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『ダークナイト』ヒース・レジャー起用の経験が助けに…ノーラン兄弟がドラマ「フォールアウト」を語る

配信開始から大反響となったドラマ「フォールアウト」
配信開始から大反響となったドラマ「フォールアウト」 - (C) 2024 Amazon Content Services LLC

 先日、ロサンゼルスのDGA(全米監督組合)シアターで、ドラマシリーズ「フォールアウト」のエピソード1が上映され、製作総指揮と監督を務めたジョナサン・ノーランに兄のクリストファー・ノーランがインタビューするという、エミー賞向けのイベントが開催された。弟のジョナサンを「マイ・ベイビー・ブラザー」と紹介したクリストファーは、終始ご機嫌な様子で、兄弟ならではのリラックスしたやりとりに、満員の会場はわいた。(吉川優子 / Yuko Yoshikawa)

【画像】得体の知れない狂気!ヒース・レジャー版ジョーカー

 人気ゲーム「Fallout」を基にした今シリーズ、2077年に核戦争が勃発し、それから約200年後のポストアポカリプスの世界が舞台となっている。Vaultと呼ばれる核シェルターに住むルーシー・マクレーン(エラ・パーネル)は、ある目的のために、核で破壊された外の世界に初めて出て行くことになり、そこで Brotherhood of Steel という軍事組織の兵士マキシマス(アーロン・モーテン)と、賞金稼ぎのグール(ウォルトン・ゴギンズ)に出会うことになる。

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ノーラン兄弟を惹きつけるもの

ジョナサン・ノーランとルーシー役のエラ・パーネル(C) 2024 Amazon Content Services LLC 

 現在、PrimeVideo で配信され、最大のヒットとなっている今作。ゲームのファンだったジョナサンが、約5年前、ゲームの開発者トッド・ハワードとランチをして、テレビシリーズ化することを決めたそうだ。

 ジョナサンは「あなた(クリストファー)も僕も、脚色する余地がある作品によく惹かれるよね。『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』の映画には、すごく敬意を持っているけど、ある媒体から別の媒体へと(物語を)移し替えるのに何も変えることができないから、脚本家としてはすごく難しい。このフランチャイズでは、ゲームごとに異なるキャラクターが登場し、異なるストーリーが展開される。それこそが『Fallout』フランチャイズの真髄なんだ。そして、セッティングは何よりも重要なキャラクターだ。ここでは、美しいユニバースと神話は完全に出来ているけど、ストーリーが欠けているんだよ」と、オリジナルのストーリーを作れることに惹かれたと言う。

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 ショーランナーを、ジェニーヴァ・ロバートソン=ドウォレット(『キャプテン・マーベル』)とグレアム・ワグナー(「ジ・オフィス」、「ポートランディア」)という、全く違うバックグラウンドを持つ2人に任せて脚本を依頼し、ジョナサンは製作総指揮と最初の3エピソードで監督を担当。もっとも大変だったのは、今シリーズならではの稀有なトーンを見つけることだったという。
  
 クリストファーは、「君(ジョナサン)が最初の2つのエピソードの脚本を見せてくれた時、良い意味で、親しみを感じるトーンだと思った。でも、まるであの作品みたいだ……というものは思いつかなかった。一番近いのはテリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』だと思ったけど、あれは戦後のとてもイギリス的な作品だ。『フォールアウト』には非常に独特なトーンがあると思う」と語った。

 続けてクリストファーは「僕たち兄弟が、ある作品に惹かれる理由のひとつは、さまざまな技術や撮影方法を使って、世界を作り上げる機会を持てることだと思う。このシリーズには、全体を通して、自由に使える膨大なツールがある。監督として、世界(観作り)にどのようにアプローチしたの?」とジョナサンに質問。ジョナサンは「その答えは、あなたからたくさん盗むことだった」と会場の笑いを誘った。

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 「そして、たくさんの新しいことを学ぶこともね。実践的なロケ撮影に重点を置いたんだ。ビデオゲームでは、(プレイヤーは)文字通り悪者にも善者にも、その中間にもなれるし、70~80種類のストーリーを追求できる。映画とはまったく違う。そこで僕たちが持ち込んだのはリアリティーなんだ。素晴らしいロケ地を探しに行こう、クリーチャーを作ろう、ということだった。それは期待通りの楽しさだったよ」と、ジョナサンは可能な限りCGに頼らないクリストファー流の撮影に挑んだことを明かした。

ゲームそのままなパワーアーマーの挙動にも注目(C) 2024 Amazon Content Services LLC 

 パワーアーマーのショットも「99%」は、スタントマンが実際に着用して撮影したもので、ジェットパックも本物だったという。「リドリー・スコットが『エイリアン』のゼノモーフのスーツを、才能あるスタントマンに合わせてデザインしたことを参考にしたんだ」。

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バットマンの経験が生きた

 また、実写化という点に関しては、『ダークナイト』を映画化した時の経験が大きく影響したという。クリストファーから「僕たちが『バットマン』を作っていた時、人々(観客)は、愛されているキャラクターと一緒に育ったと感じていて、彼ら自身の解釈を(キャラに対して)持っている……ということをよく話していた。でも、ビデオゲームは、人々がそれぞれのやり方でどうプレーするかを決めて、経験をコントロールできる。それを(実写化するのは)大変だった?」と尋ねられたジョナサンは「とても恐ろしかったよ」と答えた。

「もし僕たちが『バットマン』を経験していなかったら、このドラマをやる勇気があったかわからないと思う。君が(ジョーカー役に)ヒース・レジャーを起用したことについてよく考えたよ。みんな『ああ、彼らは失敗した』と思っていた。理解できなかったんだ。彼はジャック・ニコルソンではなかったからね。ネット上で人々の反応を見て怖くなったのを覚えている。でも、それはとてもうまくいったんだ。ファンのためではなく、一人のファンとして好きなものを見つけ、できる限り敬意を持って扱えば、その敬意と愛が(観客にも)見えてくるものだ、と言える勇気を僕に与えてくれた」と振り返るジョナサン。

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(C) 2024 Amazon Content Services LLC 

 「異なるストーリー、異なるキャラクターというフランチャイズの性質上、僕たちには大きな利点があったと思う。誰も(ドラマの主人公の一人)ルーシー・マクレーンとしてゲームをプレーしたことはないし、グールとしてプレーしたこともない。それは助けになった。そして、ジュネーブとグラハムが、“アンサンブル”にするという素晴らしいアイデアを思いついたんだ。3人のキャラクターを通して、3つの異なるゲームプレイを大まかに表現しているので、プレイ経験の合成バージョンのようだった。ルーシーは、初めてゲームをプレーする初心者で、ずっといい子でいるようなキャラクターだ。グールは100年選手のプレイヤーのように、みんなを殺せる最強の武器を持っている。そして、その中間にマキシマスというキャラクターがいて、何をするのが得策なのか、理解しようとしているんだよ」。

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シーズン2は鋭意製作中

 ところで、今シリーズのキャストは皆とても素晴らしいが、クリストファーは特に、グール役のゴギンズに強い感銘を受けていた。「彼は真に2つのキャラクターを演じている。あるキャラクターから始まり、別のキャラクターで終わるんだ。僕は、ゴギンズがグールを見事に演じることに一切の疑いがなかった。でも彼が、もう一つの、より人間的なキャラクターでやった演技は、これまで見たことがない。あのキャラクターには、気品と落ち着きと寛大な精神と現実感がある。本当に素晴らしかった。どういう経緯で彼をキャストしたの?」

グール役のウォルトン・ゴギンズ(C) 2024 Amazon Content Services LLC 

 ジョナサンは、脚本を当て書きすることはしないそうだが、ドラマ「ウェストワールド」を手掛けた際のアンソニー・ホプキンスとゴギンズの2人だけは、彼らを念頭に置いて脚本作りをして、幸運なことに役を引き受けてもらえたのだと言う。

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「(『フォールアウト』で)ドラマとコメディーが奇妙に混ざり合ったゲームのトーンに近づけるのは誰だろうと考えたとき、ウォルトンの名前がリストのトップにあがった。なぜなら、あれほど両方向にすごい俳優を知らないからだよ。(ドラマ)『JUSTIFIED 俺の正義』の彼は完全に悪役にコミットしていてとても怖い。一方で、コメディー作品になると、スクリーンに出てくるたびに、もらしてしまうかと思うほどおかしい。そんな人は本当に少ないよ。君が言うように、彼に真面目な男の役を与えることにワクワクしたんだ。獰猛さを持っている俳優に、それを消してくれと頼むと、とてもエキサイティングになることがある。突然、今まで見たことのない静けさが生まれるんだよ」とジョナサン。

 続いて、「ルーシー役のエラの場合は、『イエロージャケット』で彼女を見ていて、素晴らしいドラマ俳優だと思っていた。問題は、彼女がコメディーを演じられるのか、ということだった。彼女は若き(喜劇女優)ルシル・ボールだと思う。素晴らしい天性のコメディアンだったんだ。そして、(マキシマス役の)アーロンは、ジュリアード出身の舞台で訓練を受けた俳優で、少しコメディをやっていた。驚くほど洗練された俳優だ」と主役3人を絶賛していた。

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 最後にクリストファーは、今後のシーズンにも言及。「僕たちは『フォールアウト』をもっと見ることになるわけだけど、今後の展開がどうなるのか、何か話したいことはある?」という質問に対してジョナサンが、「そんなことを聞くなんて信じられない。裏切りだ」と大袈裟に反応して、会場は爆笑。そして「今日、今後6か月の間で第2シーズンに登場させるクリーチャーを作ることを話し合った。ファンはとても興奮すると思うよ。とてもクールなんだ」と締めくくった。

「フォールアウト」はPrime Videoで独占配信中

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