『室井慎次』福本莉子、小泉今日子から受け継ぐ日向真奈美のDNA 「目元が似ている」本人&亀山Pからお墨付き
映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998)で強烈なインパクトを残し、シリーズ史上最悪の猟奇殺人犯として語り継がれている日向真奈美(小泉今日子)。「踊るプロジェクト」12年ぶりとなる新作映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』には、彼女の娘・日向杏が初登場する。同役に抜てきされたのは、近年飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せる俳優・福本莉子(23)。メガヒットシリーズでの大役に「プレッシャーはすごくありました」と打ち明ける福本が、“殺人犯の娘”という難役への挑戦、主演・柳葉敏郎との共演秘話を語った。(以下、『敗れざる者』のネタバレを一部含みます)
【撮り下ろし写真】小泉今日子も「似てる」と太鼓判!日向杏役の福本莉子
新作映画の主人公は、「踊る大捜査線」シリーズで波乱に満ちた警察人生を歩んできた室井慎次。テレビシリーズ最終話で、湾岸署の刑事・青島俊作と交わした“ある約束”を果たせなかった室井は、警察を辞め、“事件の被害者家族・加害者家族を支援したい”という想いで、2人の少年と故郷・秋田県で暮らしていた。しかし、室井の前に日向杏が突如現れたことをきっかけに、再び事件の影が室井に忍び寄る。
日向杏は「マニピュレーター」
両親が「踊る大捜査線」シリーズの直撃世代だという福本は、「20年以上も前の作品ですが、今観てもとても新鮮で、物語もすごく面白いですし、モノマネとかでよく見ていたレインボーブリッジでのシーンも『本物だ!』と思って観ていました」と作品の印象を語る。
福本が挑んだのは、『THE MOVIE』で観客にトラウマを植え付けた日向真奈美の娘役。「大人気シリーズの新作でもあり、私で本当に大丈夫かな? という心配はありました」とオファー当時から不安が募るばかりだった。「小泉今日子さんが演じられた日向真奈美は、衝撃を受けるようなインパクトの強い役ですし、娘がいたら、どういう気持ちになるんだろう? と考えたりもしました」
メガホンを取った本広克行監督は、日向杏を「マニピュレーター」(=善人を装い、他人を操ったり陥れたりしようとする人間)と表現していたという。「杏は他人を操る子で、本当は悪いことをしているのに、そうしてないフリを見せたり、特定の人にヘイトが向くように仕掛けることができる策士です」と語る福本は、関連書籍を読み、マニピュレーターの思考や特徴などを役に取り入れていった。
また、日向杏を演じるにあたって、母・真奈美が登場した『THE MOVIE』は何度も観返したという福本。「小泉さんの喋り方だったり、特殊な首の傾き具合、目線を意識して研究していました。(『室井慎次』で)首を傾げる姿は、完全に小泉さんの演技を意識して演じていました」
室井慎次との対峙「動物を見るような目で…」
福本から見た室井慎次は、コワモテで厳しい“管理官”のイメージが強かったという。ところが、本作の室井は“鎧”であるスーツを脱ぎ、作業着で農作業に励んでいる。「スーツ姿ではない室井さんは、私からしてもすごく新鮮でした。室井さんの私生活が見られるのは、すごく面白いなと思いました」
撮影現場で室井の姿を初めて目撃した時は「本物だ!」と興奮気味だったという。「柳葉さんはすごく優しくて、現場ではたくさんお話をさせていただきました。撮影は『生き続ける者』のシーンから始まり、雪かきのシーンでは、普段雪の中で生活していない私たちに柳葉さん自ら『こうやってやるんだよ』と丁寧に教えてくださいました」
室井と初めて対峙するシーンでは、本広監督が福本に「動物を見るような目」で柳葉を見つめるようにと指示があった。「水筒に入った飲み物をコップに注いで渡す時、最後に杏が室井さんに向けて怪しげな表情を見せるカットがあり、いろんなパターンを撮影していく中で、“動物を見るような目”と言われて、すごく難しかった記憶があります」
“母”日向真奈美の写真をスマホの待ち受けに
『敗れざる者』のエンドクレジット後に流れる『生き続ける者』の特報では、杏が母・真奈美と対面しているシーンがわずかに映し出される。『生き続ける者』で小泉と共演した福本は、「撮影前の衣装合わせで、ご挨拶させていただきました。お話していると優しい小泉さんなのですが、撮影が始まると途端に怖くなって……。『THE MOVIE』で観た日向真奈美がそこにいて、母親なのに恐怖を感じて、影響されてしまいそうでした」と“豹変”する瞬間を目撃していた。
日向杏のビジュアルは、出演発表時から日向真奈美に「そっくり」だと話題になっていた。小泉本人も「似ている」と太鼓判を押しているそうで、「プロデューサーの亀山(千広)さんも『目元がすごく似ているよね』とおっしゃってくれて、とても嬉しかったです」と笑顔を見せた。
福本はまた、「お母さんの姿を目に焼きつけておきたかった」という理由で、日向真奈美の写真をスマートフォンの待ち受け画像に設定していた時期があったと告白した。「小泉さんにお会いできるシーンがわずかだったので、日向真奈美が笑っている白黒写真を待ち受けにしていました」
『敗れざる者』は、室井の象徴でもあるコートが燃える衝撃のカットで幕を閉じた。その続きとなる『生き続ける者』について、福本は「杏やリク(柳町凜久)が抱えてる問題はもちろん、一人一人の思い、室井さんはどうなっていくのか、登場人物みんなの行方を見守っていただきたいです。松下洸平さんもさらに活躍して、新たな捜査も始まるので、怒濤の展開が待ち受けています」と予告していた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
『室井慎次 敗れざる者』全国公開中
『室井慎次 生き続ける者』11月15日(金)全国公開