「光る君へ」源雅信が道長につぶやいた「不承知」の真意は?
吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で左大臣・源雅信を演じた益岡徹が、本作で描かれた雅信の愛すべきキャラクター像を振り返った。14日・第15回放送後にドラマの公式X、公式サイトで公開されたインタビュー動画「君かたり」内で語った(※一部ネタバレあり)。
14日放送・第15回「おごれる者たち」は、摂政・藤原兼家(段田安則)亡き後の展開。兼家の跡を継ぎ摂政となった嫡男・道隆(井浦新)は、強引に定子(高畑充希)を中宮にし、皇太后・詮子(吉田羊)を内裏の外へと追いやった。二年後、道隆の独裁に拍車がかかり息子・伊周(三浦翔平)らに身内びいきの人事を行い、定子のために公費を投じ始める。一方、弟で権大納言となった道長(柄本佑)は兄の民を無視した政策に納得がいかず不満を募らせていく。
大河ドラマへの出演は、「翔ぶが如く」(1990)、「毛利元就」(1997)、「軍師官兵衛」(2014)に続いて4度目となる益岡。演じる雅信は、家の繁栄のためには手段を問わず家族を犠牲にすることもいとわない兼家と対照的な人物として描かれた。常に兼家に押され気味だったが、益岡は演じてみて大きな収穫があったという。
「源氏として平安中期から末期、ずいぶん貴族階級が没落したりとか武士階級が起こったり、藤原氏には大きく水をあけられたんだけれども、そのあとにすぐ連想するのが「平家物語」の祇園精舎の…っていう。しかもそれが現代の社会にも転換できるといいますか。それがおもしろいなってつくづく思いまして。役として少し出し抜かれる源氏の、でも位は高いんですけど、その役をやっただけでそれを感じられたっていうのはすごい収穫だったと思います」
~以下、第15回のネタバレを含みます~
14日放送・第15回では、その雅信が家族に看取られながら74歳で亡くなるさまが描かれた。雅信の危篤を知らされた道長が駆け付けると、雅信は「婿殿の出世もこれまでじゃな」「不承知と言い続ければよかった」と弱弱しくささやいた。妻・穆子(石野真子)は「権大納言なら素晴らしゅうございますよ」、娘の倫子(黒木華)も「父上、わたしは幸せでございます。ご心配なく」と力づけようとするが、雅信は最期の瞬間まで「不承知…」とつぶやいていた。益岡は本シーンを以下のように振り返る。
「最期、婿殿(道長)に対して味方によっては皮肉なことを言うんですけれども、あれは本当はそうしたかったけどその出発点は娘のかわいさの発想ですしね。そのことを思ったときに「俺はお前のことは反対だったんだ」っていうことをせめて伝えるっていうのが、かえって2人にとって結果よかったんじゃないかっていうね。だからその辺の描かれ方も見事だなっていうね。多少錯乱しているっていうふうな解釈ももちろんできるんですけれども、家族を大事に思った人間なんだなっていうのをすごく感じました。ですから、そのことばと裏腹に最期、手をぐっと握れたっていうのがすごくよかったと思うし、いろいろそういう意味で勉強になりましたね。生き方の問題として。あの死に方はどう考えても幸せですしね。みんなに見てもらって」
娘の倫子を溺愛する優しいパパとして視聴者に愛された雅信。当時は娘を入内させることで出世するのが常だったが、雅信はそれをせず結婚を急かすこともしない。また、横暴な兼家を毛嫌いしていたが、倫子が道長との結婚を強く望んだ際には頭を抱えながらも根負けする微笑ましい姿が映し出された。
そんな妻子に弱い雅信に益岡自身も好感をもっているようで「表の顔と家庭の顔っていう分け方をしたとしたら、全然違う表れ方をしているっていうのがおもしろいですよね。奥さん(穆子)を大事にして、娘(倫子)に弱くてっていうね。それがとても現代的につながるものがあるんだなっていうふうに。本当にやりがいのある、家族の一員になれたという「こうあったらいいだろう」と、どんな時代でもこういうふうに夫婦関係と親子関係があればいいんじゃないかって。問題は起こるんだけどそれをなんとか解決していくみたいな。そういうことをできることはすごくいいなと思いました」と人物の魅力をかみしめていた。(編集部・石井百合子)