『スター・ウォーズ』レイ女優、海への恐怖を克服 初めて英仏海峡を横断した女性役に高評価
『スター・ウォーズ』シリーズのデイジー・リドリーが世界で初めて英仏海峡を横断したトゥルーディ・イーダリーを演じた伝記映画『ヤング・ウーマン・アンド・シー』。デイジーの演技が高い評価を得ている本作は、アメリカの大手批評サイト Rotten Tomatoes で批評家85%、観客スコア98%という高得点を獲得している。公開前に開催された記者会見で、デイジーとヨアヒム・ローニング監督と製作のジェリー・ブラッカイマーが、そんな渾身の1作の製作裏話を語った。(吉川優子 / YukoYoshikawa)
1905年、ニューヨーク市で肉屋を営むドイツ人移民の次女として生まれたトゥルーディは、はしかから奇跡的に回復し、姉のメグと一緒に水泳のクラスを始める。めきめきと上達してオリンピックチームに参加するが、コーチとの諍いもあり実力を発揮できずに終わったトゥルーディは、1926年に約34キロある英仏海峡を泳ぐことを決意し、あらゆる困難に立ち向かうことになる。
勝ち目のなさそうな勝負に挑み、さまざまな障害を乗り越えて成功するというスポーツものの醍醐味はもちろん、家族の絆や、1920年代におけるアメリカの女性の状況などが巧みに織り込まれた感動作。製作総指揮も務めたデイジーは「トゥルーディのストーリーを、現代の観客に届けるチームに参加できてとてもワクワクしました。私が脚本を読んだ時、信じられないことに、トゥルーディのことを聞いたことがなかったんです。ほとんどの人がそうでした」と、トゥルーディの勇気ある行動を伝えることが、本作に惹かれた理由だったと語る。
そして「あれから100年が経ち、私たちは多くの進歩を遂げましたが、まだ十分ではありません。この映画を撮影してからの数年間、特にスポーツ界における女性について、より多くの会話が交わされるようになりました。だから、当時の女性がどうだったかを描くことはとても重要なことなんです」と続けた。
水泳選手役ということで、オリンピック選手のコーチについて、撮影の3か月前から訓練を積み、撮影中も数か月泳いでいたというデイジー。しかし「実は、私は海底が見えるところより先には行かないんです」と海で泳ぐこと自体に恐怖感を持っていたという。特に、撮影の最後には海峡を泳ぐシーンがあり、「肉体的な負担も大きかったですが、本当に大変だったのは、その大変な泳ぎを克服するという精神的なハードルでした」と明かす。
「どんな環境になるかわからないのに、準備できることは限られています。寒さに備えることはできないし、ショックに備えることもできません。正直なところ、もうあの海には戻りたくない、と思った瞬間もありましたが、やらないといけなかったんです。でも、海に入るたびに、トゥルーディは何時間も、何時間もここにいたんだと考えました」
ローニング監督も、「実際に海で撮影するのは大変でした。僕はぶ厚いジャケットを着てボートに乗っていましたが、デイジーは、海中にいて、セリフも言わないといけない。彼女のスタミナと強さには本当に感謝しています」とデイジーの献身ぶりを賞賛する。
また、ブラッカイマーは、デイジーのプロデューサーとしての手腕を高く評価。「デイジーは、脚本を読んで、登場人物の、そしてストーリーの視点から意見を言ってくれました。すべてを把握し、それが他のキャラクターとどう関係しているのかを理解している人がいるのはとてもよかったです」と語っていた。
ところで、2人の姉がいるデイジーにとって、トゥルーディと姉メグの関係を真実味を持って描くことは、本作の中でとても重要だったという。「メグとトゥルーディは全く違う2つのものを代表しているから面白いんです。トゥルーディには自由があります。すべて(の障害)を乗り越えながらも、心に決めたことを実行できます。メグは、本質的に他のすべての女性がしなければならなかったことの代表です。親の言うとおりにして、結婚し、店に残ります。メグにはそれ以外の選択肢はないんです。メグの物語はとても心が痛むものですが、そんな中でもこの姉妹はお互いをとても愛し合っていて、それを演じるのは素晴らしかったです」と、デイジーは振り返る。
また、デイジーの母親は、トゥルーディの母親のように「私や姉たちのやることを決して止めなかったんです」とも明かす。
デイジーは「俳優になりたいと決意した理由の一部は、母が『やってみたら』と言ってくれたからだと思います。私はエージェントについて知らなかったし、知らないことだらけだったんです。トゥルーディも知らないことがたくさんあって、どうやって海峡を泳ぐか知りませんでした。ただ、それが自分がやりたいことだとはわかっていたんです。たとえその旅がどんなものになるのかわからなくても、夢を持ち、いろいろなことに挑戦することを許される、ということで、私たちには類似点があると思います」とトゥルーディに共感を覚えた理由を説明した。
最後に「大海原を泳ぐにせよ、はるか彼方の銀河系で戦うにせよ、トゥルーディも、レイ(『スター・ウォーズ』)も、困難に直面するキャラクターですが、勇気あるこの女性たちの物語を見た観客に、何を持ち帰ってもらいたいですか」と質問されたデイジーは、「フィクションと事実を比較するのは難しいですね」と笑いつつ、「私は、はるか彼方の銀河系で、非常に多くの障害に直面する人物を演じるという素晴らしい光栄に恵まれました。でも、本作が人々を興奮させるのは、これが実際起きたことからだと思います。彼女は、女性には不可能だと思われていたことに挑戦し、障害を乗り越えました。1920年代の生活には、私たちが想像できないことがたくさんあったと思います。彼女が泳いだ後、すぐに他の女性も(英仏海峡を)泳いだんです。心理的な障壁が打ち破られて、他の女性たちも『できないと言われてきたから、できなかったんだ』と気づいたんですね。だから今、このストーリーを語ることができるのは、本当に素晴らしいです」と締めくくった。
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