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『フォールガイ』規格外アクションを支えた日本人スタントマン スーパー戦隊&エイリアンにも参加した浅谷康の奮闘

『フォールガイ』撮影現場での浅谷康
『フォールガイ』撮影現場での浅谷康 - (C) 2024 UNIVERSAL STUDIOS. ALL Rights Reserved.

 ライアン・ゴズリングが超一流のスタントマンを演じたアクション映画『フォールガイ』(全国公開中)。元スタントマンのデヴィッド・リーチ監督が仕掛ける規格外アクションの数々を支えたのは、ハリウッドで活躍する日本人スタントマン・浅谷康(あさや・やすし)だ。プリプロダクション(撮影準備段階)からアクション制作に携わった浅谷がリモートインタビューに応じ、アクション制作の裏側や自身のキャリアについて語った。

【動画】ライアン・ゴズリング、体張りすぎ!『フォールガイ』規格外アクションの裏側

全員が納得するスタントにしたい

浅谷が携わったコルトのチェイスシーン - (C) 2024 UNIVERSAL STUDIOS. ALL Rights Reserved.

 『フォールガイ』は、超一流のスタントマンでありながら元カノにはめっぽう弱い主人公コルト・シーバース(ライアン)が、とある映画スターの失踪を機に思いがけない事態に巻き込まれるアクション。浅谷は、格闘シーンのスタントチームとして参加しており、クラブやアパートでのファイトシーン、コルトのチェイスシーンの制作に携わっている。

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 プリプロダクションでは、スタント・デザイナーのクリス・オハラを中心にアイデアを出し合い、バリエーション豊富なアクションを考えていった。「日本でいうビデオコンテを撮り、クリスに見せた後、デヴィッド監督から『もう少しこんな感じで』と要望が返ってくるので、それらを擦り合わせていく作業です。アパートメントでのファイトシーンでは、フロアの間取りをもらえたので、段ボール箱とかでラフな間取りを作り、『何か面白いことできないかな?』と和気あいあいとした雰囲気で意見を出し合っていきました」

 スタントマン役のライアンは、自ら積極的にアクションに取り組んでおり、高層ビルから命綱を付けた状態で落下する緊迫のオープニングシーンは「100パーセント本人がやっています」と浅谷は証言する。「ライアンは、プリプロダクションが始まった時から、スタントリハーサル用のスタジオに来ていました。僕たちと一緒にやりたいと話をしてくれて、彼のスケジュールが許す限り、スタジオで一緒にストレッチや運動をしました」

 リーチ監督が本作を「スタントマンへのラブレター」と表現するように、劇中では観客が驚く迫力のアクションシーンが数多く登場する。浅谷も「スタントマンが主役の映画をデザインしているプレッシャーは感じていました」と並々ならぬ思いで参加していた。「世界中のスタントマンが観てくれる作品なので、全員が納得するスタントにしたいとチーム一同が同じ思いで製作していました」

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転機になった『ウルヴァリン:SAMURAI』

 1999年からプロダンサーとして活動していた浅谷は、2001年にオーストラリアへわたり、ブレイクダンスの大会で2年連続優勝、オーストラリア代表として国際大会にも出場している。そんな浅谷がスタントマンに転身するきっかけとなったのは、スティーヴン・スピルバーグ監督がプロデュースしたドラマ「ザ・パシフィック」(2010)の撮影だった。

 「ダンサーとして活動していた2007年ごろ、スタントマンの人手が足りないということで、オーストラリアで撮影していた『ザ・パシフィック』の現場に呼ばれていたんです。ブレイクダンサーだったので、転んだりするのは得意ジャンルでした。それがスタントマンとしての初仕事で、現地の人からも『スタントをそのまま続けた方がいいよ』と言われました」

 浅谷とリーチ監督は、マーベル映画『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)でタッグを組んでいる。同作に参加した後、浅谷は2012年から2015年まで活動拠点を日本に戻した。「『ウルヴァリン』や『ザ・パシフィック』の撮影時に知り合った日本人のスタントマンがいたので、日本ではその方たちと一緒に仕事をさせていただきました。日本の現場も3年間くらい経験できたので、『ウルヴァリン』は転機になった作品かもしれません」

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 日本では、特撮作品を数多く手がける坂本浩一監督らが所属するアクションチーム「アルファスタント」に参加し、坂本監督がメイン監督を務めたスーパー戦隊「獣電戦隊キョウリュウジャー」の劇場版にも携わった。ビジュアルエフェクトの仕事もこなす浅谷は、「ウルトラマンギンガ」などにも参加している。

 「坂本組は仕事がすごく早いです。坂本さんはエディティングまで全てが頭の中に入っているので、無駄な時間がなく、1日で撮る分量もものすごいです。周りのスタッフも長く一緒にやってきている方たちばかりなので、カットがかかったらすぐにカメラが移動して、次のカットを撮り始めたり、撮影スピードも速いです。坂本さんでなければ撮れない業だと思います」

エイリアンを演じたのは日本人だった!

プロダンサーからスタントマンへ華麗なる転身 - 浅谷康

 浅谷は『アクアマン/失われた王国』『ソー:ラブ&サンダー』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『ゴースト・イン・ザ・シェル』といったハリウッド大作にも数多く参加しており、SF映画『エイリアン:コヴェナント』では四足歩行の小型エイリアン・ネオモーフのモーションキャプチャーを務めた。

 「当初は昔のように着ぐるみで撮影するはずでしたが、いろいろテストした結果、着ぐるみでは難しいということで、グレーのスーツを着て、モーションキャプチャーで後からCGのキャラクターを被せる形になりました。四つ足でたくさん走らなければならなかったので、プリプロダクションから専属のパーソナルトレーナーがついてくれて、ひたすらトレーニングしました」

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 スタントマンが主役の『フォールガイ』に参加した浅谷は、「スタントをやっていて良かった」と改めて実感していた。「世界中からスタントマンとして第一線で活躍する人たちが集まって、パワーレンジャーのように得意なジャンルを持った集団で1つの作品を撮ることができました。その一人になれたのはとても光栄なことです」

 今後はスタントマンとしてはもちろん、ビジュアルエフェクトにも力を入れていきたいという浅谷。「最近はデジタルが発達しているので、ビデオコンテとかもCGで作ったりします。『フォールガイ』もCGと実写のハイブリッドです。僕もそちらにシフトしはじめています。これからは、デザインする側にまわって、若い人たちがもっとパフォーマンスできるような環境を作っていきたいと思います」と意欲を見せていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

スタント界のレジェンドたちが挑む、規格外アクション!映画『フォールガイ』特別映像 » 動画の詳細
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