松本幸四郎、職人が作る時代劇は「何物にも代えがたい」『鬼平犯科帳』公開で思い
十代目松本幸四郎が10日、丸の内ピカデリーで行われた映画『鬼平犯科帳 血闘』初日舞台あいさつに出席。本作で盗賊・鷺原の九平を演じた柄本明と共に、時代劇を後世に伝えていくことの大切さを力説した。舞台あいさつにはそのほか、中村ゆり、市川染五郎、北村有起哉、中島瑠菜、山下智彦監督も参加した。
本作は、池波正太郎の三大シリーズの一つとして知られ、累計発行部数3,000万部を突破する「鬼平犯科帳」を、松本幸四郎主演で新たに映像化した時代劇シリーズの劇場版。若かりしころ、火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官・長谷川平蔵(幸四郎)の世話になった居酒屋の娘・おまさ(中村)が、平蔵に密偵になりたいと申し出ることから起こる騒動を描く。
柄本は、故・中村吉右衛門さんが平蔵を演じていた「鬼平犯科帳」シリーズへの出演経験もあり「とにかく待ちに待った『鬼平犯科帳』でございます。それを幸四郎さんがやられるというニュースを見たときは本当に嬉しかった」と笑顔を見せると「時代劇は日本の文化です。それを時代劇発祥の地である京都で撮影できることが嬉しくて嬉しくてたまらなかった」と感情を爆発させる。
また中村ゆりが、撮影中の柄本について「とにかくご機嫌だった」と伝えると、柄本は「僕は京都が大好きなんです。時代劇は作り続けていかないといけない。それは日本という国の責任です。東京がダメというわけではありませんが、京都で作る時代劇はやっぱり違う、宝物です」と力説する。
その言葉を受けた幸四郎は「10代から京都撮影所にはお世話になり、育ててもらいました」と切り出すと「ロケーションはもちろんですが、京都撮影所の方々には歴史がある。世界一の職人が作る時代劇は何物にも代えがたいものなんです」と柄本に同意。本作で若かりしころの鬼平こと長谷川銕三郎を演じる染五郎も「京都撮影所には10年前に一度、父が出演している時代劇にちょこっと出させていただいて以来でしたが、温かい現場でありつつ、プロフェッショナルな方々が同じ方向を向いて作っているなかでお芝居ができることが幸せでした」と伝統を感じながらの撮影だったことを明かす。
熱い思いを告白する登壇者の熱気に包まれた会場。幸四郎は「『鬼平犯科帳』は人と人とのつながりや絆を時代劇として見せる作品。深く深く人が描かれている人間ドラマを多くの人に観ていただきたいです」と映画をアピールしていた。(磯部正和)