と撮影クルーへの信頼をうかがわせる。
監督は、学生時代にオックスフォード大学と早稲田大学で日本映画を学び、日本に造詣が深いパトリック・ディキンソン。自身の母親を看取った経験を元に書き上げた脚本に深く共鳴したというリリー・フランキーを主演に迎えた本作は、昨年開催された第18回ローマ国際映画祭で最優秀初長編作品賞を受賞した。錦戸が演じた慧(トシ)は、監督自身を投影した役柄。錦戸は慧の人物像を「父親に対して色々な感情があって、父に対して『寂しい』という感情があることも認められない苛立ちがある。それをどんどんぶつけるけれど、兼三郎にはかわされる。慧にも子どもはいるけれど、慧も父親の前では子どもなんですよね」と分析する。
錦戸には演技で貫いていることがあると言い、「僕は撮影に臨む時に、“自分がこう観られたい”、“こうセリフを言いたい”と思っても、絶対に言わないんです。相手があってのお芝居。小さく突いたら小さく、大きく突いたらゴーンとなる鐘でありたいので、必死で相手がどんな声で、顔で話しているかを見てリアクションをしています。特に何も考えす、敏感でいようと思っています」と持論を展開。
登場人物たちが多くを語らない本作では、錦戸の“受け”の演技が観る者に様々な感情を呼び起こす。特に、初共演となるリリーについて「リリーさんは“リリー・フランキー”っていう独特な、好き勝手言っているように見えて知的だし、色々なことを言葉にするのが上手な方。リリーさんが演じているから兼三郎に対して期待している部分があるって思っていたのかもしれません」とその魅力に触れている。
錦戸は昨年、ドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(NHK BSプレミアム)やNetflixシリーズ「離婚しようよ」などに出演。先ごろゲスト出演した宮藤官九郎脚本のドラマ「不適切にもほどがある!」では5年ぶりの民放ドラマ出演で注目を浴び、今後は赤楚衛二と共演するフジテレビの4月期木曜劇場「Re:リベンジ-欲望の果てに-」が控えている。(編集部・石井百合子)