オスカー候補監督、巨大竜巻映画のために引退撤回『ツイスターズ』にかけた思い
巨大竜巻の脅威を描く映画『ツイスターズ』のリー・アイザック・チョン監督が、アカデミー賞6部門ノミネートに輝いた前作『ミナリ』(2020)をもって引退を考えていたことを明かし、その意思を覆した理由と『ツイスターズ』に込めた思いを公式インタビューで語っている。
『ツイスターズ』は、オクラホマ州で異常発生する巨大竜巻ツイスターズに、トラウマを抱えた気象学の天才ケイト、命知らずな竜巻チェイサーのタイラー、竜巻リサーチ会社のCEOハビら寄せ集めチームが無謀ともいえる“竜巻破壊計画”で立ち向かっていくアクションアドベンチャー。さまざまな困難に直面しながらもたくましく生きる移民家族を、繊細な映像美で描いた『ミナリ』とは正反対に思える大作映画だ。
もともとチョン監督は、自身の家族をモデルにした自伝的物語である『ミナリ』をもって映画監督から退くことも考えていたという。「映画監督としての道が終わるのであれば、自分にとって意味のある物語を語って終わりたかった。『ミナリ』を最後に、私は映画をやめようと思っていたんだ」
一時は『君の名は。』ハリウッド実写版の監督にも決まっていたチョン監督だが、なぜ、次回作として大作アドベンチャーである『ツイスターズ』に参加することを決めたのか。その理由についてチョン監督は「『ツイスターズ』はいつか監督したいと夢見ていた映画だった。皆からは、次も『ミナリ』のような物語を作りたいのだろうと思われていたかもしれないが、そうではなかった。スケールの大きな仕事がしたかった。そのうえで僕は、複数の登場人物の関係や運命が絡み合う物語にとても興味があったんだ」と明かしている。
本作は、ニューヨークで自然災害を予測する仕事に就くケイトが、故郷のオクラホマに超巨大竜巻が異常発生していることを知ったことから物語が動きだす。かつての親友であるハビの懸命な頼みで、夏休みの一週間だけ故郷へ戻ることを決意したケイト。そこでタイラーをはじめとする、知識も性格も正反対だが、竜巻に人生をかけた仲間たちと出会い、“竜巻を破壊する”という同じ使命をもって命がけの戦いに挑む。
ケイトを演じるデイジー・エドガー=ジョーンズは、自身のキャラクターについて「初めケイトは、竜巻を弱体化させる方法を見つけることに情熱を燃やしていた。しかしある悲劇に見舞われて心を閉ざしてしまう。この物語は、彼女が故郷とのつながりを取り戻し、新しい仲間と繋がることで、回復していく姿を描いたドラマでもある」と語っている。トラウマを抱えた主人公が、抗えない恐怖に挑む仲間同士の絆を実感し、諦めず立ち向かう勇気を取り戻していく本作。すべてを跡形もなく吹き飛ばすパワーを発揮する巨大竜巻との戦いと、“モンスター”たちを倒すべく英知を結集して立ち向かうケイトやタイラーといった人間たちが描かれる重厚なドラマ。チョン監督が『ミナリ』の次回作に求める全てが『ツイスターズ』にはあったということだろう。(編集部・入倉功一)
映画『ツイスターズ』は8月1日より全国公開