「仮面ライダーW」塚田英明Pが振り返る“奇跡”の誕生 「風都探偵」実写化待望の声にも感謝
2009年から2010年にかけて放送された平成仮面ライダーシリーズ第11弾「仮面ライダーW(ダブル)」。チーフプロデューサーを務めたのは、20周年新作が控える「特捜戦隊デカレンジャー」(2004~2005)などの塚田英明だ。東映の執行役員(ドラマ事業部門長)を務める塚田プロデューサーがインタビューに応じ、当時の制作秘話を振り返りながら、拡大し続ける「W」の世界観を語った。
【画像】舞台化もされた「仮面ライダーW」の続編漫画「風都探偵」
「仮面ライダーW(ダブル)」は、奇怪な事件が多発する街・風都を舞台に、“ハーフボイルド”な私立探偵・左翔太郎(桐山漣)と相棒・フィリップ(菅田将暉)が、仮面ライダーWに変身して事件を解決していく物語。史上初となる“二人で一人の仮面ライダー”や、本格探偵ドラマとしての緻密なストーリー構成が高い評価を獲得し、2017年より正統続編となる漫画「風都探偵」(週刊ビッグコミックスピリッツ)の連載がスタートするなど、テレビシリーズ放送終了後も根強い人気を誇る。
塚田プロデューサーは、「仮面ライダーアギト」(2001~2002)にも参加していたが、チーフとして仮面ライダーシリーズを担当するのは「W」が初めてだった。「仮面ライダーってなんですか? ということを石森プロに聞いてみたり、仮面ライダーの原点から自分なりにやってみたいと思って、作り出した記憶があります」と企画を立ち上げた当時を振り返る。
「企画を具体的に進めていく中で、左右半々でフォームチェンジしながら戦う仮面ライダーのアイデアが出てきました。そして、ドラマと一緒に考えていくにつれて、二人で一人の仮面ライダーというコンセプトが誕生しました。原点に立ち返る際に、『W』では『前後編でひとつのエピソードを完結させる』ことにこだわりました。そこは事件モノの良さでもあります。そういった意味では、(1話完結型の)『デカレンジャー』と割と近い部分があったりもします」
漫画「風都探偵」は2022年にアニメ化および舞台化されるなど、メディアミックスで世界観を今なお広げている。さまざまな形で愛され続ける「W」の魅力について、塚田プロデューサーは脚本家・三条陸の緻密な世界観作りにあると分析する。
「三条さんとは『W』の時から一緒に作ってきました。『風都探偵』は三条さんが作画の佐藤まさきさんや編集さんと打ち合わせをする前に、私と二人で“ゼロ稿打ち合わせ”をやってくれています。二人だけで本打ち(=脚本打ち合わせ)をして、三条さんが考えたことに対して、私がカウンターで意見やアイデアを言い、揉みながら整えていってます」
また、桐山や菅田といった才能あるキャストが集まったことも理由の一つだろう。「『風都探偵』では、単行本が出るたびにゆかりのキャストにインタビューをお願いしているのですが、主役の二人を始め、劇場版でお世話になった吉川晃司さん(鳴海荘吉役)や松岡充さん(大道克己役)も快諾し、『W』のことを語ってくださって、本当にありがたいです。キャストやスタッフが奇跡のように集まったいい作品に出会えてよかったと思っています」
ファンの間では、「W」のキャストを起用した「風都探偵」の実写化を望む声も多い。塚田プロデューサーは、「ファンのみなさんから期待されていることは、とても嬉しいです。ありがとうございます」と笑顔を見せる。「ありがたいことに、アニメや舞台などで、いろいろな『風都探偵』を見せることができています。桐山くんと菅田くんだけでなく、さまざまな方が翔太郎とフィリップを演じてくださっていることも嬉しいです」
塚田プロデューサーが同じくチーフを務めた「デカレンジャー」は、20周年の節目で新作Vシネクスト『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』が製作されるなど、東映特撮は時代を超えて愛され続ける。「私たちは先代からバトンを受け取り、それを次の世代に渡している途中です。新しい世代のプロデューサーたちが、それぞれの解釈で『スーパー戦隊のここは守っていきたい』『仮面ライダーのここは大事にしなければいけない』ということは検証しながら、新たなサプライズなどを取り入れて、盛り上げていってほしいです」と次世代のクリエイターにエールを送っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
Vシネクスト『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』は新宿バルト9ほか期間限定上映中/Blu-ray&DVDは11月13日(水)発売