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「極悪女王」衝撃の裏側 敗者髪切りデスマッチは本番一発撮り!

「敗者髪切りデスマッチ」のリングへ向かう長与千種(唐田えりか)、長与を担ぐライオネス飛鳥(剛力彩芽)
「敗者髪切りデスマッチ」のリングへ向かう長与千種(唐田えりか)、長与を担ぐライオネス飛鳥(剛力彩芽)

 1980年代の女子プロレスブームをけん引したベビーフェイス(善玉)ユニット、クラッシュ・ギャルズ長与千種ライオネス飛鳥)と、ダンプ松本率いるヒール(悪玉)のユニット、極悪同盟。そんな彼女たちの生きざまを実話に基づくフィクションとして描いたNetflixシリーズ「極悪女王」(独占配信中)。本作のクライマックスは、ゆりやんレトリィバァ演じるダンプ松本と、唐田えりかふんする長与千種の「敗者髪切りデスマッチ」。1985年8月にフジテレビのゴールデンタイムで放送されたこの戦いは、多くの賛否を呼んだ。そんな歴史に残る対決を再現したクライマックスの裏側を、ゆりやん、唐田、白石和彌総監督が語った。

【画像】再現度凄い!当時の試合を完コピ

 同期としてプロレスの世界に足を踏み入れた長与千種と松本香(のちのダンプ松本)。共に他のメンバーからはやや水をあけられ、互いに励まし合いながら“親友”として切磋琢磨していた。しかし長与がライオネス飛鳥(剛力彩芽)とクラッシュ・ギャルズを結成し、一気にブレイクすると、徐々に長与と松本の間に溝が生じていく。

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 さらに全女を仕切る松永兄弟(村上淳斎藤工黒田大輔)の巧みな駆け引きによって長与と松本の仲は引き裂かれ、ついに史上最強のヒール・ダンプ松本が誕生。その怒りの矛先としてクラッシュ・ギャルズが標的となる。

 そんな二人の関係に決着をつけるべく行われた「敗者髪切りデスマッチ」。ドラマではダンプの入場から、殴り合い、凶器攻撃による流血、場外乱闘など壮絶なシーンが続く。試合開始から髪切りまでの時間は、実に20分以上に及ぶ。

ゆりやん&唐田、撮影外でも距離を置く約束

試合直前のダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)

 ゆりやんは「いろいろな条件から、まったく一緒ではなかったのですが、可能な限り実際の技や流れを組み込んで撮影しようということになりました」とプランを明かすと「もともと千種とは同期で親友だった。私も(唐田)えりかと役と同じように仲が良くなっていたのですが、劇中ではどんどんすれ違っていく関係性になっていくので、“撮影がないときでも話をしないようにしよう”と」と約束していたという。
 
 唐田も「(劇中の設定で)ダンプ松本に覚醒してからのレトリとは現場で話をしなくなったんです。すると撮影するうちに、もちろん心の底では大好きな存在なのですが、不思議と本当にちょっとした仕草や行動で刺激されるというか、感情が一気に高まって憎い思いが湧いてくるんです」と当時の感情を回顧。ゆりやんも「本当にわたしのことが嫌いなんじゃないかな……と思っちゃうぐらいの感情になりました」と劇中の関係と同化していったという。

 一方で、気持ちが高ぶっていくものの、前日のリハーサルではどうしてもしっくりこなかったとも。ゆりやんは「えりかには、レトリって呼ばれているのですが、髪切りデスマッチの撮影が始まる前日にえりかから“レトリ、ご飯行かない?”って言ってくれたんです」と裏話を明かす。

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 長い間、劇中と同じく敵として会話をせず目を合わせなかった二人。しかし大一番、物語の重要な役割を果たす試合の撮影の前に一旦その関係性をリセットしたことで、スムーズに撮影を進めることができたという。

 意思疎通が出来るようになってから臨んだ「髪切りデスマッチ」の撮影。俳優の息はピッタリ合ったものの、監督たちには準備しなければならないことが山積みで、とにかくハードだ。白石監督は「正直あまり記憶がないぐらい」と笑うと「とにかくダンプ側も長与側もチェックすることが多すぎて、とても一人ではできない。4話、5話は茂木克仁監督をメインでやってもらったのですが、2人いて良かった。1話から5話まで通して二人で確認し合いながら作りました。もうずっと必死でした」と壮絶な撮影を思い返す。

 何度もできる撮影ではなく、テスト段階ではプロのレスラーたちがしっかり段取りを行う。それでも本番は俳優が行うため、やってみなくては分からない部分も多い。唐田は「やっぱり流れが大切だったので、白石監督もあまり細かく演出するわけでもなかったんです。本当に4カメで一発撮りしたときの緊張感はすごかった」と振り返ると、ゆりやんは「何よりも一番震えたのはダンプが長与の髪を切るシーンでした」と苦笑い。

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髪切りシーンでは唐田えりかが実際に丸刈り

試合直前の長与千種

 続けてゆりやんは「実際にえりかの髪の毛を切るわけで、失敗は許されない。しかもダンプ松本になりきっているので、(唐田演じる)千種へのさまざまな思いがぐちゃぐちゃに湧き上がってきて震えるんです。当時、きっとダンプさんもすごいプレッシャーでやってはったんだろうな……と思いました」と語るゆりやんの目には涙が浮かんでいた。

 白石監督も髪を切るシーンには「心配事しかなかった」といい、「当時の映像を観ると、一発でバリカンで切っているんですよ。でもテストもできないし、誰かを試しにするなんてことも無理。しかも実際にやったとき、案の定、当時の映像のようにはスムーズにいかなくて……。ゆりやんは何度も何度も髪にバリカンを当てているんです。カットをかけるべきかすごく迷ったことを覚えています」と語っていた。

 唐田には髪の毛を本当に切るのか、カツラでいくのか……という選択肢が用意されていたという。しかし唐田は実際に髪を切る選択をした。唐田はその理由を、「オーディションの際、長与千種さんを演じるには丸刈りにするというのは条件に入っていたので、やるものだと思っていました。でも撮影が進むにつれて、プロデューサーさんが気を使ってくださって“カツラでも大丈夫ですよ”と言ってくださったんです。でも自分としてはそのことを含めて覚悟を持って臨んでいたので、全部本物でやりたいと思ったんです」と明かす。

 ゆりやん、唐田、さらに剛力彩芽らレスラー仲間、そして白石監督をはじめとするスタッフたちが作り上げた壮絶な「髪切りデスマッチ」。いま考えると、こんな試合が地上波のゴールデンタイムで流れていたことにも驚きを覚える。(取材・文:磯部正和)

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