ロバート・ダウニー・Jrが1人4役に挑んだドラマ「シンパサイザー」、パク・チャヌク監督が撮影秘話を明かす
ベトナム系アメリカ人小説家ヴィエト・タン・ウェンによるピューリッツァー賞受賞の同名小説をA24とHBOがドラマ化した「シンパサイザー」のマスコミ向け試写会が、18日、ソウル市内の映画館で行われ、メガホンを取ったパク・チャヌク監督が上映後に登壇。「いつもは俳優と一緒なのに今日は一人で孤独です」と笑いを誘いながら、撮影秘話を明かした。
本作の舞台は、ベトナム戦争末期の1975年。ベトナム人とフランス人のハーフで共産主義のスパイがアメリカへ亡命、様々な葛藤を抱えた彼の波乱万丈な人生が描かれる。ロバート・ダウニー・Jrが、主人公の人生に関わるCIA工作員、教授、国会議員、映画監督という、まったく別人となる4人のアメリカ人を1人で4役を演じていることでも話題だ。
チャヌク監督はダウニー・Jrの出演経緯について、「第3話のストーリーを小説からどのように脚色するかと考えていたとき、それぞれの分野で成功している白人男性たちを同じ俳優で演じたら面白いのではと思いつきました。彼らはアメリカのシステム、資本主義などの4つの顔を持つだけであり、1つの同じ存在だと考えたのです。これをそれぞれ個性的に演じる俳優選びに難航したのですが、ドラマシリーズに出演したことがないロバート・ダウニー・Jrにダメ元でオファーしたところ、出演を承諾してくれたんです」と明かした。これには、監督だけでなく作品関係者も驚いたそうで、「助演とはいっても4人の役を演じるわけですから、作品の中では主役級です」と存在感の大きさについても言及した。
だが、キャスティングで本当に大変だったのはベトナム人俳優たち。「エキストラを含めると数千人のベトナム系俳優が出演しているのですが、プロの俳優の人数は限られており、俳優ではない人たちも多く出演しています。将軍を演じた俳優はディズニーのウェブデザイナーで演技は初めてでした」と語り、「プロの俳優なら言わずとも理解してくれることも、彼らにはイチイチ説明しなければならない。それでも、だんだんとそのような手間もなくなり、彼らの演技が上達していくのを感じましたね」と撮影を振り返った。
本作をドラマシリーズで撮ろうと考えたことについては「映画であれば脚色の段階で割愛しなければならないキャラクターがいることもありますが、本作では原作のキャラクターをそのままドラマに登場させています。シリーズを通じてキャラクターを掘り下げていけるのが強みですね」とドラマシリーズならではの長所を強調した。
他国の歴史を韓国人監督が撮ることについての難しさについては、「特に悩みませんでしたね。例えば、ドイツ人が韓国の歴史についての作品を作ったとして、どのように撮ったのか気になりますよね。外国人だからこそ見えてくる客観性があると思うんです。幸い、原作者が存命だったこともあり、いろいろな話を聞かせてもらえたことで作品の意図を理解し、自分なりの映画的要素を込めて映像化できました」と語り、「原作を尊重することが大切」だと付け加えた。
なお、本作は現段階では日本での配信は未定となっている。(土田真樹)