八木勇征「常に次を考えています」 予期せぬトラブルに遭遇したときに大事なこと
内田春菊の漫画を原案にしたテレビ朝日系ドラマ「南くんが恋人!?」(毎週火曜よる9時~9時54分)で、主人公ちよみの恋人で15cmの手のひらサイズになってしまう“南くん”こと南浩之を演じる八木勇征。ダンス&ボーカルグループ・FANTASTICSのツインボーカルとして活躍する一方で、昨年は全クール連ドラ出演を果たし、女性ファッション誌「ViVi」の企画「国宝級イケメンランキング」(NOW部門)では2期にわたって1位に輝いた。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの八木が本作の撮影を振り返るなかで、予期せぬトラブルに遭遇したときに心がけていることを語った。
高橋由美子&武田真治共演の1994年版をはじめ、これまで幾度も映像化されてきた内田春菊の漫画「南くんの恋人」と、その男女逆転バージョンとなる「南くんは恋人」を原案に、女子高生・堀切ちよみ(飯沼愛)と、恋人である南くんのひと夏の物語を描く本作。脚本を、1994年版のドラマ「南くんの恋人」を手掛けた岡田惠和が務める。今年1月期放送のラブコメ「婚活1000本ノック」では幽霊役で話題を呼んだ八木だが、本作で演じるのはある日突如として15cmに縮んでしまう不条理な出来事に見舞われる大学生。八木は「僕は過去作を見たことがなかったので、どういうことなんだろうって……。シンプルに不思議な話だと思ったし、15cmになった南くんがどうなっていくんだろうとワクワクして、その後の展開が全く読めないなと」と戸惑いつつも強烈に惹きつけられたという。
身長15cmという設定だけに、出演者の中で八木だけがグリーンバックでの独り芝居。八木にとって初の体験だが、共演者と顔を合わせない寂しさはありながらも撮影自体は順調のようだ。撮影現場ではどのような孤軍奮闘が繰り広げられているのか?
「飯沼さん演じるちよみちゃんの映像を観て間合いを覚えて、ちよみちゃんの動きに当てはまるように演じていきます。南くんの感情を変化もつけながら表現しているのですが、きちんとシーンをイメージしていたら意外に苦戦することなくいけています。南くんが15cmになったことで変化していく感情っていうのがとても大事で、それは今のところ表現できているかなという気がします。他の方々の撮影と同じように、監督をはじめ照明、撮影、美術などスタッフさんほぼ全員いてくださるんですけど、演者は僕1人なのでこれまでと少し違う感覚があるかもしれません」
感情面に加え、意識しているのが肉体面で通常よりもオーバーな表現をすること。そこで役立ったのが舞台での経験。八木は2022年に舞台「脳内ポイズンベリー」に出演している。
「これまで通りの芝居だと観てくださる方に伝わらないと思うので、伝えたいことを大きく、大げさに表現するようにしています。似ていると思うのが舞台での表現。舞台では上の席の方にも伝わるように演じるんですけど、これが南くんがちよみちゃんを見上げたときの距離感と近いんです。拒絶するときは全身で“絶対に嫌だ!”と表現したりする。南くんの気持ちになって、劇中のちよみちゃん、視聴者の方々にどうしたら伝わるのかというのは常に考えていますね」
南くんは地元・湘南のバスケットボール界のスターという設定。兄妹のように育った幼なじみのちよみと恋人同士となり、青春真っただ中にいる。15cmになる前の彼はちよみいわく“完璧”な存在で、いくらモテててもちよみ以外の女性は眼中になく「しゃべんないんだったらチューしちゃうぞ」「ちよみは知らないの。自分がどんなに綺麗でどんなに可愛いかを…どんなに素敵な女の子かを」「大好きなの。ずっとな、何があっても。なっ」など、いつだって真っすぐに思いを伝える。思わず照れてしまいそうなセリフであっても、八木は「難しいと感じたことは1度もない」という。
「南くんって地元のスーパースターとして周りから期待されていて、人気者なわけじゃないですか。一方で、彼はそれだけ努力をしているし、結果も出している。それが自信にもつながっていると思うんですよね。だから普通は照れてしまいそうな言葉もスパスパスパって言えちゃうのではないか。そこに緊張とか照れはないんじゃないかなって。だからこそ、南くんの場合は“好き”ではなく“大好き”という表現になるし、それは自信の表れでもあるのかなという気がします」
そんな“完璧”な南くんが、15cmになってからは次々と降りかかる試練になりふりかまわず立ち向かうこととなり、これまで見せなかった一面をさらけ出していく。同時にちよみを守る側から守られる側へと関係も変化することになる。八木自身、危機的状況を迎え余裕がなくなる状況に陥ったときにはどう対処しているのか。
「例えば、ライブ中などでアクシデントが起きたとき、それがこちら側にしかわからないことだったとしても表情に出してしまうと、観てくださる方に不安を与えてしまう。僕自身、結構出やすいタイプなので、そういうときには、いかにアーティスト・八木勇征を崩さないでいられるかっていうのは普段から考えていることですね。いつも頭のどこかに冷静でいなければという視点があります。なので、ステージ上でボルテージが高いように見えても、常に次のことを考えていたりします」
本日(30日)、3話が放送されるが、見どころを聞くと「ちよみちゃんとの遊園地のシーンが好き」だと八木。「観覧車の中で南くんがまだ大きかったころの回想が流れるんです。15cmになっちゃったけど、今の世界線もエモいし、キラキラしていてちゃんと青春している。ちゃんと2人の幸せはあるんだと感じられて、絶対にいいシーンになっていると思います」と呼び掛けた。
全国アリーナツアー「FANTASTICS LIVE TOUR 2024 "INTERSTELLATIC FANTASTIC"」最終日の翌日、多忙なスケジュールの合間を縫ってのインタビューに応じた八木。人気BLドラマ「美しい彼」(2021・2023)でカリスマ的存在の高校生・清居奏役が当たり役となり俳優としての快進撃が続くが、今後も『矢野くんの普通の日々』(11月15日公開)、『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』(2025年公開)と2本の主演映画の公開を控えており、飛躍はとどまるところを知らない。(取材・文:編集部 石井百合子)