生田斗真、韓国の名優ヤン・イクチュンが語る俳優としての魅力とは?
果敢に新境地に挑み続けている生田斗真と、シビれるような存在感を放つヤン・イクチュン。日韓を代表する俳優が、「カイジ」の福本伸行と「沈黙の艦隊」のかわぐちかいじの共作による人気コミックを映画化した『告白 コンフェッション』(5月31日公開)で、初共演を果たした。雪山で遭難した親友同士が、一方がある告白をしたことをきっかけに、とんでもない窮地に陥っていくさまをスピード感たっぷりに描く本作で、次第に狂気をはらんでいく攻防戦を見事に表現した生田とヤンが、演技者として刺激を受け合った撮影を振り返った。
【動画】生田斗真&ヤン・イクチュン 和やかムードのインタビューの様子
初対面は、感激のハグ!
生田演じる浅井と、ヤンふんするジヨンが、山小屋を舞台に極限のサバイバルを繰り広げる本作。上映時間の74分、ほぼワンシチュエーション。2人だけの濃密なやり取りで展開していく映画だが、生田は「イクチュンさんとほぼ2人だけの芝居で展開していく映画というのもなかなか経験できるものではないので、相当なお芝居のぶつかり合いになるだろうと予測して。ワクワクしながら脚本を読み進めて、ものすごく楽しみにしながら撮影現場に入りました」とヤンとの共演に胸が躍ったと回想。クランクイン前にコロナ禍に突入したこともあり、2回ほど撮影が延期されたそうで「僕自身、長い間この作品のことを考えていました。イクチュンさんと会えた時は、『やっと会えたね!』とうれしくてハグをしたことを覚えています」と待望の対面に、2人ともが喜びをあふれさせたという。
一方のヤンはもともと原作を読んでおり、「2人の登場人物の心理戦や、複雑な心理描写についてとても魅力的だと思っていました」と吐露。さらに「山下敦弘監督、生田さんとご一緒できるということで、おそらくエネルギッシュな作品になるだろうという期待もありました」とこちらも強力なタッグに惹かれたと語りつつ、「私はソウルで小さなお店をやっているんですが、そこに原作の漫画を置いていたら、誰かに盗まれてしまったんですよ」と打ち明け、「悪い奴がいるものだなと思いましたが(笑)、それほどこの原作が魅力的だったんだと思います」と絶賛した。
長編映画初監督を果たし、製作・脚本・主演・編集も担った『息もできない』や、ボクサーを演じた『あゝ、荒野』など、強烈な存在感を発揮してきたヤン。生田は「これまでワイルドな役や男っぽい役を演じられている印象が強かったんですが、初めてお会いした時に『わー!』っと笑顔でやってきてくださって」と両手を振りながら近寄ってきたというヤンの様子を真似しながら、「こんなにかわいらしい感じの人なんだ! とギャップに驚きました」とにっこり。「現場に入ってからも、イクチュンさんの柔らかい人柄を感じ、スタッフさんとも談笑されているのですが、本番になるとジヨンになり、集中力が研ぎ澄まされている感じがあるんです」と明かす。
対するヤンも「生田さんは、初対面の時から本当にカッコよかった!」とキッパリ。「あまりにもステキすぎるので、僕は生存本能であえてかわいらしくしていたところがあります。少し前に本作の宣伝活動の一環で、生田さんとスタジオでインタビューしていただいたんですが、偶然そこに小栗旬さんがいらっしゃったんです。小栗さんも『ヤンさーん!』と(両手を振るようにして)挨拶してきてくれたので、小栗さんも僕に『かわいい』というイメージを持ってくれているのかも!」とちゃめっ気たっぷりに語り、一緒に笑い合うその姿からは2人の相性のよさが伝わる。
互いに熱を高め合った攻防戦
劇中では、「16年前に同級生のさゆり(奈緒)を殺したのは自分だ」と告白したジヨンが、どんどん狂気を爆発させていく。観客はジヨンと対峙する浅井の気持ちを共有しながら、その恐ろしさに震えることになるが、激しい攻防戦に挑んだ生田は、ヤンの芝居に大いに影響を受けたと語る。
「イクチュンさんは、本番になった途端にお芝居を拡大するんです。なるべくパワーを貯めておいて、本番に向けてピークを持ってくる。だからこそ予想もしないことが起きるし、予想もしないような声が飛んでくる。僕がいろいろと計算をしなくても、イクチュンさんと対峙しているだけで、自分のお芝居を引き出してもらえるような感覚がありました」としみじみ。「例えば、ジヨンがストックを叩きつけるようなシーン。ああいった芝居をされたのは、本番だけなんです。急に『バン!』とやられたので、こちらは本当にビクッとして。そういったことばかりで、一緒にお芝居をしていてものすごく面白かったです」と目を輝かせる。
ヤンも「ストックを振るう場面は、ある理由によって浅井の目が見えづらくなっているという設定なのですが、もちろん実際は生田さんの目は見えているわけですよね。でも生田さんは、ストックを差し出してもまるでそれが見えていないかのように、その状況を見事に生かした雰囲気を出してくださった。一抹の迷いもなく、浅井の恐怖を表現してくれたんです」と生田の演技に惚れ惚れ。「そのおかげでこちらも、大きな声で叫ぶことができました」と語り、お互いに熱を高め合うような撮影現場であったことをうかがわせた。
生田の俳優としての魅力は…「エネルギーとプロ精神にあふれている」
メガホンを取った山下敦弘監督は、2人を「真逆のタイプの俳優だ」と分析している。生田は、「イクチュンさんの感情の起伏の幅にはとても驚かされました」と感心しきり。「怒る時、悲しむ時など、針に糸を通すような繊細なお芝居をされる。また叫んだり、わめいたりする狂気のお芝居を、自分が到達したいところを設定して、そこに向かって一つ一つ積み上げていくというアプローチが印象的で、決して出たとこ勝負で振り切る演技ではない。その彼のセンスと技術の高さはすばらしく、本当に尊敬する俳優さんです。普段は本当に優しくてかわいらしい方ですが、いざ山小屋のセットに入ると『この人の近くにいたくない』と思わせる恐ろしさを発散する。まさに、圧倒的な存在感でした」と敬意を表する。
そんな生田をヤンは、「プロとしての心構えがあり、演じる役を見事に表現できる俳優さん」と熱弁。 「相手役の俳優さんがこちらをしっかり見守り、反応してくださるというのは、やはりプロだからこそできることなのだなと感じています。私が演じたジヨンは、感情をさらけ出す役ですが、実はそういう役はそれほど難しくはないんです。生田さんが恐怖の感情をうまく伝えてくださったからこそ、こちらもそれを受けて、いろいろなアイデアが生まれてきました。今回はまったく正反対の役を演じましたが、生田さんのエネルギーとプロ精神にあふれた演技を見ることができて、とてもうれしかったです」と目尻を下げる。
その言葉を受け生田は「2週間ほどの短い撮影期間でしたが、お互いにリスペクトを持ちながら撮影ができていたんだなと、今イクチュンさんのお話を聞いていて改めて感じました」と充実感をにじませ、「1時間ちょっとの短い上映時間ですが、とても刺激の強い映画ができたと思っています。観客の方々にも、浅井とジヨンがどのような運命をたどるのか、ぜひ見守ってほしいです」と期待を寄せていた。(取材・文:成田おり枝、写真:高野広美)
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