「相棒」亀山薫x伊丹憲一、もう一つの名コンビ対談 寺脇康文&川原和久が築く理想の関係性
国民的刑事ドラマ「相棒」の新シーズン「相棒season23」がいよいよスタートする。水谷豊演じる杉下右京と、寺脇康文ふんする亀山薫の特命係コンビが最高に心地いい作品だが、薫にはもう1人、腐れ縁ともいえる相手がいる。川原和久演じる捜査一課の伊丹憲一だ。2人の小競り合いは「相棒」名物のひとつといってもいい。放送開始を前に寺脇と川原がインタビューに応じ、薫&伊丹の関係性、右京のことについて語った。
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じゃれあっているという意識はない
season23の第1話では、お互いが胸でどつきあう“空中戦”が久々に見られる。「やってみる?」と2人から提案したとのことで、「お互いに年をとって骨がもろくなっているから、あんまり衝撃を与えないように気を付けたよね。力具合のバランスも」と寺脇が冗談めかして言うと、「骨がパキンといかないようにね」と川原が乗る。まさに阿吽の呼吸だ。
pre season(2000)から続く薫と伊丹の関係性について、寺脇は「薫が捜査一課時代はライバルで、本気で嫌いあっていたんでしょうね。どっちが手柄をたてるかせめぎあっている中、薫が特命係に左遷されて、伊丹の『特命係の亀山~』がはじまった。年月を経て、一応認め合っているけれど、こじらせている。いまさら元に戻れない、みたいな。だから、いがみあっているというより、おちょくりあっているのかな。じゃれあっている風にはなってきています」と語る。
川原も「そうね」とうなずき、「最初のころは(作品が)長く続くとは思ってなかったから、みんながマジなんです。タイマンはタイマンで、あまりいろいろ(芝居を)足してない。長くなって、ずっとそれをやっていてもつまらないから、変わってきました」としつつ、「でも、伊丹たちはじゃれあっているという意識はないですけど」とスタンスを示す。
どちらが優位かを競っている2人のやりとりを、川原は「結果、『小学生か!』という非常に正しいツッコミをいただくようになって」と表現する。寺脇が「特命係が長きにわたって捜査一課に手柄をあげているという立場だからね。右京さんがすごくて伊丹たちは負けているけれど、口では勝とうとするところを、こっちはうまく突いていくんです」と言えば、川原は「そうなんだよ、右京さんがすごいの。冠城(亘/反町隆史)とか賢い相棒の方々と違い、亀山はそうでもないです」と返し、「ディスるな、俺を!」と寺脇。川原は「(寺脇は)ディスってない。亀山はちょっとディスってるけど(笑)」と笑みを浮かべた。
「右京さんも、こういう方が帰ってきたから、歴代の相棒の方々との対応とはちょっと違っていると思います。『君は相変わらずですねえ』とか言っているでしょ?」と川原。「でも、それを楽しんでいるのは川原です。たいてい、お2人だけのところでのやりとりだから、伊丹は知らないはずです」と明かした。
寺脇康文は「手数が多い」同い年コンビの魅力
川原が寺脇のことを「いろいろすごい。若いです」と褒めると、すぐさま「同い年でしょ」と寺脇が返す。「年の割に若いです。何も考えてないようですごくいろいろ考えているし」と川原が畳みかけると、「考えているようで考えてないよ」と寺脇が笑う。「とにかく、手数(てかず)が多いです。芝居もそうだし、日常的に人に接するときに、よくそんなにいっぱい方法を持っているなと思います」と川原は感嘆していた。
寺脇がseason21で復帰が決まったときに川原に電話をしたエピソードは、season22の際にシネマトゥデイが実施した川原のインタビューでも語られていたが、川原のテンションがとても低かったと寺脇は証言する。「あのとき寝てた?」と寺脇が問うと、「寝てないよ」と川原が苦笑する。「俺が戻るんで、また面白いコトやろうね」と語ったという寺脇の言葉通り、2人の楽しいやりとりは以降、随所にみられるが、飲みに行くなどプライベートの付き合いは、いま、ほとんどないのだという。
「『相棒』は現場でいっぱいしゃべるから。わざわざ飲みに行かなくてもね。まだ世の中が落ち着ききってないから、俺が復帰してからは打ち上げも大々的にはないし」と寺脇は打ち明ける。2人きりで話すよりもみんなで話すことのほうが多いというが、寺脇が北京五輪バレーボールの応援キャスターだったときには、「俺が女子バレー好きだったから、いろいろ教えてもらったりしました。でもそれくらいだよね」と川原は明かした。
薫&伊丹としてやってみたいこと
2人が印象深いシーンは、season1第8話「仮面の告白」での、張り込み中の薫に伊丹がパンを差し入れたやりとり。台本にあった台詞にその場でいろいろプラスしたという。「はじめての2人の交流ですよね。お互い照れながら、気遣っている感じで。お金を払うやりとりとか、落ちぶれてねぇみたいなのは、現場で作ったね」と寺脇。「そういうのを見て、いいなと思った作家さん(脚本家)が(2人のエピソードを)書いてくれて、いまに至るって感じです」と川原。寺脇は「『コイノイタミ』(season21第8話)でも、台本には書いてなくても、薫の伊丹に対する思いは付け加えていました。何やってんだ馬鹿野郎、みたいな感じね」と語っている。
そんな薫と伊丹の関係性を言葉にするのは「なかなか難しいです」と川原。さらに「実際には、ああいう関係性はあんまりないですよ。仲良く喧嘩しなって、そんな体験ある?」と問えば、寺脇は「ないねぇ」と即答。続けて「『トムとジェリー』的な、照れて素直に表現できない可愛らしい人たちってことでしょう? 喧嘩はするけど、いざとなると命がけで守る、みたいな。俺が川に沈んでいるとき、ボートで駆けつけてくれたみたいにさ。あれ、よかったよね」と寺脇は『相棒-劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』での2人のやりとりを例に挙げた。
「ああいうカッコいいシーンを、またやりたいです。でも俺とのシーンは枝葉の部分で、太い幹である右京さんとの本筋に入っちゃいけないと思っています」と川原。寺脇は「伊丹が誰かを守るために罪をかぶって、薫が頑なな伊丹を崩す、みたいなのは面白いと思うよ」とこれからやってみたいチャレンジを語った。
「ただ、『伊丹とはこうだから』みたいに過去をなぞることはせず、新鮮でいたいです。何でもかんでもいがみ合う面白可笑しいシーンを作る必要はない。かといって『伊丹くん、今日も頑張ろうな』みたいになっても…(笑)」と寺脇。川原が「やりすぎるのはダメだって、俯瞰で見て思ったりもしますね。シュッとやって、本筋にまたシュッと戻す。それが理想です」と語ると、「うん、ちょっとしたスパイスでね。見てくださる方が『こいつらしょうがねぇなぁ』と思ってくださるくらいがちょうどいいと思います」と寺脇もうなずく。2人の絶妙な距離感が、この先の「相棒」をさらに盛り上げていくことは間違いないだろう。(取材・文:早川あゆみ)
「相棒season23」テレビ朝日系にて10月16日(水)午後9時スタート(初回は拡大スペシャル)